2014年11月15日
ウクライナ情勢がサッカーに与えた悲痛A
「チーム解散を聞いたときは信じられなかった」
私の現在のチームメイトであるウクライナ人選手、ヴォロディミル・コバルもその1人だ。彼は、ウクライナU−16代表に選ばれて以降、U−21まで各年代のウクライナ代表でエースストライカーとして活躍し、将来を嘱望される選手。5月までFCセヴァストポリに在籍し、ウクライナリーグを戦っていた。しかし、クラブの解散により、彼は所属チームを失い、プレーする場所を探さなければならなくなった。
7月、ポーランドにある私の所属クラブ(OKSストミール・オルシティン)へ彼がやってきた。テスト生としてキャンプから練習に帯同し、その後に正式に加入することになった。私と彼の共通の言語であるロシア語(編注:柴村はウズベキスタンやラトビアでプレーした経験がある)で話をする機会は必然的に増え、FCセヴァストポリの話を彼から聞いた。「チームは解散になり、突然全員が無所属になった。チーム解散を聞いたときは本当に信じられなかったよ」。そう語ったときの彼は、非常に神妙な面持ちであった。
いきなりクラブが解散してチームがなくなったのだから無理もない。自分が所属していたクラブに愛着もあっただろう。ましてや彼はまだ22歳だ。昨年までは想像もしていなかったことが突然起こったのである。
爆破被害に遭ったスタジアム
現在もウクライナ東部ではウクライナ暫定政府と親ロシア派のにらみ合いが続いており、東部の街、ドネツクでは市街地が戦場と化してしまっている。
ドネツクに本拠地を置くウクライナリーグ所属のシャフタール・ドネツクは、スタジアム爆破の被害に遭っている。12年にはユーロ(欧州選手権)も開催されたシャフタール・ドネツクのホームスタジアム、ドンバス・アリーナに、8月23日に2発の砲弾が撃ち込まれた。クラブの公式サイトでは爆破で天井が落下し、スタジアムに無数の銃痕のような跡がある映像が映し出されていた。9月5日には両軍の停戦が合意されるも、9月15日にはドネツクの空港が砲撃を受けるなど戦争は続いており、9月19日にまたもこのドンバス・アリーナが爆破被害に遭った。
シャフタール・ドネツクは現在リーグ5連覇中のウクライナの名門クラブであり、現在チャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグを戦っている、同大会の常連クラブだ。12−13シーズンには前回王者のチェルシーにも2−1で勝利も飾っている。しかし、前述したように現在はドネツクで試合や練習をするのはあまりにも危険なため、選手たちはキエフで練習をしている。試合は、ドネツクから1000キロ離れたウクライナ西部のリヴィウにあるスタジアムを本拠地に使い、14−15シーズンのリーグ戦やCLを戦っている。
このような状況下でサポーターが1000キロ離れたリヴィウまで行くことは容易ではない。彼らはまたドネツクで試合が開催されることを願っている。しかし、両軍のにらみ合いが続く現在の状況ではドネツクでは試合は開催されない。
平和のためにできること
サッカーは平和であればこそ存在できるものである。
言葉にすると当然のことのように思うかもしれないが、毎日共に練習や試合をしている身近な存在であるチームメイトが実際にそのような境遇に遭い、その話を聞いたことで、あらためて真剣に考えさせられた。
コバルとホテルの部屋で二人で話をし、彼がFCセヴァストポリやクリミアの話をしてくれたときの表情は真剣そのものだった。それでも彼は「悲しい状況だが、一刻も早く母国ウクライナの状況が良くなり平和に暮らせることを願っている。われわれは前を向いて進んでいくしかない」と、最後には笑顔も見せてくれた。自分が立たされた境遇やつらい事実を受け止め、それを乗り越えながら彼は前に進んでいる。
サッカー選手としてできることは限られているかもしれない。それでも世界が平和であるためにできることをしていきたいと思う。こうした境遇に直面する選手たちもいる中で、自分がプレーできていることに幸せを感じつつ、当たり前のことかもしれないが、1日1日を大切に、精いっぱいプレーしていきたいと切に思った。
