2019年03月06日
家族の木 Extra edition 夜職の家
恋の終わり
決定的な日は突然やってきた。聡一は香織の声が聞きたくなって夜中に電話をした。この時間ならベッドの中なのだからつながらないはずはないのだ。それなのにやっぱり出ない。返信もない。つい、イライラして何度もかけてしまった。
何度かかけてやっと香織が出た。めんどくさそうな声だった。「用事?急ぐんだったら折り返すけど。いったん切りたいの。」といわれた。直感的にそばに誰かいると思った。「いや、急いでない。折り返す必要ないよ。」と言って電話を切った。それっきりだった。
香織の部屋には咲が来ていた。不動産会社を辞めて東京へ戻るように説得している最中だった。山下亡き後、香織を大阪に置いておくのは咲には不安なことだった。それに、そろそろ店を手伝ってほしかった。
咲から見れば事務員なんて遊びのようなものだった。咲にとっては、働くこととは店を経営することだった。咲は香りも自分と同じように水商売の世界で成功させてやりたかった。いいパトロンを持って店を繁盛させれば経済的にも安定する。咲にとっての成功は結婚なんかではなかった。
翌週の週末には聡一は香織に別れ話をしていた。今度見合いをして、その相手と結婚すると話したのだ。香織は、特にすがりも泣きもしなかった。香織には聡一と結婚できないことは分かっていた。咲に言われた通り、東京へ帰って店に出ようと思った。
決心がついた途端に気分が落ち着いた。香織は、結局のところ自分は今まで無理をしていたのだと悟った。聡一のことは今でも好きだ。もし今度会える時が来たら、もっと大人の付き合いをしたいと思っていた。
続く
決定的な日は突然やってきた。聡一は香織の声が聞きたくなって夜中に電話をした。この時間ならベッドの中なのだからつながらないはずはないのだ。それなのにやっぱり出ない。返信もない。つい、イライラして何度もかけてしまった。
何度かかけてやっと香織が出た。めんどくさそうな声だった。「用事?急ぐんだったら折り返すけど。いったん切りたいの。」といわれた。直感的にそばに誰かいると思った。「いや、急いでない。折り返す必要ないよ。」と言って電話を切った。それっきりだった。
香織の部屋には咲が来ていた。不動産会社を辞めて東京へ戻るように説得している最中だった。山下亡き後、香織を大阪に置いておくのは咲には不安なことだった。それに、そろそろ店を手伝ってほしかった。
咲から見れば事務員なんて遊びのようなものだった。咲にとっては、働くこととは店を経営することだった。咲は香りも自分と同じように水商売の世界で成功させてやりたかった。いいパトロンを持って店を繁盛させれば経済的にも安定する。咲にとっての成功は結婚なんかではなかった。
翌週の週末には聡一は香織に別れ話をしていた。今度見合いをして、その相手と結婚すると話したのだ。香織は、特にすがりも泣きもしなかった。香織には聡一と結婚できないことは分かっていた。咲に言われた通り、東京へ帰って店に出ようと思った。
決心がついた途端に気分が落ち着いた。香織は、結局のところ自分は今まで無理をしていたのだと悟った。聡一のことは今でも好きだ。もし今度会える時が来たら、もっと大人の付き合いをしたいと思っていた。
続く
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