村上晶教授、猪俣武範准教授らの研究グループです。
「目が疲れやすい」「目がしょぼしょぼ、ごろごろする」「目が乾いた感じがする」「目に不快感がある」「光がまぶしい」などの症状があれば、ドライアイの可能性が高い。
ドライアイは、涙の分泌量が不足したり、量は問題ないが涙の質の低下で涙がすぐに蒸発することで起こる。 目の不快な症状だけでなく、角膜が乾燥し、角膜や結膜が傷つきやすくなる。
原因は、加齢、コンタクトレンズの使用、空調による室内の乾燥、涙の分泌量が減る薬の服薬などがあるが、大きいのはパソコンやスマートフォンなどのモニター画面を長時間見続けることによる瞬きの減少だ。
今後テレワーク化が進み、オンラインでの会議や飲み会などが増えると、モニター画面を見る機会も増えるので、ドライアイの増加が容易に想像できる。
順天堂大学眼科では、アップル社提供の医療研究フレームワークを用いて、瞬きの回数やドライアイのレベルなどを毎日測定するスマートフォン用のアプリケイション「ドライアイリズム」を2016年開発。同年11月から18年1月の間にダウンロードした日本のユーザー4454人を対象に、ドライアイの重症化と抑うつ症状の関連を解析した。その結果、明らかになったことの一つが、冒頭にあげた「ドライアイがうつ病と関連しているのではないか」ということだ。
「もともとドライアイとうつ病は、ホルモン、代謝、精神学的不均衡などの共通した危険因子があることが分かっており、ドライアイとうつ病を併発している人が多い可能性が考えられていました。
それが今回の研究につながるきっかけとなりました」(猪俣武範准教授=以下同)
猪俣准教授らは、対象者4454人のうち、ドライアイ診療で広く用いられている問診票OSDI(Ocular Surface Disease Index)13点以上を「ドライアイ症状あり」、抑うつ症状の程度を評価する問診票SDS(Self-rating Depression Scale)40点以上を「抑うつ症状あり」と定義。ドライアイの症状や、年齢、性別などの基本情報、病歴、生活習慣などの関連や、ドライアイの自覚症状と抑うつ症状の関連を解析したところ、4454人中74%にドライアイ症状、73,4%に抑うつ症状があった。ドライアイ症状がある人の78,8%に抑うつ症状もあった。「ドライアイの自覚症状の程度を、経度、中等度、重症で分けると、自覚症状が悪化すると抑うつ症状もも悪化傾向を示すことが分かりました。さらに、自覚症状が軽度であれば1,62倍、中等度であれば2,39倍、重症であれば3,29倍 抑うつ症状を併発しやすいこともわかりました。
研究結果から導き出されたのは、「ドライアイの自覚症状が悪化すると抑うつ症状を併発することが増える」。つまり、ドライアイがひどい人にはうつ病の人も隠れている可能性があり、うつ病の早期発見、早期治療につなげられるかもしれないということだ。
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