2024年09月16日
遠藤周作の「あの世で」で執筆脳を考える2
2 Lの分析
遠藤周作(1923−1996)は、晩年に人間にとり死が何なのか真剣に考えていた。死は肉体を滅ぼしても魂は滅びず、次の世界へ行く。高橋(2000)によると、その世界が現世に何らかの影響を及ぼし続け、自他をともに動かし、互いを見守り、永久に生命体が存在することを作者は信じていた。そして、遠藤周作は、「あの世で」を彼の作品群の隙間を埋めるものと位置づけた。
アメリカの精神科医キューブラー・ロス(1926−2004)博士の影響もある。ロスは、死にかけている患者の扱いに憤慨し、死と死ぬことそして死後の世界に関心を持つようになった。ロスの研究では、死の受容プロセスが有名である。否定・遊離→怒り→取引→抑うつ→受容というように経過する。自分が死ぬことは嘘ではないか疑い、それを怒り、何かに縋ろうとし、次第に何もできなくなり、死を受け入れる。(キューブラー・ロスWikipedia)
日航機が御巣鷹山に墜落した事故は、夏のお盆や終戦記念と重なって魂が里帰りする季節を思い出す。もし、大阪行きの日航機402便に搭乗していたら、墜落事故に遭遇しただろう友人大塚公平は、囲碁仲間からの強引な誘いのおかげで夜の新幹線に乗ることになる。そこで奇跡が起こった。
しかし、話はこれだけでは終わらない。友人の大塚の恋人だった別所芳子と同姓同名の遭難者がいる。この女性は、40年も前に乳癌で死んでいる。新聞社が家族に連絡しようにも住所が存在しない。住所以外は、大塚が恋人と別れた時点と変わらない。年齢も23歳である。その女性が身代わりになってくれた。次の世界にいても同じ屋根の下でともに苦労を重ねた男を愛する気持ちからお守りしてくれた。ありがたい限り。
動物の肉体に宿って心の働きを司ると考えられる魂について改めて考えさせられる。そこで、購読脳を「魂と心の繋がり」にする。心の繋がりは、無論精神作用であるため、執筆脳は、「リンクと隙間」にする。この執筆脳を購読脳の「魂と心の繋がり」とマージした場合のシナジーのメタファーは、「遠藤周作と隙間の調節」である。
花村嘉英(2020)「遠藤周作の『あの世で』の執筆脳について」より
遠藤周作(1923−1996)は、晩年に人間にとり死が何なのか真剣に考えていた。死は肉体を滅ぼしても魂は滅びず、次の世界へ行く。高橋(2000)によると、その世界が現世に何らかの影響を及ぼし続け、自他をともに動かし、互いを見守り、永久に生命体が存在することを作者は信じていた。そして、遠藤周作は、「あの世で」を彼の作品群の隙間を埋めるものと位置づけた。
アメリカの精神科医キューブラー・ロス(1926−2004)博士の影響もある。ロスは、死にかけている患者の扱いに憤慨し、死と死ぬことそして死後の世界に関心を持つようになった。ロスの研究では、死の受容プロセスが有名である。否定・遊離→怒り→取引→抑うつ→受容というように経過する。自分が死ぬことは嘘ではないか疑い、それを怒り、何かに縋ろうとし、次第に何もできなくなり、死を受け入れる。(キューブラー・ロスWikipedia)
日航機が御巣鷹山に墜落した事故は、夏のお盆や終戦記念と重なって魂が里帰りする季節を思い出す。もし、大阪行きの日航機402便に搭乗していたら、墜落事故に遭遇しただろう友人大塚公平は、囲碁仲間からの強引な誘いのおかげで夜の新幹線に乗ることになる。そこで奇跡が起こった。
しかし、話はこれだけでは終わらない。友人の大塚の恋人だった別所芳子と同姓同名の遭難者がいる。この女性は、40年も前に乳癌で死んでいる。新聞社が家族に連絡しようにも住所が存在しない。住所以外は、大塚が恋人と別れた時点と変わらない。年齢も23歳である。その女性が身代わりになってくれた。次の世界にいても同じ屋根の下でともに苦労を重ねた男を愛する気持ちからお守りしてくれた。ありがたい限り。
動物の肉体に宿って心の働きを司ると考えられる魂について改めて考えさせられる。そこで、購読脳を「魂と心の繋がり」にする。心の繋がりは、無論精神作用であるため、執筆脳は、「リンクと隙間」にする。この執筆脳を購読脳の「魂と心の繋がり」とマージした場合のシナジーのメタファーは、「遠藤周作と隙間の調節」である。
花村嘉英(2020)「遠藤周作の『あの世で』の執筆脳について」より
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