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2014年10月01日

絶好調!マツダの“魂動デザイン”がなぜこんなにカッコいいと評判なのか?

最近のマツダは、やけに「カッコいい」と評判だ。それは実際の業績にもハッキリ反映されている。

CX−5は2012年の発売から2年連続で国内SUV販売1位となる大ヒット作に。続くアテンザ、アクセラもスマッシュヒット。特にアクセラは、現在はCX−5以上に売れる稼ぎ頭で、月間販売でもトップ20以内が定位置なのだ。

その好調ぶりは「ディーゼルエンジン」という独自技術や、走りの良さが評価されている面もある。しかし、絶対にカッコ悪ければ売れないはず。やはり多くの人が「今のマツダはカッコいい」と感じているのだ。

CX−5以降、アテンザ、アクセラ、新型デミオまで、誰が見ても「これぞマツダ!」と直感するのは、五角形グリルやツリ目ライトによる「顔」が共通しているからだけではない。基本プロポーションが共通モチーフでデザインされているからだ。

クルマのデザインに詳しい、モータージャーナリストの千葉匠(たくみ)氏が説明してくれた。

「大きなターニングポイントとなったのは、2009年4月に前田育男氏がマツダのデザイン本部長に就任したこと。その前田氏が中心となって、コンセプトカー“靭(SHINARI)”を作りました。CX−5から最新のデミオまで、すべてが、靭(SHINARI)の“魂動(こどう)デザイン”というコンセプトをもとにデザインされています」

では、魂動デザインとは、具体的になんなのか?

「その心は“生命感のある動き”をデザインで表現するということ。その象徴的なモチーフとして、動物のチーターをもってきました。そこで最も重視されたのは表面処理的なキャラクターライン(ボディ表面に成形された線)よりも、ボディの体重が4本のタイヤに均等にかかるスタンス、姿勢なんですね。CX−5からデミオまですべて基本的に前輪駆動車(FF)ですが、基本的にFFはキャブ・フォワードで、前輪に体重がかかって見えます」(千葉氏)




キャブ・フォワードとは言葉どおり「キャビンが前進している」という意味。エンジンルームをできるだけ小さくして、その分だけキャビン(室内空間)を前方に大きく拡大したカタチである。

キャブ・フォワードはFF車ならではの利点を強調したデザインであり、見るからに「室内が広くて、快適・便利そうだ」と直感させる。最近の軽自動車や、あるいはホンダ・フィットなどがその典型だ。

「マツダの魂動デザインは、あえてその逆をいっているんです。キャビンをできるだけ後ろに引っ張って、後輪にもしっかりと体重がかかっているように見せる。本当はFFだけど、あたかもチーターが後ろ脚で蹴って走っているように……。それが魂動デザインのキモです。

そのために、今のマツダ車は、Aピラー(フロントウインドウの支柱)を後ろに下げて、後方に体重をかけるデザインをやってきたわけです。昔のクルマは後輪駆動で進化してきたわけですから、魂動デザインの意図そのものは新しいわけでなく、ある意味で古典的。前田氏は、そういう古典的なクルマの美しさを、なんとかFFで再現したかったんでしょう」(千葉氏)

すべてがチーターの動きからの着想というが、それぞれのクルマの大きさに応じて、動きの切り取り方が違うのも特徴だ。

「魂動デザインは、チーターのような勢いがあって生命感のある動きを求めながら、クルマによって違う表現をしています。例えば、アテンザは“トップスピードで走る勢い”、アクセラは“スタートダッシュの勢い”、デミオは“キビキビ走る勢い”……と表現を変えている。そこがうまい」(千葉氏)

そんなマツダは先日、新型ロードスターを公開した。幅が史上最もワイドなのに、全高は先代より低く、全長はなんと初代ユーノスより短い! つまり、新型ロードスターは細かいデザイン以前に「ショート&ワイド&ロー」の自動的にカッコよくなるしかない(?)体形だが……。

「新型ロードスターで、マツダのデザインはちょっと変わりました。なんだかんだいっても、これまではサイドにキャラクターラインが入っていましたが、今回はその種のラインをまったく使っていません。つまり“線をいっさい使わない生命感のあるデザイン”に挑戦しています。基幹車種で魂動デザインをやりきって、デザインの幅を広げる段階に入ったのでしょう。ロードスターは本物の後輪駆動であり、しかもカリスマ的なスポーツカーですから、新しいチャレンジにはピッタリの素材ということです」(千葉氏)

つまり、マツダのデザインはすでに次なる段階に入ったということだ。「カッコいいマツダ」の快進撃は、まだまだ終わらないようだ。
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