2019年07月17日
家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <13 実父>
実父
大阪の祖母の家に帰った時には、叔父、僕の実の父が待っていた。たぶん僕は少し憔悴していただろう。
「お帰り。疲れたやろ。いっぱいどうや。」とビールを進めてくれた。僕は、酒は強かった。ビールを飲んでも酔わなかった。「辛い話したそうやな。兄貴から電話があった。怒ってた。わざわざ特別養子にして幸福に育ててたのに、なんで今頃こんな話せないかんのか腹立ったんやろな。真梨ちゃんは電話にも出てくれへんかった。お前も怒ってるやろな。」といった。父から空港ホテルでの話のあらましが叔父にも報告されていたらしい。僕が姉と結婚したいと答えたことを知っているのだろう。
僕はふてくされて返事をしなかった。祖母は部屋には入ってこなかった。「ふくれっ面か。可愛いな。そんな顔見れてうれしい。お前は僕の第一子や。おじいちゃんやおばあちゃんにとっても可愛い孫や。絶対幸福になる方法を見つけたかった。それが、あの家やった。経済的にもしっかりしてて人間的にも信用できる。最初は、真一叔父さんが養子にするって言うてくれたんや。そやけど真梨ちゃんが承知せんかった。自分の養子にするって聞かんかったんや。兄貴は即座に賛成して特別養子の手続きをしたんや。申し訳なかったな。」と謝った。僕は一言も発することができなかった。
「いったん手放した子を自分の方に引き寄せられると思たけど、そんなに甘いことなかったな。ちょっと寂しいわ。これは、兄貴には内緒の話や。絵梨ちゃんと結婚したら、結局のところ兄貴の手元に残ることになる。兄貴と真梨ちゃんには大きな恩がある。絶対に絵梨ちゃんを幸福にしてくれ。図々しいけど頼む。」と白髪頭のツムジがみえるぐらいに頭をさげた。
僕は「お母さんという人はどんな人?その人とは愛し合ってた?」と聞いた。「お母さんとは、サラリーマンの時に知り合って愛し合った。本気やった。ただ、美奈子との縁談は断れん縁談やった。山下家の本家は浅田家や。浅田家はは田原興産の恩人や。浅田家の資産をつこうて田原興産が倒産を免れた時代があった。それで、お前のお母さんとは別れた。美奈子と結婚して美奈子が隆を身ごもってた時期にお前が生まれた。お母さんは僕を愛してくれてて僕に内緒でお前を生んだんや。お母さんの親から連絡をもらって初めて知った。それで、しばらくは、お前のお母さんと美奈子と両方で家庭を持ってた。一生そのままで行こうと思ってた。今思たら無茶な話やが、僕はお前やお前のお母さんと別れることはでけへんかった。お前も隆もどっちも大事やった。そやけど、そんな生活長続きするもんやないな。お前のお母さんが交通事故で亡くなった。それで、お前はお母さんの兄という人に引き取られたんやが、お前が幸福になる気がせんかった。それで、真一叔父さんに相談持ち込んだんや。」
僕は隆も可愛そうだと思った。美奈子叔母さんも可愛そうだと思った。「この話、美奈子叔母さんは知ってるの?」と聞くと「知ってる。お前がこの家に出入するようになってから、僕と兄貴との話を聞いてしもたんや。まあ美奈子は太っ腹や。僕の家は風はちょっと吹いたけど今は平和や。心配してくれてありがたい。嬉しいな。」といった。叔父はほろ酔いになって、うっすらと涙を浮かべていた。
翌日は美奈子叔母さんが来てくれた。晴れやかな顔をしていた。「純君、よかった。何としても絵梨ちゃん幸せにしてほしいのよ。私の大失態のおかげで絵梨ちゃんかわいそうなことしてしもて、なんとか絵梨ちゃんの幸福の道、探したかったんよ。純君やったら間違いないし真梨さんも純君と別れんで済むし。腑に落ちひんこともあるかもしれんけど、いっちばんいい方法で話がまとまるのよ。」と喜んでいた。姉と長谷川の結婚は美奈子叔母さんの親戚から持ち込まれた話だった。
確かに、そうなのだ。姉と僕が結婚すると悲しむ人が出ないのだ。僕は、気分的には腑に落ちないが理屈ではいい方向へ向いているということがわかってきた。「タカシはこのこと知ってますか?」と聞くと、「法律のこと調べたんは隆よ。もう純君のこと兄ちゃんって呼んでるわよ。」といった。
