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2024年09月17日

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」の執筆脳について−自然や文化の観察者の立場から4

3 言文一致の研究−文体の確立を目指して

 島崎藤村は、長野県木曽郡山口に生まれ、学問を東京の明治学院で修めた後、詩人、小説家として活躍した自然主義を代表する作家である。小説に先んじて詩集「若菜集」(1897)などを発表し、1899年(M32)4月に赴任した信州・小諸での研究成果として写生文「千曲川のスケッチ」を書いた。因みに藤村は、木曽川の畔で生まれたため、川に寄せる詩も多い。
 平野(2004)によると、「千曲川のスケッチ」は、吉村樹に語りかける形式で書かれ、赴任してからの一年で小諸の自然を季節と共に観察し写生した。その間に詩から散文へ創作の対象を動かして自身の文体を確立する。無論、藤村の文体は、何度も修正を繰り返し整理されたものであり、一枚の絵を説明するように口語文で読者の五感に語りかける。

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』の執筆脳について−自然や文化の観察者の立場から」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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