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2022年07月26日

(転載)優勝の逸ノ城「モンゴル力士グループと一線を画す姿勢」がついに花開いた

コロナ禍で全627人のうち約3割にあたる174人が休場となった7月場所を制したのは、モンゴル出身の逸ノ城だった。
2014年1月場所で幕下15枚目格付け出しデビューし、同年11月場所では史上最速の5場所で新三役(関脇)に昇進。モンゴルの怪物として注目された。
当時は白鵬、鶴竜、日馬富士という“モンゴル出身3横綱”が君臨した時代だったが、逸ノ城は「グループの一員」という印象ではなかったという。




 若手親方はこう振り返る。




「逸ノ城のデビュー当時、モンゴル力士グループは朝青龍派と旭鷲山派に分かれていた。
2人ともすでに引退していたが、その人脈として朝青龍派の代表が日馬富士、旭鷲山派の代表は白鵬といった色合いがあった。
それぞれのグループで一緒にモンゴル料理を食べに行くなどプライベートでも行動を共にしていたが、逸ノ城はどちらのグループにも属そうとしなかった。



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 逸ノ城は遊牧民出身で、モンゴルの首都・ウランバードル出身の他のモンゴル勢とは距離があったのでしょう。
デビュー当時は仕度部屋でも誰かとつるむ様子はなかった。
関脇でありながら決まった場所には座らない。
玉鷲、荒鷲、旭秀鵬といった中間派のモンゴル力士グループに声をかけられることもなく、力士の隙間になんとか場所を確保している状態で、浮いている印象がありました」




 その後にモンゴル出身力士たちの人間関係に決定的な亀裂を走らせたのが2017年10月に秋巡業先の鳥取で起きた「日馬富士暴行事件」だが、連日ニュースを騒がせた事件に、逸ノ城は巻き込まれずに済んだ。相撲担当記者が解説する。




「当時の白鵬、日馬富士、鶴竜の3横綱に、鳥取城北高校OBである照ノ富士、貴ノ岩、石浦の関取衆3人を含む計13人が参加した食事会で、二次会の席上で日馬富士が貴ノ岩へ暴行を加え、角界を揺るがす大事件に発展しました。
逸ノ城も鳥取城北高校出身ですが、運よく秋巡業を腰痛により途中休場していたこともあって参加していなかった。
もともと、照ノ富士と逸ノ城は同じ飛行機で来日して鳥取城北高校に入学していますが、照ノ富士が部屋の移籍によって同じ伊勢ヶ濱部屋の先輩となった日馬富士と交遊を深めたのに対し、逸ノ城は距離を置いたままだったのがよかった面もあるでしょう」




 当日の飲み会では、白鵬をはじめとする横綱たちが、貴ノ岩や照ノ富士ら同郷の後輩を締め上げた。
膝の故障を抱える照ノ富士に対して正座させて説教し、その後に膝の容態を悪化させた照ノ富士は序二段まで陥落してしまった経緯がある。
相撲協会の調査報告書によれば当日、正座させられた状態で日馬富士に頬を張られた照ノ富士は一言、「ごっつぁんです」と応じたといい、グループ内の“上下関係”には驚かされる。

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「同郷の先輩横綱」相手には勝てなかった
 逸ノ城はそうした場に居合わせずに済んだわけである。
しがらみにとらわれないこともあってか、2014年9月場所では鶴竜との初対戦で立ち合いに変化して0.9秒で金星を獲得している。
ただ、そうしたスタンスが同郷の先輩力士たちからは睨まれることにもつながったように見えたという。相撲担当記者が言う。




「関脇としてのデビュー場所では初日に対戦した日馬富士にフライング気味の立ち合いで土俵下に落とされ、巡業では金星を奪った相手の鶴竜から連日のようにかわいがられた。
鳥取の夜の呼び出しを断わった玉鷲のように同郷グループと完全に一線を画していたというよりは、逸ノ城は面倒そうな人間関係に巻き込まれたくなかっただけでしょう。
結局、モンゴル横綱たちに対しては本気でぶつかるモードになれなかったところがあるのではないか」




 白鵬をはじめとしたモンゴル横綱たちに対して、土俵上では徹底的に負かされた。
通算成績では白鵬に3勝13敗、日馬富士に2勝7敗、鶴竜に3勝13敗という数字だった。
番付上位の日本人力士を相手にした時の数字と比べると、その違いははっきりしている。
稀勢の里に対しては7勝8敗(対横綱戦としては4戦4勝)、貴景勝に7勝9敗、正代には12勝5敗という成績を残している。





 昨年9月場所で白鵬が引退。
一時の勢いを失ったように見えた逸ノ城は、幕内上位で存在感を見せるようになり、ついに初めての賜杯を手にした。
5場所で関脇まで駆け上がったデビュー当時の相撲が戻ってきたように見える。
前出・若手親方が言う。




「逸ノ城の初優勝を一番喜んでいるのが、モンゴルから同じ飛行機で来日した照ノ富士ではないか。
千秋楽に優勝した逸ノ城と記念撮影する白鵬(間垣親方)と鶴竜(鶴竜親方)の写真が翌日のスポーツに掲載されたが、モンゴル出身力士たちは複雑な気持ちで見ていた部分もあるのではないか」

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