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2018年05月05日

渡瀬恒彦主演、山本周五郎原作「上意討ち」






 4月29日の午前8時から、CS放送の時代劇専門チャンネルで、渡瀬恒彦主演、山本周五郎原作「上意討ち」が放送されました。
 主人公は福井藩士の六兵衛(渡瀬恒彦さん演じる)という、藩内きっての気の弱い侍。
 彼が仕える福井の殿様は、或る時、昂軒(若林豪さん演じる)という剣術使いを藩の剣術指南役として仕官させる。
 この昂軒は剣一筋の男と見え、世渡り上手ではない。新参者を快く思わぬ藩の者たちと争いごとが起こり、数人と斬り合った挙句、殿様の小姓をも斬ってしまい、ついには出奔する。
 激怒した殿様は上意討ちを命じる。
 が、昂軒の腕を恐れた藩士たちは尻込みをする。そこで「「われこそは」と名乗り出たのが「臆病侍」と陰で笑われていた六兵衛だった。
 六兵衛が臆病者と言われていることにより、彼の妹が良縁なくて困っているという事態に、一念発起して、汚名返上と目論んだのだ。
 さて、昂軒探しのに旅に出た六兵衛は、ついに勗件と出会ったものの、剣の腕の差は歴然としている。なかなか手が出せない。
 彼がとった秘策がなんとも「武士らしくない?」ものだった。
 「尋常な勝負」を避け、旅先で出会った女(宮崎美子さん演じる)とともに昂軒に向かって「ひーとーごーろしー!」「ひとごろしだー!」と叫んだのだ。
 宿場町で「ひーとーごろしー!」「ひーとーごーろしぃー!」と叫び声が上がれば、たちまち大騒ぎになる。「なんだ?」「なんだ?」と人々が注目する。昂軒は逆上し、冷静さを失う。六兵衛を追いかけるが、逃げられ、追いつかない。さらに逆上する。
 六兵衛たちの姿が見えなくなったと思ったところでまた「ひーとーごーろしー!」と叫ばれる。また追いかける。だが追いつけず、取り逃がす。
 どこへ行っても「ひーとーごーろしー!」「ひーとーごーろしぃー!」と叫ばれる。昼となく夜となく叫ばれる。しまいには、いつまた叫ばれるかと気が気でなくなり、昂軒は、おちおち眠れなくなり、憔悴し、精神的にも参ってしまう。
 昂軒が憔悴しきったところで、六兵衛が勝負を挑む。
 ところが、ここで意外な展開となる。
 原作のタイトルは「ひとごろし」です。山本周五郎氏らしい設定・展開ともいえる作品です。
 過去に何度もドラマ化されています。
 この渡瀬恒彦主演作品では、渡瀬さんを六兵衛役として主役に据えたのが面白いです。
 腹の据わったヤクザだったり、器量のある武将だったり、有能で部下からも慕われる警部だったりと、「臆病者」とは程遠い人物の役が多い渡瀬さんが、よりによって「臆病者」として笑われるような人物を演じたのですから、かなりのギャップです。
 そのいつもとかなりギャップのある役を見事に演じている。それがこのドラマの大きな見どころでもあります。



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