2017年06月17日
J1昇格候補のはずが低迷する松本山雅。 「あっさり失点病」は治るか
6月11日、松本。日差しは初夏だったが、風が火照る肌を冷やした。
「我慢の試合だった」
試合後、J2水戸ホーリーホックの選手はそう洩らしている。我慢して辛抱して、一発を叩き込んだ。どちらが優位かは明白な一戦だったと言えるだろう。
「内容は悪くなかったが、FK一発でやられた」
一方のJ2松本山雅の三島康平は、抑えたトーンでマイクの砲列に向かってそう言った。勝負の結末はしばしば酷薄だ。
試合の主導権を握った松本だが、結果は0−1と膝を屈した。これでリーグ戦は黒星が先行。順位は15位まで後退した。J1昇格レースは長丁場で、まだ猶予は残されているものの、危険水域に近づいている。
では、水戸戦は何がズレ、結果が逆になったのか?
「今シーズンを象徴するようなゲームだった」
松本の反町康治監督は、絞り出すような声音で語っている。
今シーズン、松本はJ1昇格最有力候補として発進した。
昨シーズンは84ポイントを獲得。例年なら優勝しても不思議ではない勝ち点だったが、3位で昇格を逃した。ただ、サッカーの質は確実に向上。ボールプレーの時間を増やし、幅を使った攻撃は迫力十分だった。
「J1から落ちて、同じことをやっても成長がない。時間をかけて、”ボールが流れるルート”を作ってきた。その成果は(プレーオフでも)出せたと思う」
昨シーズン、プレーオフで敗れた反町監督はそう言ったが、それは強がりでも、言い訳でもなかった。プレー精度は上がっていたのだ。
今シーズンも、その戦いを踏襲した。
水戸戦も、松本はイニシアチブを握っている。工藤浩平がエリア内に侵入して左サイドを破り、波状攻撃を食らわす。石原崇兆が右サイドからピンポイントのクロスを折り返し、高崎寛之がヘディングで合わせた。
前半から能動的に攻め、高さでもアドバンテージを取った。相手陣内のFKでは、ヘディングの強いセンターバック、飯田真輝を前線に上げ、同じく高さのある高崎とツインタワーで脅威を与える。前半36分には、GKが蹴ったロングボールを飯田が競り勝って裏に落とし、そこに走り込んだ高崎がGKと1対1になった。
前半だけで10本のシュートを打ち込む。コーナーキックは6本で、対する水戸は0本。どちらも無得点とはいえ、ほぼワンサイドだった。
「チャンスメイクするところまではできている」と、反町監督は展開を振り返った。
「あとは最後のところのキレ、スピード、力強さ、正確さ。あるいは冷静さというのか。結局は自分たちのリズムのときに点が取れるか。取れるチームが勝ち点を取れるし、それに値する。それはどのチームも同じで、その精度を上げていかないと」
結局、松本はシュートを外し続けたツケを払うことになる。後半に入って70分、水戸のFKからのヘディングを防げなかった。
「失点に関しては、”あっさり失点病”というかね。相手のゴールがスーパーなら諦めもつくが……。あまり与えていないセットプレーで1発だから。粘れるところで粘れなくなっちゃった」
反町監督は俯(うつむ)いたまま言った。あっさり失点病の病根を特定するのは難しい。
メンバー編成的には、GKシュミット・ダニエル、左利きDFの喜山康平を放出した穴はあるだろう。失点シーンを切り取れば、ピッチに立つ選手に単純な甘さもあった。まず自陣でのスローインをあっさり敵に渡している。サイドへ流れた選手に対して不用意に後ろから倒し、FKを与えた。そして福井諒司にマークを外され、前に入られている。細かいミスが連続した、必然的失点だった。
しかし、複合的な要因も考えられる。攻めながら得点を奪えないことで、ディフェンスは慎重さから後手を踏み、焦りから判断を鈍らせる。
「サッカーの怖さは知っている」
松本を率いて6年目になる反町監督は言うが、そこに今シーズンのズレの正体はあるかもしれない。
<ブロックを作って守り、耐えて、1発を仕留める>
かつての松本は、この日の水戸に近いサッカーで勝ち点を稼いでいた。しかし能動的にプレーするようになって、皮肉にもリスクも負うようになった。攻めることで裏を取られやすく、油断も生まれた。
「今日は力負けでも、自滅でもない。一時のダメなときよりは、光が見えた」
反町監督は顔を上げて言った。攻守の仕組みは作り上げた。それによって、選手のプレー精度の質が浮き彫りになる、という矛盾した結果にはなった。しかし松本が本当に強くなるには、そこを突き詰めていくしかないのだ。
「昨シーズンも4,5連勝してから負けなしだったので、今シーズンも連勝を(浮上の)きっかけにしたい」
ミックスゾーンに出てきた宮阪政樹はこう語ったが、選手たちは”よすが”を求めているのだろう。自信を失いつつあることによって生じた迷い。巣くった魔物を退治できるか。頂きを目指す”緑の戦士”たちは、岐路に立たされている。
「我慢の試合だった」
試合後、J2水戸ホーリーホックの選手はそう洩らしている。我慢して辛抱して、一発を叩き込んだ。どちらが優位かは明白な一戦だったと言えるだろう。
「内容は悪くなかったが、FK一発でやられた」
一方のJ2松本山雅の三島康平は、抑えたトーンでマイクの砲列に向かってそう言った。勝負の結末はしばしば酷薄だ。
試合の主導権を握った松本だが、結果は0−1と膝を屈した。これでリーグ戦は黒星が先行。順位は15位まで後退した。J1昇格レースは長丁場で、まだ猶予は残されているものの、危険水域に近づいている。
では、水戸戦は何がズレ、結果が逆になったのか?
