2019年09月11日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <21 三日キューピット>
三日キューピット
なんとか、梨沙ちゃんとあの画家が合う機会を作ろうという話になった。今夜仕事帰りに、いいカフェを見つけたから一緒に行こうと誘うことになった。車で強引に行ってしまおうとしていた。俺なら「全く知らなかった。偶然だねえ。」と言って切り抜けられる。
学生のような計画だった。それでも梨央も俺もその計画に本気になっていた。ひょっとしたら義姉の結婚が決まるかもしれないのだ。しかも今日の明日だ。なんだかやけに緊張した。
翌朝出勤前の朝食の席で、「義姉にいいカフェを見つけたんですよ。今日は早く帰るんで一緒にどうですか?」と誘った。「二人で行けばいいじゃない。」とすげない返事だ。
「いやいやそういわずに、俺のセンスのいいところを見てくださいよ。」「梨沙ちゃん行こうよ。」と梨央も誘うと、義母が「梨沙行ってきなさいよ。私もご一緒しようかしら?」といった。梨央は慌てて「えっ ママ、ちょっとちょっと来て」と洗面所まで義母を呼んだ。
洗面所から戻った義母が「梨沙行ってきなさいよ。」と後押しをしてくれた。
とにかく、義父が席に着く前に話を終わらせたかった。義父が入ると話は絶対に混乱することは分かっていた。娘の結婚話に黙っているような義父ではなかった。
その日の午後、梨央と義姉と三人で待ち合わせをして車でえり兆ビルへ行った。「ここです。梨沙ちゃん、ほらおしゃれな感じでしょ?コーヒーがサイフォンなんですよ。うまいですよ。」「あら、ここ私ちょっと、どうしよう。」義姉はとまどったが無視した。
梨央が「あなた、いいお店ね。割とセンスいいんじゃない?」と畳みかけてとにかく店に入ってしまった。
オッサンは僕たちを見て呆然としていた。コーヒーを三つオーダーすると上品な老婦人がこちらを見て笑った。義姉に小さく手で合図した。あの老婦人は義姉に好感を持っているのだとわかった。きっとオッサンのお母さんだ。
すぐにギャラリースペースに入って、「この絵いいでしょう。うちの寝室に飾りたかったんですが、売約済みだそうです。なんで値札つけてるんですかね? ねえ、ねえマスター。この絵のことなんですがね。」とオッサンを呼んだ。
オッサンは不承不承という感じでやってきた。「ねえ、マスターこの絵の名前を付けた人ってマスターが惚れた人なんですよね。」というと義姉がびっくりしてオッサンを見た。オッサンはしどろもどろになってうろたえていた。
「しまった、忘れ物しちゃった。すぐ帰らなきゃ。梨央帰ろ。帰ろ。」と声をかけると梨央も「ああ、それは大変。急がなきゃね。」と小走りに店を出た。驚いたことに老婦人も「私も忘れ物しましたよ。ちょっと、今日は閉店ですよ。失礼しますよ。」と表のドアの札をclosedにして表へ出てきた。
みんな本気だった。そこにいる三人がみな祈るような顔をしていた。「さっさと車出さなきゃ。」と車に乗ろうとすると老婦人も一緒に乗り込んできた。「私ね、財布もハンカチも何にも持ってないんですの。一人だと家に帰れないんですのよ。」といった。
車の中で老婦人は「あなたが骨を折ってくださったの?」と聞いたので、「妻からのミッションです。妻は梨沙の妹です。」と答えた。
「浜野梨央と申します。姉が新田さんを好きなんじゃないかと思って。新田さんは姉をどう思ってらっしゃるんでしょうね?」と聞くと老婦人は「実は本気で好きなんじゃないかと思います。多分梨沙さんに苦労させるのが辛いんじゃないかと思うんですよ。画家たって十分な稼ぎがあるわけじゃないですから。年もずいぶん離れてるし、親御さんがお許しになるはずもないですよね。でも、最近は絵も売れるようになって、時々は大きなお仕事もさせていただけるようになったんですよ。私はあのお嬢さんが大好きなんですけど。いえね、うちだって江戸時代から続く呉服屋ですよ。御仕度も家もちゃんと準備できます。」と言ってくれた。義父以外の外堀はは埋まった形だ。
