2019年06月30日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <42 似た母子>
似た母子
大阪へ家族で報告に行った。僕の母は涙を流して喜んだ。
純一は、それから3カ月ぐらいは大阪で勤務してから退職することが決まった。
僕の会社を継ぐことになるだろう。
もちろん、僕がきっちり平社員から仕込まれたように純一も平社員からの入社になる。
大阪では結婚式のことで盛り上がった。
母も美奈子さんもセレモニーが大好きだ。
絵梨は洋装が似合うだのブーケは私がこしらえるだのと、気の早い話で湧いた。
真梨もウキウキしているのが分かった。
その日は純一を残して真梨と絵梨と僕が東京へ帰った。
そして、夜も11時を過ぎたころに純一から電話がかかってきた。
「夜遅くすみません。」と他人行儀な話し方だった。
「実は結婚式の話なんだけど。」そう切り出されて、さっそく何か希望でもあるのかと思ったが意外にも「出来たら式はやりたくないんです。姉ちゃんが、いえ、あの絵梨がやりたくないって思ってて。僕もあんまり興味なくて。」という。
確かに絵梨があまり結婚式をしたくない気持ちはわからないでもなかった。
小樽での派手な結婚式の結果が流産から離婚だ。
「でも、純一お前いいのか?」というと、嫁さんが嫌がってるのに結婚式をやりたがる奴なんかいないよ。」という返事だった。
純一から嫁さんという言葉が出て、なんだかこそばゆい気がした。
「ねえ、パパが女性たちにブレーキかけて。今日の盛り上がり方じゃ、とっても言い出せなかったんだよ。」とお願いされてしまった。
僕はいつも、つまらない役を引き受ける運命だった。
直ぐに真梨に電話の件を伝えた。
早く伝えないと、どんどん夢が大きくなっていきそうだったからだ。
だが真梨の不満は結婚式をしないことではなかった。
なぜ絵梨が、わざわざ大阪にいる純一に言わせたかだった。
「なんで一つ屋根の下に居るのに直接言わないのよ。なんでわざわざ大阪から電話がかかってくるのよ。」とご立腹だ。
僕もなんとなく寂しい息がした。でも、これでいいとも思った。
絵梨は初婚の純一の気持ちを確かめたのだ。そして、言いにくいことは純一に言わせた。
真梨、絵梨は君に似ているだけなんだよ。
と正面切って言えないのが僕の性格で、純一の性格だった。
不思議なことに真梨の親である田原真一も妻の梨花の言うことに正面切って反対できなかった。あんなに意思の強そうな人間でも妻には煮え切らない男だった。
ああ、この家の家風は生き続けるのだと実感した夜だった。
結局、絵梨の希望で結婚式はしなかった。そのかわりハネムーンはアメリカの西海岸を観光した。最初に行く街は純一が暮らしていた街だ。2人は3日に一度ぐらいの割で家に電話をくれた。2人で小学生のようにわいわい騒いでいるのが分かった。
真梨が「もう、あれじゃ修学旅行じゃないの。」と言ったので、思わず「することちゃんとやってるのかな?」と言ってしまった。男親の親心だった。真梨に耳をねじ切られそうになった。絵梨が最初の結婚をする前のはつらつとした雰囲気を取り戻して帰ってきた。
続く
大阪へ家族で報告に行った。僕の母は涙を流して喜んだ。
純一は、それから3カ月ぐらいは大阪で勤務してから退職することが決まった。
僕の会社を継ぐことになるだろう。
もちろん、僕がきっちり平社員から仕込まれたように純一も平社員からの入社になる。
大阪では結婚式のことで盛り上がった。
母も美奈子さんもセレモニーが大好きだ。
絵梨は洋装が似合うだのブーケは私がこしらえるだのと、気の早い話で湧いた。
真梨もウキウキしているのが分かった。
その日は純一を残して真梨と絵梨と僕が東京へ帰った。
そして、夜も11時を過ぎたころに純一から電話がかかってきた。
「夜遅くすみません。」と他人行儀な話し方だった。
「実は結婚式の話なんだけど。」そう切り出されて、さっそく何か希望でもあるのかと思ったが意外にも「出来たら式はやりたくないんです。姉ちゃんが、いえ、あの絵梨がやりたくないって思ってて。僕もあんまり興味なくて。」という。
確かに絵梨があまり結婚式をしたくない気持ちはわからないでもなかった。
小樽での派手な結婚式の結果が流産から離婚だ。
「でも、純一お前いいのか?」というと、嫁さんが嫌がってるのに結婚式をやりたがる奴なんかいないよ。」という返事だった。
純一から嫁さんという言葉が出て、なんだかこそばゆい気がした。
「ねえ、パパが女性たちにブレーキかけて。今日の盛り上がり方じゃ、とっても言い出せなかったんだよ。」とお願いされてしまった。
僕はいつも、つまらない役を引き受ける運命だった。
直ぐに真梨に電話の件を伝えた。
早く伝えないと、どんどん夢が大きくなっていきそうだったからだ。
だが真梨の不満は結婚式をしないことではなかった。
なぜ絵梨が、わざわざ大阪にいる純一に言わせたかだった。
「なんで一つ屋根の下に居るのに直接言わないのよ。なんでわざわざ大阪から電話がかかってくるのよ。」とご立腹だ。
僕もなんとなく寂しい息がした。でも、これでいいとも思った。
絵梨は初婚の純一の気持ちを確かめたのだ。そして、言いにくいことは純一に言わせた。
真梨、絵梨は君に似ているだけなんだよ。
と正面切って言えないのが僕の性格で、純一の性格だった。
不思議なことに真梨の親である田原真一も妻の梨花の言うことに正面切って反対できなかった。あんなに意思の強そうな人間でも妻には煮え切らない男だった。
ああ、この家の家風は生き続けるのだと実感した夜だった。
結局、絵梨の希望で結婚式はしなかった。そのかわりハネムーンはアメリカの西海岸を観光した。最初に行く街は純一が暮らしていた街だ。2人は3日に一度ぐらいの割で家に電話をくれた。2人で小学生のようにわいわい騒いでいるのが分かった。
真梨が「もう、あれじゃ修学旅行じゃないの。」と言ったので、思わず「することちゃんとやってるのかな?」と言ってしまった。男親の親心だった。真梨に耳をねじ切られそうになった。絵梨が最初の結婚をする前のはつらつとした雰囲気を取り戻して帰ってきた。
続く
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