NK細胞は、私たちの体に毎日できる異形細胞をやっつけてくれる。私たちの体の中では毎日1兆個の細胞が新たにできますが、その内、出来損ないの遺伝子を持つ突然変異を起こした細胞(異形細胞)が3千〜5千個はできるといわれています。それががん細胞です。
元気ならば、毎日できるがん細胞は撲滅されて増殖することはありません。がん細胞が増殖しないように役割を担っているのがNK細胞です。
T細胞、B細胞を軍隊とすると、NK細胞は町のお巡りさんです。お巡りさんは、日本の国が平和な時にも交番で頑張っています。私たちの生活の治安を守ってくれているのです。近所を見回りして、泥棒や悪さをする不良少年などを取り締まっています。異常な細胞は、そんな不良少年に例えられます。
お巡りさんが目をパッチリ開いてきちんと見回って理れば、近所に出てくる不良少年(異常細胞)はそこでたたかれて消滅します。
ところがお巡りさんが年を取ったりして弱ってくる。すなわちNK細胞が弱くなると、交番でちょっと居眠りします。居眠りしている間に不良少年は徒党を組んで暴力団になってしまう。それが、がんの塊です。
その時には、お巡りさんでは太刀打ち出来ません。ですから、まだ何とかなる、不良少年のうちに、がん細胞を一つ一つ、たたくのが大事なのです。
NK細胞は将棋に例えるというと、歩のような役割で、体の中にできているがん細胞や外からないって来るウイルスと最前線で戦っています。軍隊のT細胞やB細胞は、発熱時に出勤しますが、平日時はお休みしています。平熱時に最前線で見張っているのがお巡りさんのNK細胞です。時間的にも最もよく働いている大切な防御システムの一つといえます。
NK細胞が元気であれば、がん細胞が増殖することはないのです。つまり、がんにならところが、NK細胞が元気をなくすと、がん細胞が増殖してしまいます。つまり、発がんの流れができるのです。
このNK細胞が、T細胞、B細胞の軍隊と大きく違うのが、年齢の影響を大きく受けることです。軍隊であるT細胞、B細胞は120歳になっても何ともないのですが、NK細胞は、動物実験では人の年齢に例えれば、10〜20歳の時にぐんと上り60歳以上になると、どうしても下がります。
それを人の年齢にそのまま当てはめるのは難しいです。なぜかといえば、NK活性が低い人は60歳くらいまでで死んでしまっていて、60〜70歳で生き残っている人は、みんなNK活性が高いからです。
ですから、人間の場合、動物実験のようなカーブは、なかなか出てこないのです。しかしNK細胞の活性は、一般の人間でもほぼ60歳以上になれば年齢とともに下がると考えられます。NK細胞は年齢の影響を大きく受けるのが、T細胞、B細胞とは違うところです。
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