僕たちは老婦人を自宅まで送り届けた。家は銀座の裏通りにあった。地味な作りだが一等地だ。「もう昔っからの住人です。昔はここも店舗だったんです。この辺りは今も住んでる人多いんですよ。」という。土地っ子だ。
続く
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なんとか、梨沙ちゃんとあの画家が合う機会を作ろうという話になった。今夜仕事帰りに、いいカフェを見つけたから一緒に行こうと誘うことになった。車で強引に行ってしまおうとしていた。俺なら「全く知らなかった。偶然だねえ。」と言って切り抜けられる。
学生のような計画だった。それでも梨央も俺もその計画に本気になっていた。ひょっとしたら義姉の結婚が決まるかもしれないのだ。しかも今日の明日だ。なんだかやけに緊張した。
翌朝出勤前の朝食の席で、「義姉にいいカフェを見つけたんですよ。今日は早く帰るんで一緒にどうですか?」と誘った。「二人で行けばいいじゃない。」とすげない返事だ。
「いやいやそういわずに、俺のセンスのいいところを見てくださいよ。」「梨沙ちゃん行こうよ。」と梨央も誘うと、義母が「梨沙行ってきなさいよ。私もご一緒しようかしら?」といった。梨央は慌てて「えっ ママ、ちょっとちょっと来て」と洗面所まで義母を呼んだ。
洗面所から戻った義母が「梨沙行ってきなさいよ。」と後押しをしてくれた。
とにかく、義父が席に着く前に話を終わらせたかった。義父が入ると話は絶対に混乱することは分かっていた。娘の結婚話に黙っているような義父ではなかった。
その日の午後、梨央と義姉と三人で待ち合わせをして車でえり兆ビルへ行った。「ここです。梨沙ちゃん、ほらおしゃれな感じでしょ?コーヒーがサイフォンなんですよ。うまいですよ。」「あら、ここ私ちょっと、どうしよう。」義姉はとまどったが無視した。
梨央が「あなた、いいお店ね。割とセンスいいんじゃない?」と畳みかけてとにかく店に入ってしまった。
オッサンは僕たちを見て呆然としていた。コーヒーを三つオーダーすると上品な老婦人がこちらを見て笑った。義姉に小さく手で合図した。あの老婦人は義姉に好感を持っているのだとわかった。きっとオッサンのお母さんだ。
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「しまった、忘れ物しちゃった。すぐ帰らなきゃ。梨央帰ろ。帰ろ。」と声をかけると梨央も「ああ、それは大変。急がなきゃね。」と小走りに店を出た。驚いたことに老婦人も「私も忘れ物しましたよ。ちょっと、今日は閉店ですよ。失礼しますよ。」と表のドアの札をclosedにして表へ出てきた。
みんな本気だった。そこにいる三人がみな祈るような顔をしていた。「さっさと車出さなきゃ。」と車に乗ろうとすると老婦人も一緒に乗り込んできた。「私ね、財布もハンカチも何にも持ってないんですの。一人だと家に帰れないんですのよ。」といった。
車の中で老婦人は「あなたが骨を折ってくださったの?」と聞いたので、「妻からのミッションです。妻は梨沙の妹です。」と答えた。
「浜野梨央と申します。姉が新田さんを好きなんじゃないかと思って。新田さんは姉をどう思ってらっしゃるんでしょうね?」と聞くと老婦人は「実は本気で好きなんじゃないかと思います。多分梨沙さんに苦労させるのが辛いんじゃないかと思うんですよ。画家たって十分な稼ぎがあるわけじゃないですから。年もずいぶん離れてるし、親御さんがお許しになるはずもないですよね。でも、最近は絵も売れるようになって、時々は大きなお仕事もさせていただけるようになったんですよ。私はあのお嬢さんが大好きなんですけど。いえね、うちだって江戸時代から続く呉服屋ですよ。御仕度も家もちゃんと準備できます。」と言ってくれた。義父以外の外堀はは埋まった形だ。
僕たちは老婦人を自宅まで送り届けた。家は銀座の裏通りにあった。地味な作りだが一等地だ。「もう昔っからの住人です。昔はここも店舗だったんです。この辺りは今も住んでる人多いんですよ。」という。土地っ子だ。
続く
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