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2019年07月05日
融合篇〈くるみ割り人形〉三章
一節
ライブラリの中にビルが
増えていきます。
道はコンクリート
と化し、
その上には猛スピードで走る車が
転がっています。
一息の間に周りの木は消え、
一歩の間に川は堤防に埋まります。
「止めるべき……べき……」
老人はぶつくさと呟きながら、
変わる世界の中を歩き続けます。
その丸い目は、まるで全てを
観察しているかのようでした。
融合篇〈くるみ割り人形〉二章
一節
重い空気が漂うライブラリの中では、
くるみ割り人形が一人
ぶつぶつと呟いておりました。
「始まる……
始まるか……。
ならば仕方ない……」
老人が深い溜息をつくと共に――
なんという事でしょう!
ライブラリの景色が変わっていくでは
ありませんか!
空も、木々も、地形も――
ああ、どんどん違って!
「これからが本番よ」
ノイズ混じりの景色の中で、
老人はカチカチと顎を鳴らしました。
融合篇〈くるみ割り人形〉一章
一節
――さてはて。
その頃、ライブラリでは一人の
老人が、相変わらず
ぶつぶつと呟いておりました。
「……また、始まったのか」
あらあら?
いつもよりもシリアスさを
帯びるそのお声。
何だか雰囲気がちょっと違うような?
「ならば行こう。この目で確かめるべき」
老害と罵られる人形は、
カタカタと笑いながら歩きだしました。