「ミニ臓器」と呼ばれ、これまでよりも人体に近い組織で実験できる利点がある。
病気のメカニズム解明や再生医療、体の成り立ちを探る研究など、応用分野は幅広い。
あらたな薬の開発にもつながると期待されている。
◆コロナの謎解明へ
オルガノイドの研究が盛んになったのは、材料となる人間のES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞【人工多機能
幹細胞)が1990〜2000年代に開発され、組織や臓器がどのように作られていくかを探る研究が飛躍
的に進んだためです。
理化学研究所の笹井芳樹氏(故人)らが08年、人間やマウスのES細胞から脳に似た組織を作成したことも
大きな影響を与えた。
オルガノイドは、様々な細胞からなる生体内の複雑な構造や、細胞同士の相互作用も再現できる事が利点
だ。従来の培養法では、細胞は平面的で均一な集まりしかならず、現実の構造とは程遠かった。
京都大学の野口岳志教授(ウイルス学)らは、ES細胞から鼻腔のオルガノイドを作り、新型ウイルス感染症
が重症化するメカニズムや後遺症の原因を探っている。
「実際に人体を使って実験するのは倫理的に大きな制約がある。マウスなどの動物実験は、人間と違う結果
になることもある」と、オルガノイドを使う理由を説明する。
野口教授らは、粘膜の細胞や臭神経が並んだ鼻腔を再現した。ウイルスの感染が粘膜の細胞から神経細胞
に広がり、最終的に、臭神経の元となる細胞を破壊することで長期的臭覚障害を引き起こすとみられること
がわかった。
京大iPS細胞研究所の高山和夫講師(幹細胞生物学)は、気管支を模したオルガノイドを作製した。
「変異株ごとに重症化しやすさなどの特性や、治療薬の効果を調べることが出来る」と語る。
◆チップでつなぐ
オルガノイドは、再生医療や新薬開発の分野での活用が特に盛んだ。東京医科歯科大学の武部貴則教授
【幹細胞生物学】らは19年、人間のiPSaibouwotukai,オルガノイドで肝臓と胆管、すい臓がつながった
構造を再現した。現在は1ミリ・メートル に満たない大きさで臓器の機能を代替えできるか不明だが、
「10年後には臨床試験で移植に利用できるようになれば」と考えている。
心臓や腸、肺など、大抵の臓器のオルガノイドは差帰省可能で、これらを樹脂製のチップ上でつなげた
「臓器チップ」も作られている。薬を投与すると、それぞれの臓器が影響を与え合うことでホルモンの
濃度が変化するといった、複雑な反応を調べられる。
武部教授は米国務と共同で、肝臓や小腸、すい臓のオルガノイドからなるチームを作り、糖尿病の治療
薬開発のつなげるプロジェクトを進めている。
参考*オルガノイド(organoid)=(organ-臓器などの器官)+「~oid(~のようなもの)」
3次元的で本物の臓器に近い構造
多様的な細胞で構成
臓器の機能も再現
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