「今シーズンを象徴するようなゲームだった」
松本の反町康治監督は、絞り出すような声音で語っている。
今シーズン、松本はJ1昇格最有力候補として発進した。
昨シーズンは84ポイントを獲得。例年なら優勝しても不思議ではない勝ち点だったが、3位で昇格を逃した。ただ、サッカーの質は確実に向上。ボールプレーの時間を増やし、幅を使った攻撃は迫力十分だった。
「J1から落ちて、同じことをやっても成長がない。時間をかけて、”ボールが流れるルート”を作ってきた。その成果は(プレーオフでも)出せたと思う」
昨シーズン、プレーオフで敗れた反町監督はそう言ったが、それは強がりでも、言い訳でもなかった。プレー精度は上がっていたのだ。
今シーズンも、その戦いを踏襲した。
水戸戦も、松本はイニシアチブを握っている。工藤浩平がエリア内に侵入して左サイドを破り、波状攻撃を食らわす。石原崇兆が右サイドからピンポイントのクロスを折り返し、高崎寛之がヘディングで合わせた。
前半から能動的に攻め、高さでもアドバンテージを取った。相手陣内のFKでは、ヘディングの強いセンターバック、飯田真輝を前線に上げ、同じく高さのある高崎とツインタワーで脅威を与える。前半36分には、GKが蹴ったロングボールを飯田が競り勝って裏に落とし、そこに走り込んだ高崎がGKと1対1になった。
前半だけで10本のシュートを打ち込む。コーナーキックは6本で、対する水戸は0本。どちらも無得点とはいえ、ほぼワンサイドだった。
「チャンスメイクするところまではできている」と、反町監督は展開を振り返った。
「あとは最後のところのキレ、スピード、力強さ、正確さ。あるいは冷静さというのか。結局は自分たちのリズムのときに点が取れるか。取れるチームが勝ち点を取れるし、それに値する。それはどのチームも同じで、その精度を上げていかないと」
結局、松本はシュートを外し続けたツケを払うことになる。後半に入って70分、水戸のFKからのヘディングを防げなかった。
「失点に関しては、”あっさり失点病”というかね。相手のゴールがスーパーなら諦めもつくが……。あまり与えていないセットプレーで1発だから。粘れるところで粘れなくなっちゃった」
反町監督は俯(うつむ)いたまま言った。あっさり失点病の病根を特定するのは難しい。
メンバー編成的には、GKシュミット・ダニエル、左利きDFの喜山康平を放出した穴はあるだろう。失点シーンを切り取れば、ピッチに立つ選手に単純な甘さもあった。まず自陣でのスローインをあっさり敵に渡している。サイドへ流れた選手に対して不用意に後ろから倒し、FKを与えた。そして福井諒司にマークを外され、前に入られている。細かいミスが連続した、必然的失点だった。
しかし、複合的な要因も考えられる。攻めながら得点を奪えないことで、ディフェンスは慎重さから後手を踏み、焦りから判断を鈍らせる。
「サッカーの怖さは知っている」
松本を率いて6年目になる反町監督は言うが、そこに今シーズンのズレの正体はあるかもしれない。
<ブロックを作って守り、耐えて、1発を仕留める>
かつての松本は、この日の水戸に近いサッカーで勝ち点を稼いでいた。しかし能動的にプレーするようになって、皮肉にもリスクも負うようになった。攻めることで裏を取られやすく、油断も生まれた。
「今日は力負けでも、自滅でもない。一時のダメなときよりは、光が見えた」
反町監督は顔を上げて言った。攻守の仕組みは作り上げた。それによって、選手のプレー精度の質が浮き彫りになる、という矛盾した結果にはなった。しかし松本が本当に強くなるには、そこを突き詰めていくしかないのだ。
「昨シーズンも4,5連勝してから負けなしだったので、今シーズンも連勝を(浮上の)きっかけにしたい」
ミックスゾーンに出てきた宮阪政樹はこう語ったが、選手たちは”よすが”を求めているのだろう。自信を失いつつあることによって生じた迷い。巣くった魔物を退治できるか。頂きを目指す”緑の戦士”たちは、岐路に立たされている。
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