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2014年10月22日

「ルンバ」のマネはしない、日の丸家電の標的は「シニア」と「ニッチ」

日本の総人口の25・9%に当たる3296万人。

 総務省が今年の敬老の日に合わせて発表した65歳以上の人口だ。パナソニックは購買力が高いシニア層にターゲットを絞った高機能家電シリーズを立ち上げ、10月下旬から掃除機や冷蔵庫、エアコンを順次発売する。

 新しい材料を使い、形を曲げる角度も微妙に変えてシニアが使いやすいデザインにした。その代わり、生産は容易ではない。高見和徳専務は「シニア向けというデザインコンセプトをもつ国は他にない。ただ、モノづくりの力を上げないと商品にならない」と気を引き締める。

 日本電機工業会によると白物家電の今年4〜8月の国内出荷額は前年同期比7・6%減の9625億円。台数の減少より金額の減少のほうが小さく、1台の単価は微増傾向にある。

 高見専務は「人口減で長期的に台数は落ちるが、金額は維持もしくは上積みを狙う」と鼻息は荒い。

 4月の発売以降、ニッチ(隙間)商品としては異例のヒットを記録するのがシャープの「ヘルシオお茶プレッソ」(実勢価格2万円前後)だ。50〜60代を中心に支持を集め、9月末時点で予測の4倍となる11万台を売っている。

 セラミックス製の臼をゆっくりと回転させて茶葉を20ミクロンの粉末にし、お湯に溶かしてお茶をいれる。茶殻が出ないためゴミの分別を気にせずに済み、粉末にした茶葉は菓子や料理にも使える。シニアが居間で使えるコンパクトで落ち着いた丸みのあるデザインだ。

 茶葉の需要は減少しているが、開発を担当した調理システム事業部の田村友樹副事業部長は「消費者は急須が面倒と感じて使わなくなった。それでもペットボトルのお茶は飲まれており、需要は根強くあると考えた」と語る。

 長年、国内市場が白物家電で利益を得るのに十分な大きさがあったため日本の家電メーカーは海外展開を後回しにしてきた。家が狭い日本向けの白物家電は欧米で通用しないとみられてきたこともある。しかし人口減少が続くなか、単価が下がりにくい白物家電といえども従来の高性能、コスト削減を追求する商品開発だけではジリ貧は必至だ。安住してきた国内も米アイロボットのロボット掃除機や英ダイソンの羽根のない扇風機、蘭フィリップスの油を使わない揚げ物調理器の存在感が増している。

 反転攻勢の鍵を握るのはやはりデザインだ。

 日の丸家電にもチャンスはあった。白物家電ではないが、シャープの液晶テレビ「アクオス」シリーズの欧州向け上位モデルが2008(平成20)年、世界的権威のあるドイツのiFデザイン賞を受賞したのだ。

 画面は奥行き感がある金属フレームで囲い、画面下部に取り付けた棒状のスピーカーは、隙間から音が流れ出す効果をもつ。

 デザインは欧米では「設計」の一部として商品の重要な要素とされているが、日本では「意匠」にとどまる。アクオスを担当した工業デザイナー、喜多俊之氏は「使うためのデザインを大切にする欧州のやり方を取り入れる実験だった」と話す。

 アクオスは大ヒットしたが、「シャープは技術で売れたと考えた。残念ながらデザインへの理解は得られなかった」(喜多氏)。喜多氏のデザインは平成22年までの10年間で終了し、アクオスの販売も失速した。

 喜多氏は言う。

 「海外メーカーは、モノ(商品)以上に暮らし方を提案する。『すてきな暮らし』と、それにマッチする家電のデザインを考えれば国内でも海外でも通用する家電が生まれるはずだ」
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