2016年09月25日
ハード屋とソフト屋が一緒に作るとシステムはどうなるか?
ハード屋とソフト屋が一緒に作るとシステムはどうなるか?
ITmedia エンタープライズ 9月23日(金)13時26分配信
ハード屋とソフト屋が一緒に作るとシステムはどうなるか?
コンバージドインフラストラクチャ担当エグゼクティブバイスプレジデントのデイビット・ドナテリ氏
米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催中のOracleの年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」は現地時間9月21日、同社が「エンジニアドシステム」と呼ぶ統合型システム製品の最新動向を中心に紹介した。この日の基調講演ではハードウェアとソフトウェアの共同開発による成果を披露している。
【画像】SPARCプロセッサ開発での“共同作業”によるという成果
●パブリッククラウドに行く5つのルート
基調講演の前半は、コンバージドインフラストラクチャ担当エグゼクティブバイスプレジデントのデイビット・ドナテリ氏がクラウド環境への移行をテーマに講演した。
ドナテリ氏は、オンプレミス環境で稼働する複雑な企業システムのクラウド環境への移行では、コストが大きな課題だと指摘。クラウド化における5つの移行過程と、そこでOracleが用意しているという手法を挙げた。
5つの移行過程はいずれも、将来的に「ITシステムがパブリッククラウドで稼働する世界になる」というもの。その過程で、エンジニアドシステムを使うモデル(システム統合)、オンプレミスとクラウドの併用モデル(ハイブリッドクラウド)、月額課金で統合型システムを利用するモデル(ベアメタルサービス)、企業内に専用クラウド(プライベートクラウド)を構築するモデルの4つを経るスタイルがあり、オンプレミスから直接パブリッククラウドにするスタイルを加えた計5つになる。
同社は、今回のイベントでIaaSサービスの本格的な提供やベアメタルサービスの「Oracle@Customer」などを発表しており、ドナテリ氏は、顧客事例を交えながら、企業が5つの過程のどれを採用しても、最終的なクラウドへのゴールに向かうことができると強調した。
大手ITベンダーのほとんどは、「企業が最終的に選ぶのはハイブリッドクラウド」とのメッセージを発している。セキュリティ要件や経営環境など、企業ユーザーを取り巻くさまざま制約を考慮すれば、ドナテリ氏の示した「全てがパブリッククラウドに」というのは極端なメッセージに映る。
講演の中でドナテリ氏は、エンジニアドシステムを使う事例としてデータ分析向けのExadataを導入しているNTTドコモやブラジルの大学病院、さらには基幹系システムの大半をOracleのパブリッククラウドに移行した米通信大手T-Mobileを紹介した。
同氏は、統合型システム製品やクラウドが通信や医療など社会基盤を支える業界の基幹システムに採用されている現状が、同社の主張を証明するものだとしている。
●製品開発はハードとソフトの共同作業
ドナテリ氏に続いて、システムズ担当エグゼクティブバイスプレジデントのジョン・ファウラー氏と、システムテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのホアン・ロザイア氏が一緒に壇上へ上がった。システム製品のハードウェア責任者とソフトウェア責任者が同時に講演するのは初めてという。
まず両氏は、異なるベンダーのハードウェアやソフトウェアで構築された水平分業モデルによるシステムが時代遅れで、統合型システムの方が近代的だと切り出す。ITシステムがクラウドで動く将来を見据えれば、水平分業モデルによるシステムは効率的ではなく、ハードとソフトが共同作業で開発する統合型システムの方が、性能面でも、信頼性の面、コストの面でも有利と主張した。
ハードウェアでは性能を追求する文化が根強く、ソフトウェアは高度な機能を実行するために高性能なハードウェアを必要としてきたことから、過大な性能がユーザーのニーズに合致しない場合があるという。水平分業型のシステムでこの課題は解決しづらいが、統合型ならハードウェア・ソフトウェアの長所を発揮できるという。
ハードウェアの高い性能をソフトウェア側で効率的に処理に利用することで、例えば、データベースの観点では、インメモリによる並列処理とオンライントランザクション処理の異なるワークロードを同一システム上で実行できるようになる。ソフトウェアの高速化エンジンを実装したSPARC M7プロセッサの場合、データベースでのインメモリ処理は83倍に高速され、暗号化処理についてもCPUにかかる負荷は、いまではせいぜい2%程度しかないという。
両氏は、これらがOracleによるSun買収から8年をかけて順次達成されてきた成果だと説明。最新世代のエンジニアドシステムでは、例えば、オールフラッシュメモリのストレージよりも高いI/O性能を発揮し、安定性や信頼性を確保した上で多数のデータベースを稼働させられるとした。
現在はこうした取り組みをさらに進め、セキュリティや可用性も強化されているという。例えば、セキュリティではメモリ上に展開されたデータの処理にまつわる脆弱性を突くことで、不正コードを実行できる攻撃手法が脅威になるが、SPARCプロセッサではメモリ領域をハードウェアレベルで保護することにより、脆弱性の悪用を阻止するという。
ドナテリ氏の講演では、統合型システムはパブリッククラウドへの移行手段の1つに過ぎないものの、ファウラー氏とロザイア氏の講演は、統合型システムにおける進化を説明することで、同社の掲げるパブリッククラウド化への道筋が単なるメッセージではないことを裏付けたいとの狙いがあったようだ。
ITmedia エンタープライズ 9月23日(金)13時26分配信
ハード屋とソフト屋が一緒に作るとシステムはどうなるか?
