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2014年09月04日

チャン氏に師事し変身…錦織、4強入り

4大大会のコートでもっとも収容人数が多く、華やかなセンターコート。24歳の若者が、観客が総立ちのスタンドから称賛の拍手を浴びた。神和住純(かみわずみ・じゅん)さん、松岡修造さんら多くの日本のプレーヤーがはね返され続けてきた全米オープン。ついにベスト4に進んだ錦織は「最後はどうやって試合を決めたのか覚えていない」と、スタンドに駆けつけたファンを笑わせた。

 身長178センチ、体重74キロ。男子テニス選手としては決して恵まれた体格ではない。しかし、それをカバーするだけの俊敏さ、反応のよさ、そして忍耐強さがある。200キロを超えるサーブをしっかり受け止め、相手に返す高い能力を備え、今、世界のテニスファンからは「世界屈指のリターンの名手」と呼ばれている。

 今季はツアー大会で2勝して、5月に現行制度の世界ランキングで日本男子初のトップ10入り。その理由を探したとき、忘れてはいけない存在がある。コーチのマイケル・チャンさん(42)。1989年全仏オープンの男子シングルスを制した「世界のテニス」を知る男だ。錦織とほぼ同じ身長でタイトルを手にしたアジア系米国人の教えを昨年12月から受けている。

 2人が出会ったのは11年、東京・有明で開催されたチャリティーマッチ。錦織からコーチの要請を受けたのは、昨年の全米オープンで1回戦敗退した後だったという。チャン・コーチは「アジア全体でもツアーを回っている選手は多くない。錦織のコーチをするのは興味深い」と快諾した。

 技術指導はもちろん、百戦錬磨のチャン・コーチはメンタル面も数多く指摘してきた。錦織は8月4日に右足親指の手術を受け、今大会への出場は危ぶまれていた。実際、錦織の不安は大きかった。しかし、チャン・コーチは「絶対いける」と強い口調で激励。「軽く洗脳された」という錦織の弱気の虫を吹き飛ばした。準々決勝のワウリンカ戦の前にも「ワウリンカは世界有数の実力者だが、錦織は勝てる力がある」と強調。常にポジティブな思考を錦織に植え付け、それは接戦になればなるほど強みを発揮するようになった。

 「チャン・コーチがいるのは心強い。自分のテニスがよくなっているのは彼のおかげ」と錦織。96年ぶりに日本人が立つ準決勝の戦いは一層、厳しくなるだろう。しかし、錦織の自信は揺るぎない。

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