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2024年09月12日

論理文法に見るファジィらしさ1

 ここでは、HPSGが採用する記号のシステムと Montague文法を中心とした論理文法の小史が議論の対象となる。特に、テキストのダイナミズムの扱い方を問題にする際、状況意味論、パージング・シュガーリングそして直感主義論理などをベースにして、単語や句または文章を扱いながら、論理文法を実際のテキストとマージしていく。まず、Pollard and Sag (1994) の第1章よりHPSGの記号シス テムを説明する。統語論、意味論および音韻論のマージを目指したCarl PollardとIvan A. Sagの心意気が読み取れることであろう。
 HPSGの記号のシステムについて説明する。例えば、ドイツ語の人称代名詞 er を HPSG の素性構造によって表記してみよう。
 HPSGが採用する素性構造は、分類型である。各接点は、分類記号(synsemやlocalなど)によるラベルを持っており、枝分かれの方向を示す属性ラベル(PHONやSYNSEM)も存在する。さらに、 AVM (attribute-value matrix) が採用されているため、全体的にも部分的にも分類が把握しやすくなっている。例えば、LOCALだけを抽出して言語表現を考察することもできる。
 SYNSEMは、SYNTAXとSEMANTICSとういう2つの属性からなる複合情報である。SYNSEMは、例えば、補文の主語やto不定詞句の支配語が共有する情報を含むることから、特定の複合表現を単一表現に局所化する必要ができる。それが、LOCAL(LOC)である。この情報には、 CATEGORY (CAT)、CONTENT (CONT)、CONTEXT (CONX)という 3つ の属性が存在する。CATは、HEADとSUBCATという属性を含んでいる。
 HEADの値には、substantive (subst)と functional (fimct)が存在する。前者 には、名詞(noun)、動詞(verb)、形容詞(adjective)、前置詞(preposition)が、 後者には、限定子(determiner) やマーカー(complimentizer) が含まれる。名詞は、格(CASE)の素性を、前置詞は、前置詞の書式 (PFORM) を、動詞は、ブール素性(AUXILIARY (AUX)、PREDICATIVE (PRD))、置換 (INVERTED (INV)) といった属性 VFORM を持つ。SUBCATの値は、記号のバランスを示唆するもので、問題の記号が飽和状態を作る上で他にどのような記号と結合すればよいのかという指定になる。例えば、格の割り当てである。
 CONTは、INDEXと呼ばれる属性を担う nominal object (nom-obj) とい う素性構造である。“er rasiert sich”「彼は髭を剃る」という文の場合、er と sich は構造上のインデックスを共有する。“er” の CONTENT 値は personal pronoun (ppro)、“sich” の CONTENT 値は reflexive (refl) になる。この属性は、特に呼応(agreement) の問題で重要になる。さらに、意味上の制約を表すために、RESTICTION 属性を設けている。これは、バラメ 一夕寒象(parametrized state of affairs (psoa)) を考慮するためのものである。
 CONXは、BACKGROUND (BACKR)と呼ばれる context 属性を持っている。これも psoa に対応する。しかし、CONTENT値が文字通りの意味と関連するのに対して、BACKGROUND 値の方は、前提条件に対応するア ンカー条件を表している。例えば、上図の “er” は、男性を受けることが前提となっている。
 nelist (nonempty list) と elist (empty list) は、一種の素性構造である。前者には、FIRSTとRESTという二つの属性が指定される一方、後者にはいかなる属性ラベルも適応されない。また、e は、モデル化するための接点を導くものであり、便宜上、ε が存在する場合、neset ラベルを、存在しない場合、eset ラベルを担うことになる。

花村嘉英(2005)「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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