続く
大阪の祖母の家に帰った時には、叔父、僕の実の父が待っていた。たぶん僕は少し憔悴していただろう。
「お帰り。疲れたやろ。いっぱいどうや。」とビールを進めてくれた。僕は、酒は強かった。ビールを飲んでも酔わなかった。「辛い話したそうやな。兄貴から電話があった。怒ってた。わざわざ特別養子にして幸福に育ててたのに、なんで今頃こんな話せないかんのか腹立ったんやろな。真梨ちゃんは電話にも出てくれへんかった。お前も怒ってるやろな。」といった。父から空港ホテルでの話のあらましが叔父にも報告されていたらしい。僕が姉と結婚したいと答えたことを知っているのだろう。
僕はふてくされて返事をしなかった。祖母は部屋には入ってこなかった。「ふくれっ面か。可愛いな。そんな顔見れてうれしい。お前は僕の第一子や。おじいちゃんやおばあちゃんにとっても可愛い孫や。絶対幸福になる方法を見つけたかった。それが、あの家やった。経済的にもしっかりしてて人間的にも信用できる。最初は、真一叔父さんが養子にするって言うてくれたんや。そやけど真梨ちゃんが承知せんかった。自分の養子にするって聞かんかったんや。兄貴は即座に賛成して特別養子の手続きをしたんや。申し訳なかったな。」と謝った。僕は一言も発することができなかった。
「いったん手放した子を自分の方に引き寄せられると思たけど、そんなに甘いことなかったな。ちょっと寂しいわ。これは、兄貴には内緒の話や。絵梨ちゃんと結婚したら、結局のところ兄貴の手元に残ることになる。兄貴と真梨ちゃんには大きな恩がある。絶対に絵梨ちゃんを幸福にしてくれ。図々しいけど頼む。」と白髪頭のツムジがみえるぐらいに頭をさげた。
僕は「お母さんという人はどんな人?その人とは愛し合ってた?」と聞いた。「お母さんとは、サラリーマンの時に知り合って愛し合った。本気やった。ただ、美奈子との縁談は断れん縁談やった。山下家の本家は浅田家や。浅田家はは田原興産の恩人や。浅田家の資産をつこうて田原興産が倒産を免れた時代があった。それで、お前のお母さんとは別れた。美奈子と結婚して美奈子が隆を身ごもってた時期にお前が生まれた。お母さんは僕を愛してくれてて僕に内緒でお前を生んだんや。お母さんの親から連絡をもらって初めて知った。それで、しばらくは、お前のお母さんと美奈子と両方で家庭を持ってた。一生そのままで行こうと思ってた。今思たら無茶な話やが、僕はお前やお前のお母さんと別れることはでけへんかった。お前も隆もどっちも大事やった。そやけど、そんな生活長続きするもんやないな。お前のお母さんが交通事故で亡くなった。それで、お前はお母さんの兄という人に引き取られたんやが、お前が幸福になる気がせんかった。それで、真一叔父さんに相談持ち込んだんや。」
僕は隆も可愛そうだと思った。美奈子叔母さんも可愛そうだと思った。「この話、美奈子叔母さんは知ってるの?」と聞くと「知ってる。お前がこの家に出入するようになってから、僕と兄貴との話を聞いてしもたんや。まあ美奈子は太っ腹や。僕の家は風はちょっと吹いたけど今は平和や。心配してくれてありがたい。嬉しいな。」といった。叔父はほろ酔いになって、うっすらと涙を浮かべていた。
翌日は美奈子叔母さんが来てくれた。晴れやかな顔をしていた。「純君、よかった。何としても絵梨ちゃん幸せにしてほしいのよ。私の大失態のおかげで絵梨ちゃんかわいそうなことしてしもて、なんとか絵梨ちゃんの幸福の道、探したかったんよ。純君やったら間違いないし真梨さんも純君と別れんで済むし。腑に落ちひんこともあるかもしれんけど、いっちばんいい方法で話がまとまるのよ。」と喜んでいた。姉と長谷川の結婚は美奈子叔母さんの親戚から持ち込まれた話だった。
確かに、そうなのだ。姉と僕が結婚すると悲しむ人が出ないのだ。僕は、気分的には腑に落ちないが理屈ではいい方向へ向いているということがわかってきた。「タカシはこのこと知ってますか?」と聞くと、「法律のこと調べたんは隆よ。もう純君のこと兄ちゃんって呼んでるわよ。」といった。
続く
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