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2014年10月13日

<未登記空き家>所有者不明、対策取れず 戦後混乱期に多発

 管理に問題のある空き家に対して是正を求めようにも、所有者の名前や居場所が分からない。そんな問題が自治体を悩ませている。周辺住民からの聞き取りや、登記簿や戸籍の読み取りなど、あの手この手を駆使しても判明しないケースが少なくない。自治体の担当者は「周囲には迷惑でも、個人財産なので所有者の了解を得ない状態で対策は取りにくい」と困惑している。

 毎日新聞は7〜8月、空き家対策に関する条例を持つ全国の355自治体にアンケートを実施した。「問題のある空き家について、所有者の名前や所在が分からず連絡を取れなかったケース」を尋ねたところ、約半数の自治体があるとし、うち3割は理由として「家屋が登記されていない」を挙げていた。家屋の所有者をたどるには登記簿の所有者欄を確認するのが第一歩だが、入り口でつまずいているのが実態だ。

 男鹿市(秋田県)は、所有者に連絡が取れない73軒の空き家のうち、約半数が未登記という。約1年前、住宅街にある木造の空き家について町内会長から「風で屋根や壁が飛んで、人に当たったら大変だ」と相談があった。市が確認すると、屋根の3分の1がすでになく所有者の確認を急いだ。

 しかしこの家屋と土地に該当する登記はなかった。市は近隣住民から情報を集め、名前のあがった4人を訪問したが、いずれも「借りていただけで所有者は知らない」などの回答で所有者は判明しなかった。

 担当者は「周囲の方には『さらに危険になったら連絡をください』と言うしかなかった」と語る。

 複数の自治体によると、家屋の未登記は、戦後の混乱期に多かったという。法務省によると、不動産登記法や旧家屋台帳法で、少なくとも1947年以降、家屋を新築した所有者には登記・登録(面積や所有者名など)が義務付けられている。だが、当時は現在とは異なり、住宅をローンを組まずに自己資金で建てることが多く、権利関係を示す登記の必要性が少なかったことが背景にあるという。

 国土交通省の担当者は「保安上、著しく危険な建物や、衛生上有害な建物なら、所有者不明でも建築基準法の規定で撤去や修繕はできる。ただ荒れ放題の庭木や雑草の処理は規定がない」と話す。

 ◇相続者分からぬケースも

 家屋の相続後、名義変更がされていないために所有者の確認が困難になるケースもある。

 京都市は今年4月、昔ながらの街並みが残る地区にある1軒の空き家について、周辺住民から「長い間、不在で不用心」と相談を受けた。登記をもとに所有者の男性を割り出したが、約50年前に死亡していた。その後も姉が住んでいたとみられるが、約10年前に死亡。いずれも未婚で子供はなく、誰が相続したかは分からなかった。死亡した所有者の戸籍から、さらに親族をたどるという方法もある。

 ただ市の担当者は「数多くの親族の中で誰がこの家のことを知っているのかは、聞いてみなければ分からない。大変な作業になる」と当惑する。

………………………………………………………………………………………………………

 ■ことば

 ◇空き家問題

 持ち主の管理に問題があり、周辺住民に危険や迷惑を及ぼす空き家が増えている。屋根や壁の崩落で隣家や歩行者に危険をもたらしたり、侵入や放火、ごみの投棄などの不法行為を誘引したりする。総務省の調査によると空き家は全国に820万戸。そのうち賃貸や売却用、別荘などを除く「放置された空き家」は、5年前より50万戸増えて318万戸に上る。
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