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2025年01月21日

冬の帰り道

ムームードメイン


冷たい北風が街を吹き抜け、街灯の光が凍えるアスファルトに反射していた。冬の夜は早く、夕方にはすでに闇が広がる。この街は、昼間の賑わいとは裏腹に、夜になると静寂が支配する。

篠田は仕事帰りの道を歩いていた。いつも通りだが、なぜか今日はいつもより疲れを感じる。重い工具箱を片手に持ちながら、吐く息が白く広がるのをぼんやり眺めていた。

帰り道の途中にある小さな公園を通り過ぎようとしたとき、不意に視界の隅に何かが動いた。振り返ると、ベンチに少女が一人、座っていた。彼女は薄いコートを羽織り、膝に小さなノートを広げている。

「こんな寒い中、何をしてるんだ?」

気になって篠田は声をかけた。少女は驚いた様子もなく、ゆっくりと顔を上げた。彼女の瞳は深い闇を湛えた湖のように静かで、何かを悟っているような雰囲気があった。

「星を待ってるんです。」

「星?今日は雲が多いし、見えないだろう。」

「そうかもしれません。でも、見えるかどうかは関係ないんです。」

不思議な答えに篠田は首をかしげた。彼女はノートを閉じると、立ち上がり篠田に微笑みかけた。

「あなたも、何かを待っているんじゃないですか?」

「俺が?いや、待つようなものは何もないさ。ただ、毎日仕事をして帰るだけだ。」

「それでも、きっと何かが待っていますよ。」

そう言うと、少女は篠田の横をすり抜け、公園の出口へと消えていった。篠田はしばらくその場に立ち尽くし、彼女が言った言葉を反芻していた。

待つもの。俺が?

その夜、ふと空を見上げた篠田は、雲間から覗く一つの星を見つけた。冷たい空気に包まれながらも、心の奥に何か温かいものが灯るのを感じた。

それは、まだ名前も形もない、小さな希望だった。

posted by こーら at 09:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説
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