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2024年09月16日

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」で執筆脳を考える2

2 Lの分析

 「書いて書いて書きまくる」を地で行く仕事ぶり。佐藤愛子(1923年−)の精力的な作品作りは定評のある所である。河野(2012)によると、佐藤愛子は、人間が大好きな作家である。最も興味のあるものは、人間の性格のようである。登場人物に纏わる性格の創造と表現が作品の随所に見られる。そこで、購読脳を「性格の創造とその表現」にする。
 「沢村校長の晩年」の作中人物の性格の作り方を見てみよう。沢村正剛は、30年間私立の女子高校の校長を勤め、退職後は趣味を楽しんでいる。作中ではすでに75歳になり、妻の正子は亡くなり、晩年を一人で過ごしている。一人暮らしになった正剛のために、長男勇也の妻忍が初老の赤松光江に手伝いを依頼する。働き者でも神経質で小うるさい正剛とは性格が合わない。余計なお節介だと口にする数倍鈍感で旺盛な善意にいら立っている。月に一度様子を見に来る忍が介在することにより、二人の性格のコントラストが際立つ。 
 執筆脳は、性格を創造するための表現を駆使しながら何人もの登場人物を調節するため、「創造と認知発達」にする。認知発達に関しては、川端康成の「雪国」を分析した花村(2019)に詳しく説明がある。参考にしてもらいたい。執筆脳の「創造と認知発達」を購読脳の「性格の創造とその表現」とマージした場合のシナジーのメタファーは、「佐藤愛子と認知発達」にする。 

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の執筆脳について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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