コンバージドインフラストラクチャ担当エグゼクティブバイスプレジデントのデイビット・ドナテリ氏
米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催中のOracleの年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」は現地時間9月21日、同社が「エンジニアドシステム」と呼ぶ統合型システム製品の最新動向を中心に紹介した。この日の基調講演ではハードウェアとソフトウェアの共同開発による成果を披露している。
【画像】SPARCプロセッサ開発での“共同作業”によるという成果
●パブリッククラウドに行く5つのルート
基調講演の前半は、コンバージドインフラストラクチャ担当エグゼクティブバイスプレジデントのデイビット・ドナテリ氏がクラウド環境への移行をテーマに講演した。
ドナテリ氏は、オンプレミス環境で稼働する複雑な企業システムのクラウド環境への移行では、コストが大きな課題だと指摘。クラウド化における5つの移行過程と、そこでOracleが用意しているという手法を挙げた。
5つの移行過程はいずれも、将来的に「ITシステムがパブリッククラウドで稼働する世界になる」というもの。その過程で、エンジニアドシステムを使うモデル(システム統合)、オンプレミスとクラウドの併用モデル(ハイブリッドクラウド)、月額課金で統合型システムを利用するモデル(ベアメタルサービス)、企業内に専用クラウド(プライベートクラウド)を構築するモデルの4つを経るスタイルがあり、オンプレミスから直接パブリッククラウドにするスタイルを加えた計5つになる。
同社は、今回のイベントでIaaSサービスの本格的な提供やベアメタルサービスの「Oracle@Customer」などを発表しており、ドナテリ氏は、顧客事例を交えながら、企業が5つの過程のどれを採用しても、最終的なクラウドへのゴールに向かうことができると強調した。
大手ITベンダーのほとんどは、「企業が最終的に選ぶのはハイブリッドクラウド」とのメッセージを発している。セキュリティ要件や経営環境など、企業ユーザーを取り巻くさまざま制約を考慮すれば、ドナテリ氏の示した「全てがパブリッククラウドに」というのは極端なメッセージに映る。
講演の中でドナテリ氏は、エンジニアドシステムを使う事例としてデータ分析向けのExadataを導入しているNTTドコモやブラジルの大学病院、さらには基幹系システムの大半をOracleのパブリッククラウドに移行した米通信大手T-Mobileを紹介した。
同氏は、統合型システム製品やクラウドが通信や医療など社会基盤を支える業界の基幹システムに採用されている現状が、同社の主張を証明するものだとしている。
●製品開発はハードとソフトの共同作業
ドナテリ氏に続いて、システムズ担当エグゼクティブバイスプレジデントのジョン・ファウラー氏と、システムテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのホアン・ロザイア氏が一緒に壇上へ上がった。システム製品のハードウェア責任者とソフトウェア責任者が同時に講演するのは初めてという。
まず両氏は、異なるベンダーのハードウェアやソフトウェアで構築された水平分業モデルによるシステムが時代遅れで、統合型システムの方が近代的だと切り出す。ITシステムがクラウドで動く将来を見据えれば、水平分業モデルによるシステムは効率的ではなく、ハードとソフトが共同作業で開発する統合型システムの方が、性能面でも、信頼性の面、コストの面でも有利と主張した。
ハードウェアでは性能を追求する文化が根強く、ソフトウェアは高度な機能を実行するために高性能なハードウェアを必要としてきたことから、過大な性能がユーザーのニーズに合致しない場合があるという。水平分業型のシステムでこの課題は解決しづらいが、統合型ならハードウェア・ソフトウェアの長所を発揮できるという。
ハードウェアの高い性能をソフトウェア側で効率的に処理に利用することで、例えば、データベースの観点では、インメモリによる並列処理とオンライントランザクション処理の異なるワークロードを同一システム上で実行できるようになる。ソフトウェアの高速化エンジンを実装したSPARC M7プロセッサの場合、データベースでのインメモリ処理は83倍に高速され、暗号化処理についてもCPUにかかる負荷は、いまではせいぜい2%程度しかないという。
両氏は、これらがOracleによるSun買収から8年をかけて順次達成されてきた成果だと説明。最新世代のエンジニアドシステムでは、例えば、オールフラッシュメモリのストレージよりも高いI/O性能を発揮し、安定性や信頼性を確保した上で多数のデータベースを稼働させられるとした。
現在はこうした取り組みをさらに進め、セキュリティや可用性も強化されているという。例えば、セキュリティではメモリ上に展開されたデータの処理にまつわる脆弱性を突くことで、不正コードを実行できる攻撃手法が脅威になるが、SPARCプロセッサではメモリ領域をハードウェアレベルで保護することにより、脆弱性の悪用を阻止するという。
ドナテリ氏の講演では、統合型システムはパブリッククラウドへの移行手段の1つに過ぎないものの、ファウラー氏とロザイア氏の講演は、統合型システムにおける進化を説明することで、同社の掲げるパブリッククラウド化への道筋が単なるメッセージではないことを裏付けたいとの狙いがあったようだ。
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