2016年10月12日
駅に「ポケモン」が出現! 法的問題はあるか
駅に「ポケモン」が出現! 法的問題はあるか
東洋経済オンライン 10月12日(水)8時15分配信
駅に「ポケモン」が出現! 法的問題はあるか
「ポケモンGO」のサービス開始以来、歩きスマホの危険性に対する注目がさらに高まっている(写真:bee/PIXTA)
一時期に比べるとだいぶ落ち着いたようだが、今さらながら「ポケモンGO」について言及したい。
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「ポケモンGO」は、スマホ画面上の地図に現れるポケモンをモンスターボールで捕まえたりバトルをしたりするゲームである。この原稿を書くにあたり私も登録をしてみたが、このような地図と組み合わせるゲームをよく作ったものだと感心した。「隠れているポケモン」という表示が出れば私でも探したくなる。
「ポケストップ」や「ジム」を設定された施設などでは、人が集まることになり来客数の増加や売り上げ増加などの好影響がでているところもあるようである。しかしその一方、否定的な話も浮上しているようである。神社仏閣では「ポケストップ」や「ジム」を拒絶するところや、深夜閉鎖の駐車場では、閉鎖時間を経過後に車ごと駐車場に取り残された人もいたという話もあった。
「ポケモンGO」が原因の一つという事故も起きている。鉄道駅においても、構内放送や掲示物で、歩きながら位置情報を利用したスマホゲームをやらないように、という注意喚起が目立つようになった。
■ポケモン出現が負担になる場合も
もともと、少し前から鉄道駅でのものを含め、いわゆる「歩きスマホ」の危険性は指摘されていた。「ポケモンGO」が「歩きスマホ」の危険性をどれだけ高めたか分からないが、駅構内の注意喚起が増えたということはその危険性を否定できないのであろう。
また、「ポケストップ」や「ジム」が設定されたり、「ポケモン」が出現したりするところは事前に運営会社から施設等へ通知があるわけでもなく、運営会社が独自に設定しているようである。お客が集まってそれにより経済効果を得ているところはいいものの、想定外の訪問者に悲鳴を上げているところもある。他のお客への迷惑防止や安全確保の点で負担が増加しているところもあるようである。
事故の際の責任はどうなるのか
いまは「ポケモンGO」がスマホの位置情報を利用したゲームの代表格になっているが、いずれ類似のゲームは色々と登場するのかもしれない。そこで以下、「ポケモンGO」を「位置情報ゲーム」、「ポケストップ」などは「拠点」、「ポケモン」は「獲物」として、一般論として鉄道においても問題はないか見てみたい。ただし、事案の集積はまだ少なく、完全な私見であること、特定の者の責任を処断するものでもないことをお断りしておく。
まずはその危険性である。獲物探しに夢中になって周りが見えなくなった場合、対列車との関係でいえば、触車事故、ホームからの転落事故、対ほかの利用客との関係でいえば、通行人同士の接触事故の危険があり得る。
最近の駅ではホームドア設置工事が少しずつ進んでいる。ホームドア設置が全駅で完了すれば触車事故やホームからの転落事故は激減するであろうが、いまはその過渡期である。ホームが危険であることは疑いがない。ホーム上で拠点や獲物が現れるようにして、それが原因で事故が起きたとき、その責任の所在が問題になろう。
確かに、位置情報ゲームを始めるとき、「危険なところでは遊ぶな」という表示がスマホに現れる。移動速度が速いと感知したときには制限がかかり、自動車を運転していない場合には運転者でない旨を確認するボタンもある。一応、安全確保の配慮がされてはいる。
しかし、その表示があるからといって、そもそも危険な場所から危険が除去されるわけでない。プレイヤーの個別的な事情で危険な目に遭ったという場合はともかく、位置情報ゲームをするには類型的に危険と判断される場所もあろう。駅のホームなどはその典型である。そのような場所でいかに位置情報ゲームをすることが危険であると訴えてもそれで十分とはいえない。駅のホームなど当然に危険性を帯びる場所では、そもそも獲物を出現させないとか、出現させるのであれば鉄道事業者等の安全管理責任者などとの調整が必要であろう。
■ポケモンが線路に出たら不法立入?
