■「カルビ」とはどこの部位なのか
焼肉では希少部位ブームと共に、様々な部位が広く知られるようになりましたが、定番メニューと言えるのは依然としてカルビとロースだと思います。
では、そのカルビとロースはどこの部位かご存じでしょうか。
カルビとは韓国語で「あばら骨と、その周辺の肉」を意味しています。つまり、日本名では大きく肩バラや友バラと呼ばれ、細かな部位名で言うと、ブリスケ、三角バラ、フランク(ササミ)、カイノミ、タテバラなどが含まれます。
これらの部位は、基本的に脂がしっかり付いた部位が多くなります。特に三角バラは、細かなサシが散りばめられた芸術的な霜降りの部位で、特上カルビといった具合に、カルビの中でも最上位の部位として扱われています。
■「脂のついた部位」をカルビとして提供
ところが、日本の焼肉店ではカルビの定義である「あばら骨と、その周辺の肉」以外でも、脂が付いている部位をカルビとして提供している場合があります。
日本の焼肉店では、脂のついた部位をカルビとして提供することが伝統的に行われてきたのです。続いてロースとは「背中の肉」のことです。
肩ロース、リブロース、サーロインの3部位は背中にある1本の肉ですが、これを切り分けてそれぞれの部位として名前がつけられています。
■「脂の少ない部位」をロースとして出す店が多い
これらの部位をさらに細分化すると、ロース芯(リブロース、サーロイン)、巻き、エンピツ、カブリといった呼ばれ方をします。もちろん、これらの部位をロースとして提供している焼肉店はありますが、カルビと同じように、実はこれらの部位以外をロースとしている焼肉店は非常に多く見られます。
カルビが脂のついた部位として認知されてきた中で、ロースは脂が少ない部位として認知されてきました。背中の肉はご存じの通り、代表的な霜降りの部位です。
日本の焼肉店では、伝統的に脂の少ないカメノコやシンシンといったモモの部位やランプをロースとして扱うお店が多いのです。
■食品偽装ではなく、伝統的な名称に過ぎないここまでを整理すると、精肉店ではカルビと言えばバラと呼ばれるあばら骨周辺の肉を指し、ロースと言えば背中の肉を指しますが、焼肉店ではカルビは脂のついた部位を指し、ロースは脂のついていない部位を指すケースもあるということです。
これは食品偽装といった物々しいものではなく、古くから焼肉店で行われていた慣習でもあります。実際にカルビの場合、霜降りであるサーロインやリブロース、ザブトンなどをカルビとして提供している焼肉店を見かけます。
これらの部位はあばら周辺の部位よりも遥かに高級なので、食品偽装が目的であれば辻褄が合いません。
■消費者庁が改善要請
この逆として、ロースの場合は、サーロインやリブロースを期待して注文をしたところ、赤身の安価な部位が出てくるケースがあります。このため、消費者庁が全国焼肉協会に対して、モモやランプをロースとして表示するのは「景品表示法違反」に当たるとして、表示の改善要請をしています。
しかし、全ての焼肉店で表示改善が行われたかというと、そうではないように見受けられます。誤解を生まないための正しい表示と、伝統的に扱われてきた名称の整理が、消費者に向けて行われることは望ましいのです。
■まとめ
日本料理や鮨を食べに行く時、多くの人はその料理を味わうことに集中していると思います。しかし、多くの人が焼肉を食べる時は、ビールで流し込んだり、ご飯でかき込んだりして、咀嚼しなくても食べることができてしまうので、素材の旨味を感じづらいのではないかと考えています。
その結果、ほとんど噛まなくても旨味を感じられるうま味調味料をふんだんに使った焼肉店を美味しく感じやすいのです。うま味調味料を使わずにこだわった焼肉を提供するには、お客さんとのコミュニケーションを取り、お客さんを育てる必要があります。
時間をかけ、忍耐強くこれをやり遂げた焼肉店をリスペクトせずにはいられません。
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