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2021年04月20日

シュテファン・ツヴァイクの「Angst」で執筆脳を考える−不安障害3

3 「Angst」のLのストーリー 

3.1 ストレス反応の経路
 
 不安と恐怖は、危険を察知して身を守るための防御反応として備わっている感情である。しかし、不安は、内側から沸き起こり、恐怖は、事故や災害、人間関係など外的な原因により生まれる。1910年にウィーンで書かれたツヴァイクの「Angst」は、主人公のイレーネ夫人にまつわるストレスの問題が鍵になる。
 片野(2021)によると、ストレスを構成する要素は、ストレッサー、認知的評価、その対処、ストレス反応である。成年期にあるイレーネ夫人が受けたストレッサーは、社会的なものである。人間関係のトラブル、多忙、いじめ、リストラ、家族の死、挫折、失敗、離婚、結婚などがその例になる。周囲から刺激を受けた際、それが有害か否か認知的に評価し、それに対抗してコーピングで刺激を処理する。コーピングには問題焦点型と情動焦点型がある。
 ストレスが有害であると認知した時、一般的に体には不安や怒り、恐怖、焦りといった情動変化がみられる。続いて、動機や冷や汗、鳥肌、震えといった身体変化が現れ、仕事のミスや事故の増加など行動に変化がでる。

表1 ストレスの認知的評価

認知的評価               説明
一次反応 ストレッサーを受けた時にそれが自分にとって有害か無害かの判断をする。例えば、無関係は無害、不可能は有害になる。
二次反応 ストレスフルと評価されたストレッサーに対し、その状況を処理して切り抜けるために何をすべきか検討する段階である。
ストレス反応 情動、身体、行動に変化がある。
コーピング 周囲から刺激を受けた際、それが有害か否か認知的に評価し、それに対して意識的に行動すること。問題焦点型コーピングは、ストレッサーそのものに働きかけ原因を解決し除去する一方、情動焦点型コーピングは、ストレッサーそのものに働きかけずそれに対する考え方や感情を変えようとする。

花村嘉英(2021)「シュテファン・ツヴァイクの「Angst」の執筆脳について−不安障害」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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