次に、公道上や公園などはともかく、鉄道事業者が管理する場所で、鉄道事業者の関与がないままに人が集まる仕組みを作り上げることに、管理権の点で問題はないのであろうか。
たとえば、@鉄道地内に入らなくても捕らえられる獲物が鉄道地内にいる場合、A鉄道地内に入らないと捕らえられない獲物が鉄道地内にいる場合などに鉄道事業者の管理権との関係で問題がないかということである。
@Aのいずれにしても、物理的に運営会社が鉄道地内に進入して拠点を設置したり獲物を出現させたりしているわけではない。鉄道地内にスマホを通じて電子的に拠点を設置したり獲物を出現させたりする仕組みを作っても、それが不法な立入になるわけではない。
一方、Aの場合には利用者を鉄道地内に進入させることになる。鉄道地内に利用者を鉄道地へ進入させることは、利用者に許諾を得ない鉄道地内への違法な立入をさせる可能性にもつながりかねない。
東洋経済オンライン 10月12日(水)8時15分配信
駅に「ポケモン」が出現! 法的問題はあるか
「ポケモンGO」のサービス開始以来、歩きスマホの危険性に対する注目がさらに高まっている(写真:bee/PIXTA)
一時期に比べるとだいぶ落ち着いたようだが、今さらながら「ポケモンGO」について言及したい。
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「ポケモンGO」は、スマホ画面上の地図に現れるポケモンをモンスターボールで捕まえたりバトルをしたりするゲームである。この原稿を書くにあたり私も登録をしてみたが、このような地図と組み合わせるゲームをよく作ったものだと感心した。「隠れているポケモン」という表示が出れば私でも探したくなる。
「ポケストップ」や「ジム」を設定された施設などでは、人が集まることになり来客数の増加や売り上げ増加などの好影響がでているところもあるようである。しかしその一方、否定的な話も浮上しているようである。神社仏閣では「ポケストップ」や「ジム」を拒絶するところや、深夜閉鎖の駐車場では、閉鎖時間を経過後に車ごと駐車場に取り残された人もいたという話もあった。
「ポケモンGO」が原因の一つという事故も起きている。鉄道駅においても、構内放送や掲示物で、歩きながら位置情報を利用したスマホゲームをやらないように、という注意喚起が目立つようになった。
■ポケモン出現が負担になる場合も
もともと、少し前から鉄道駅でのものを含め、いわゆる「歩きスマホ」の危険性は指摘されていた。「ポケモンGO」が「歩きスマホ」の危険性をどれだけ高めたか分からないが、駅構内の注意喚起が増えたということはその危険性を否定できないのであろう。
また、「ポケストップ」や「ジム」が設定されたり、「ポケモン」が出現したりするところは事前に運営会社から施設等へ通知があるわけでもなく、運営会社が独自に設定しているようである。お客が集まってそれにより経済効果を得ているところはいいものの、想定外の訪問者に悲鳴を上げているところもある。他のお客への迷惑防止や安全確保の点で負担が増加しているところもあるようである。
事故の際の責任はどうなるのか
いまは「ポケモンGO」がスマホの位置情報を利用したゲームの代表格になっているが、いずれ類似のゲームは色々と登場するのかもしれない。そこで以下、「ポケモンGO」を「位置情報ゲーム」、「ポケストップ」などは「拠点」、「ポケモン」は「獲物」として、一般論として鉄道においても問題はないか見てみたい。ただし、事案の集積はまだ少なく、完全な私見であること、特定の者の責任を処断するものでもないことをお断りしておく。
まずはその危険性である。獲物探しに夢中になって周りが見えなくなった場合、対列車との関係でいえば、触車事故、ホームからの転落事故、対ほかの利用客との関係でいえば、通行人同士の接触事故の危険があり得る。
最近の駅ではホームドア設置工事が少しずつ進んでいる。ホームドア設置が全駅で完了すれば触車事故やホームからの転落事故は激減するであろうが、いまはその過渡期である。ホームが危険であることは疑いがない。ホーム上で拠点や獲物が現れるようにして、それが原因で事故が起きたとき、その責任の所在が問題になろう。
確かに、位置情報ゲームを始めるとき、「危険なところでは遊ぶな」という表示がスマホに現れる。移動速度が速いと感知したときには制限がかかり、自動車を運転していない場合には運転者でない旨を確認するボタンもある。一応、安全確保の配慮がされてはいる。
しかし、その表示があるからといって、そもそも危険な場所から危険が除去されるわけでない。プレイヤーの個別的な事情で危険な目に遭ったという場合はともかく、位置情報ゲームをするには類型的に危険と判断される場所もあろう。駅のホームなどはその典型である。そのような場所でいかに位置情報ゲームをすることが危険であると訴えてもそれで十分とはいえない。駅のホームなど当然に危険性を帯びる場所では、そもそも獲物を出現させないとか、出現させるのであれば鉄道事業者等の安全管理責任者などとの調整が必要であろう。
■ポケモンが線路に出たら不法立入?
次に、公道上や公園などはともかく、鉄道事業者が管理する場所で、鉄道事業者の関与がないままに人が集まる仕組みを作り上げることに、管理権の点で問題はないのであろうか。
たとえば、@鉄道地内に入らなくても捕らえられる獲物が鉄道地内にいる場合、A鉄道地内に入らないと捕らえられない獲物が鉄道地内にいる場合などに鉄道事業者の管理権との関係で問題がないかということである。
@Aのいずれにしても、物理的に運営会社が鉄道地内に進入して拠点を設置したり獲物を出現させたりしているわけではない。鉄道地内にスマホを通じて電子的に拠点を設置したり獲物を出現させたりする仕組みを作っても、それが不法な立入になるわけではない。
一方、Aの場合には利用者を鉄道地内に進入させることになる。鉄道地内に利用者を鉄道地へ進入させることは、利用者に許諾を得ない鉄道地内への違法な立入をさせる可能性にもつながりかねない。
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