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バビロンB

それからというもの、僕は毎晩彼女と共に外に出た。

僕たちが住む、木造の掘立小屋は木で作った仕切りがあり、そこで男女を分けていたが、人の気配くらいなら仕切り越しからでも簡単に分かるくらいに薄かったので、特にどちらかが待ちぼうけるということもなく、彼女の起き上がる気配がしたら僕も起き、外に出る気配がしたら僕も外に出る、といった具合だった。それからどちらからともなく海辺を並んで歩き、適当に浜辺に並んで座りこみ、こちらから何かをしゃべったり、向こうから何かをしゃべったり、どちらも何もしゃべらなかったりした。

「どうして私たちは同じ言葉で話せるんだと思う?」
「頻繁にいろいろな場所に飛ぶからじゃないですか」
「それなら、むしろ身振り手振りのほうが便利になるわよ。同じ場所に一度会った人が飛ばされる、なんてことは奇跡みたいなものなのだから、君が言った通りだと頻繁に言葉を変えなきゃいけなくなるわ」
「そう言われればそうですね。じゃあ、ソラさんはどう思うんですか」
「私はね、それはきっと神さまのおかげなんだと思うの」
『神さまはね、私たちがかわいくて仕方がないのよ』

これは彼女がよく口にした言葉だ。もしかしたら口癖だったのかもしれない。彼女はいろいろなことを神に感謝していた。

彼女が言うには、僕たちが相手の言葉が分かるのも、風に飛ばされるのも、決まって陸に落ちるのも、みんな神さまのおかげだということだった。
「神さまはね、私たちがかわいくて仕方がないのよ」
「それでいろいろな私たちが見たいから、私たちを風で飛ばして新しい場所で新しい生活をさせるし、飛んだ後に困らないよう、言葉を一つにしているのよ」

正直に告白するならば、それが本当であろうとなかろうと、僕は神さまが嫌いになった。

僕は別に、自発的に空を飛びたいとは思わなかったし、なにより飛ばされるたびに一から始めなければならないのが嫌だった。せっかく積み上げたもの、例えば人間関係だったり、心地よい木陰の在り処だったり、日ごとに増えて行く居心地の良さなどをその場に置き去りにして飛ばされてまた積み上げなければならないのがとてつもなく嫌だったのだ。それが神さまのせい、というならば神さまを嫌いになるのも当たり前のことだった。

『神さまはね、私たちがかわいくて仕方がないのよ』

彼女は神さまが大好きで、僕は神さまが大嫌いだった。

僕が神さまは嫌いだと彼女に言うと、まるでおもしろいものを見た、という風に僕を見て笑った。そして僕の頭をなでるのだ。僕たちはそんな関係だった。
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バビロン第三段です笑顔
続けて四段目も投稿します。

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