2021年02月10日
全固体電池とはA エネルギー密度は上がるのか?
こんにちは、でんちんです。
少し前同様、単三電池王の評価条件や編集など見直しをしており、それまでネタが無いので、全固体電池について説明しようかと思います。
今日は、硫化物の全固体電池を説明すると@の会で書きましたが、全固体電池Q&A(エネルギー密度は向上するのか?)を紹介します。そのあとに硫化物電池について、書こうと思っていたら、Q&Aが、思いのほか長くなりすぎたので、硫化物電池の話は次回にしたいと思います。Q&Aも複数個やろうと思ってましたが長くなりすぎた。今日のところは1件だけです。
Q:全固体電池になると、1回充電当たり電池が長持ちする(エネルギー密度が向上)って本当でしょうか?
A:基本はNOと思いますが、YESのケースも考えられます。
NOの場合:電池のエネルギーは、正極と負極の活物質材料の組み合わせで決まります。全固体電池でもその部分は同じですので、根本的には向上しません。固体電池では液の電解質部分が固体材料に代わるだけです。また、一般的に有機電解液の比重は1g/cm3程度ですが、ポリマー系の固体電池の比重が1〜1.5g/cm3程度(物にもよります)硫化物系は、1.6〜2g/cm3程度、酸化物系では3〜5g/cm3です。この数値が高くなるほど電池は重くなり、重量当たりのエネルギー密度は低下します。また、研究や開発フェーズの現段階では、活物質と電解質の界面や正負極活物質層中の抵抗低減、伝導率向上等のために多くの電解質を使用しますので重く、嵩高い物が多いと思われます。
YESの場合:液のLIBでは電解液を後入れしますので、電解液が浸透するように電極層の充填率は最密状態にはなってません。また液が入ると膨潤しますので、液含侵後の充填率はそれほど高くはありません。一方で固体電池では、加圧して電極を製造するため比較的高密度にパッキングすることができます。
また、液系では液が分解して使えなかった高電圧の活物質(5V級正極)や液では溶出してしまい使いにくい高容量な活物質(例えば硫黄やLiメタルなども)などの使用により高エネルギー密度化できるのではないかという考えもあります。これは液LIBでも試みがありますので、全固体の特有効果とは言えませんが、可能性の一つです。
次にパッケージングの利点です。恐らくスマホクラスの単セル電池ではあまり利点はないと思います。一方で、極小クラス(10mAh以下クラスなど)の電池では、液LIBですと有機電解液を含侵させシールすることは製造上1電池当たりコスト高になり難しいですが、セラコンタイプの固体電池ですと、液を入れませんので電池外周部にガラスや樹脂コーティングをするのみの簡易包装となりパッケージ面で優位性があります。パッケージのロス分は、小さくなればなるほど大きく影響しますので効果は大きいです。逆に大型、特に複数個の組電池で利点があります。例えばEVや家庭用蓄電池以上の大型電池など、電池を直並列するケースでは、1つ1つのパッケージを行うと、重ねた際にデッドスペースが多く出てしまいます。そしてパッケージが複数個である物を1つのパッケージにできればパッケージ分のロスが削減できます。これは規模が大きくなればなるほど優位になります。一方で、液のLIBでも同様の発想で省略していますので、必ずしも固体特有とは言い切れませんが、直列セルの1パッケージング化には液絡という現象が起こる為、液系では直列セルの1パッケージング化は難しくなります。また、並列においても電池は発熱しますのでそれを高集積状態で使用すると大変危険かつ劣化が大きくなります。その為、耐熱性が強い固体電解質を使った固体電池を使うことで高集積化の観点で優位になるという見方が多くされております。ただし、これも耐熱性が高い液のリチウムイオン電池が出ないとは言えません。
次に固体電池に使用する電解質は、伝導率が高く、輸率が1であるため活物質層を分厚くすることが出来るためエネルギー密度が高められるという考えがあります。液LIBですと活物質層は片面で50〜100μm程度でしょうか。それを2倍以上にできるという考えがあります。一方で、半固体電池(これも固体電池分野であれば固体電池特有ということになるかもしれませんが)という考えで、電極層を分厚くできるという考えやその他手法でも液系で分厚くする取り組みはありますので、必ずしも固体限定とは言えないかもしれませんが、特に硫化物系固体電池では、高い伝導率を活かしてこの方式で高エネルギー密度化が期待されております。
他にもあると思いますが、固体電池系では、シンプルに置き換えたらエネルギー密度が上がるのではなく、周辺技術の課題を解決できる可能性がある為、高エネルギー密度化ができるということが多くあることがわかります。上記全ケースで実現できずともいくつか採用できれば液のリチウムイオン電池を凌駕出来るものが出てくるかもしれません。
前置きが長くなりすぎて、硫化物系全固体電池の話をしようと思っていましたが、ここで一旦切りたいと思います。次こそ硫化物系全固体電池の説明をしたいと思います。
少し前同様、単三電池王の評価条件や編集など見直しをしており、それまでネタが無いので、全固体電池について説明しようかと思います。
今日は、硫化物の全固体電池を説明すると@の会で書きましたが、全固体電池Q&A(エネルギー密度は向上するのか?)を紹介します。そのあとに硫化物電池について、書こうと思っていたら、Q&Aが、思いのほか長くなりすぎたので、硫化物電池の話は次回にしたいと思います。Q&Aも複数個やろうと思ってましたが長くなりすぎた。今日のところは1件だけです。
Q:全固体電池になると、1回充電当たり電池が長持ちする(エネルギー密度が向上)って本当でしょうか?
