小間monoや。

コトを終えて気だるい午後


視線を合わせたくなくて　ガラス窓の向こう
キッチリと　手入れされた垣根に
視線を漂わせながら

ワタシはアノ人に訊く


「次は　いつ … ?」


『そうだな　…　２ヵ月後。』



２ヶ月後。
その前の時もそうだった。


２ヶ月後。
そうやってもう　幾年もの間
アノ人とワタシは不毛な時間の交歓を営んできただろう


「ねぇ」

『　何?』

「…いつまで続けるの? 」

「……知ってるのよ。」

「ワタシたち、とっくに終わってるってこと。」

「ねぇ、いつま・・・」



『ワタシは変化が好きではないんだ。　ず゛っとこのままで行く。』



「…　欺瞞(ぎまん)　よ。　要するに怖いのよアナタってヒトは。


とっくにワタシのことなんか必要でないクセに　
状況が変化することを怖れている

変化そのものを望まないのね。　

アナタのエゴに振り回されるワタシは…」


バン。　机を叩く音。


『時間切れだ。…コレ以上キミの話を訊く時間も　義務も無い。
次は二週間後だ、　イイね。　ニシュウカン・ゴ・だ。
・・・

なんなら、その次もずっと　キミの意思と関わり無く
ココに来ずにいられないような理由を作ってやったっていいんだよ。』


( 『鈍色(にびいろ) の針の午後』　より )



…


アナタ、何を想像しましたか?



実はコレまでの本文は　　ワタクシの創作で　エロでもなんでもなくてスイマセン





今日　歯科医の定期健診に行ってきたのです。
「定期健診」　っていうのは　ワタクシが勝手に名づけただけで

かれこれ　通院が始まってから
10年　たちました　(　え゛ーーーーーーーーーーー )


きっかけは　神経を抜いた歯の根幹治療が雑だった為
色んな歯科医をたらいまわされて
流れ流れて　たどり着いた歯科医の先生が
想像していたよりずっと優秀で　

抜くしかない、という歯をキッチリ　キレイに根っこから治してくれた、という経緯があります
とにかくその先生には頭が上がらないというか
命の次に大恩人、くらいに思っておりました


思い出すのはワタクシの根幹治療に際し
対象となる歯が　以前の歯科医でかなり雑な治療を施されたがために
歯の内部が汚れたまま長い間詰め物をされて放置されていたため
根本的な治療を再度施さなくてはいけない状態であることを説明され


「いやー、この根っこの治療に必要な針(リーマー)なんだけどね
…スケールがウチにあるサイズじゃ　穴が大きすぎで合わないんだよ
前の歯科医さんがいい加減に空けたんだろうけどね
大きすぎて合わないんだよ。
で、特注でオーダーするんで、ちょっと時間かかるんだけどね。・・・
いやーーー。・・・しかし　大きいね。」

「大きいんだ。穴が。うーん。」

「ホント、特注サイズでないとダメだねコレは。うーーん、ウチでもこのサイズは
出したことが無いな。うーーん」



……なんで? 歯の中身のことで　しかも前の歯科医が適当に治療したおかげで
こうなったんだからワタシ(それほど)悪くないのに


なのに　なんなのこの湧き出る羞恥心
……



あれから10年です。

とっくに治療は終わってるのに

『よし、今日もイイよ。　このまま良い状態をキープしてね。』

「ありがとーーございましたぁー。」


で


次の診療が２ヶ月後、なんだな。

先生、センセイ、ワタシいつまで治療するの?





訊けないままにこんなに年月が経っているのでありました。
こんな関係をずるずる続けてちゃいけない　って思うンです
でも　いざ　センセイを前にしたら云えないんです

(　川上宗薫　『女子大生シリーズ』　もまっつぁおの)

(　どんだけ古いの　)



口を開けている時って　人間　一番無防備じゃありません?

それに　なんだかもう



他の先生に口の中診られるの
ヤじゃないですか
正直云えば　　身体中で一番恥ずかしくて見られたくない
赤裸々な場所ですからねぇ


今日、治療?　を終えて　
帰宅して　旦那に何となく話していたら


「コレ以上ずるずると　今までの関係を続けても…」　という台詞が口をついて出てきたのに
我ながら
いっそ面白くなってきたので　書いてみた次第です。　



文句いいつつ
イザ、具合が悪くなったら　すわっ　と診て貰えるんだな、という保険付きの
魅力に抗えないんですよねーぇ。


それにしても　診る度に
「そーいえば　アナタのリーマーは特注だったねぇ」　と回想するのはヤメテ下さい


「普通のじゃ　ぜんぜん足りないから特大で対応したんだからね」

(いつのまに　「大きい」　から　「特大」にっ??)

なんでか　ものすごく　ナンかこう……



10年云われ続けてるんですけどっっっっっっ　

また出た。