私の現在のチームメイトであるウクライナ人選手、ヴォロディミル・コバルもその1人だ。彼は、ウクライナU−16代表に選ばれて以降、U−21まで各年代のウクライナ代表でエースストライカーとして活躍し、将来を嘱望される選手。5月までFCセヴァストポリに在籍し、ウクライナリーグを戦っていた。しかし、クラブの解散により、彼は所属チームを失い、プレーする場所を探さなければならなくなった。
7月、ポーランドにある私の所属クラブ(OKSストミール・オルシティン)へ彼がやってきた。テスト生としてキャンプから練習に帯同し、その後に正式に加入することになった。私と彼の共通の言語であるロシア語(編注:柴村はウズベキスタンやラトビアでプレーした経験がある)で話をする機会は必然的に増え、FCセヴァストポリの話を彼から聞いた。「チームは解散になり、突然全員が無所属になった。チーム解散を聞いたときは本当に信じられなかったよ」。そう語ったときの彼は、非常に神妙な面持ちであった。
いきなりクラブが解散してチームがなくなったのだから無理もない。自分が所属していたクラブに愛着もあっただろう。ましてや彼はまだ22歳だ。昨年までは想像もしていなかったことが突然起こったのである。
爆破被害に遭ったスタジアム
現在もウクライナ東部ではウクライナ暫定政府と親ロシア派のにらみ合いが続いており、東部の街、ドネツクでは市街地が戦場と化してしまっている。
ドネツクに本拠地を置くウクライナリーグ所属のシャフタール・ドネツクは、スタジアム爆破の被害に遭っている。12年にはユーロ(欧州選手権)も開催されたシャフタール・ドネツクのホームスタジアム、ドンバス・アリーナに、8月23日に2発の砲弾が撃ち込まれた。クラブの公式サイトでは爆破で天井が落下し、スタジアムに無数の銃痕のような跡がある映像が映し出されていた。9月5日には両軍の停戦が合意されるも、9月15日にはドネツクの空港が砲撃を受けるなど戦争は続いており、9月19日にまたもこのドンバス・アリーナが爆破被害に遭った。
シャフタール・ドネツクは現在リーグ5連覇中のウクライナの名門クラブであり、現在チャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグを戦っている、同大会の常連クラブだ。12−13シーズンには前回王者のチェルシーにも2−1で勝利も飾っている。しかし、前述したように現在はドネツクで試合や練習をするのはあまりにも危険なため、選手たちはキエフで練習をしている。試合は、ドネツクから1000キロ離れたウクライナ西部のリヴィウにあるスタジアムを本拠地に使い、14−15シーズンのリーグ戦やCLを戦っている。
このような状況下でサポーターが1000キロ離れたリヴィウまで行くことは容易ではない。彼らはまたドネツクで試合が開催されることを願っている。しかし、両軍のにらみ合いが続く現在の状況ではドネツクでは試合は開催されない。
平和のためにできること
サッカーは平和であればこそ存在できるものである。
言葉にすると当然のことのように思うかもしれないが、毎日共に練習や試合をしている身近な存在であるチームメイトが実際にそのような境遇に遭い、その話を聞いたことで、あらためて真剣に考えさせられた。
コバルとホテルの部屋で二人で話をし、彼がFCセヴァストポリやクリミアの話をしてくれたときの表情は真剣そのものだった。それでも彼は「悲しい状況だが、一刻も早く母国ウクライナの状況が良くなり平和に暮らせることを願っている。われわれは前を向いて進んでいくしかない」と、最後には笑顔も見せてくれた。自分が立たされた境遇やつらい事実を受け止め、それを乗り越えながら彼は前に進んでいる。
サッカー選手としてできることは限られているかもしれない。それでも世界が平和であるためにできることをしていきたいと思う。こうした境遇に直面する選手たちもいる中で、自分がプレーできていることに幸せを感じつつ、当たり前のことかもしれないが、1日1日を大切に、精いっぱいプレーしていきたいと切に思った。
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