A:基本はNOと思いますが、YESのケースも考えられます。
NOの場合:電池のエネルギーは、正極と負極の活物質材料の組み合わせで決まります。全固体電池でもその部分は同じですので、根本的には向上しません。固体電池では液の電解質部分が固体材料に代わるだけです。また、一般的に有機電解液の比重は1g/cm3程度ですが、ポリマー系の固体電池の比重が1〜1.5g/cm3程度(物にもよります)硫化物系は、1.6〜2g/cm3程度、酸化物系では3〜5g/cm3です。この数値が高くなるほど電池は重くなり、重量当たりのエネルギー密度は低下します。また、研究や開発フェーズの現段階では、活物質と電解質の界面や正負極活物質層中の抵抗低減、伝導率向上等のために多くの電解質を使用しますので重く、嵩高い物が多いと思われます。
YESの場合:液のLIBでは電解液を後入れしますので、電解液が浸透するように電極層の充填率は最密状態にはなってません。また液が入ると膨潤しますので、液含侵後の充填率はそれほど高くはありません。一方で固体電池では、加圧して電極を製造するため比較的高密度にパッキングすることができます。
また、液系では液が分解して使えなかった高電圧の活物質(5V級正極)や液では溶出してしまい使いにくい高容量な活物質(例えば硫黄やLiメタルなども)などの使用により高エネルギー密度化できるのではないかという考えもあります。これは液LIBでも試みがありますので、全固体の特有効果とは言えませんが、可能性の一つです。
次にパッケージングの利点です。恐らくスマホクラスの単セル電池ではあまり利点はないと思います。一方で、極小クラス(10mAh以下クラスなど)の電池では、液LIBですと有機電解液を含侵させシールすることは製造上1電池当たりコスト高になり難しいですが、セラコンタイプの固体電池ですと、液を入れませんので電池外周部にガラスや樹脂コーティングをするのみの簡易包装となりパッケージ面で優位性があります。パッケージのロス分は、小さくなればなるほど大きく影響しますので効果は大きいです。逆に大型、特に複数個の組電池で利点があります。例えばEVや家庭用蓄電池以上の大型電池など、電池を直並列するケースでは、1つ1つのパッケージを行うと、重ねた際にデッドスペースが多く出てしまいます。そしてパッケージが複数個である物を1つのパッケージにできればパッケージ分のロスが削減できます。これは規模が大きくなればなるほど優位になります。一方で、液のLIBでも同様の発想で省略していますので、必ずしも固体特有とは言い切れませんが、直列セルの1パッケージング化には液絡という現象が起こる為、液系では直列セルの1パッケージング化は難しくなります。また、並列においても電池は発熱しますのでそれを高集積状態で使用すると大変危険かつ劣化が大きくなります。その為、耐熱性が強い固体電解質を使った固体電池を使うことで高集積化の観点で優位になるという見方が多くされております。ただし、これも耐熱性が高い液のリチウムイオン電池が出ないとは言えません。
次に固体電池に使用する電解質は、伝導率が高く、輸率が1であるため活物質層を分厚くすることが出来るためエネルギー密度が高められるという考えがあります。液LIBですと活物質層は片面で50〜100μm程度でしょうか。それを2倍以上にできるという考えがあります。一方で、半固体電池(これも固体電池分野であれば固体電池特有ということになるかもしれませんが)という考えで、電極層を分厚くできるという考えやその他手法でも液系で分厚くする取り組みはありますので、必ずしも固体限定とは言えないかもしれませんが、特に硫化物系固体電池では、高い伝導率を活かしてこの方式で高エネルギー密度化が期待されております。
他にもあると思いますが、固体電池系では、シンプルに置き換えたらエネルギー密度が上がるのではなく、周辺技術の課題を解決できる可能性がある為、高エネルギー密度化ができるということが多くあることがわかります。上記全ケースで実現できずともいくつか採用できれば液のリチウムイオン電池を凌駕出来るものが出てくるかもしれません。
前置きが長くなりすぎて、硫化物系全固体電池の話をしようと思っていましたが、ここで一旦切りたいと思います。次こそ硫化物系全固体電池の説明をしたいと思います。
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