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多くの人が多くを知った「美しいダービー」に感動!〜第91回日本ダービー回顧&観戦記

滅びゆく日本〜グローバリストの手口

競馬の主役は馬たちだから、まずは第91代東京優駿・ダノンデサイル号(父エピファネイア)に触れよう。
いやぁ、驚いたね。もちろんね、この馬相当強いよな、というのはみなさん同様、私にだってわかっていましたよ。

ただね、スタートもっさりスパートもっさりのダノンデサイルが、好発ズバリではまってスパートばっちりでイン差し快勝なんてイメージは、恥ずかしながら1ミリも、1ミクロンも私には描けなかったよ。これはもう完全に脱帽。成長力がどうのと言われることがあるエピファネイア産駒だが、とてつもない成長力を見せたじゃねえかよ。

1000の通過が62.2秒のスローに落ち着いたが、こういうペースもダノンデサイルにとっては良かったよなー。私ジャスティンミラノが折り合いのセンス抜群なんて言ったが、もちろんダノンデサイルだって折り合いに問題があるタイプでないことも知っていた。

メイショウが取り消して最も得をするのはジャスティンだなんて書いたけど、実際はダノンデサイルのほうだった。というのも、ジャスティンミラノは外枠から出して行ったことが祟って、4戦目にしてはじめて折り合いを欠く場面が見られたから。横山典騎手も「出して行ったから収めるのがたいへんだった」とコメントしていたが、やはり外枠の分、ジャスティンのほうが折り合いの点で難しい競馬になってしまった。

いずれにしても「止まるか(横山騎手)」と思われた直線でも爆発力を発揮させ、内を楽々さばいて直線突き抜ける勝ち方は、近年不振傾向にあるダービー馬の明るい未来を示唆する鮮やかさだったように思う。

2着ジャスティンミラノは、これまでにない難しい競馬ではあったものの、大きな着差は通ったコースの違いと考えることができる。ただ、内容的にはそう単純ではない。皐月賞のときは経験したことがないハイペースの追走に戸惑って勝負所でムチが入ったが、今回は、ペース云々とは無関係に手応えが悪かった。悪いとは言わぬまでも、少なくともジャスティンミラノ本来の競馬ではなかったように思う。

あの厳しい皐月賞を走らなかったダノンデサイルに対し、驚くようなレコードを叩き出したジャスティンミラノというコントラストが、結果(内容)に何等かの影響を及ぼしたか否かは、それぞれの判断にゆだねたい。

3着シンエンペラーは、まあこのくらいは走って不思議ない力の持ち主で、ジャスティンとの着差もそのまま力差が表れていたように思う。秋には渡仏のプランがあるということで、血統が血統だけに、まあまあ楽しみではあるかな。

驚いたのが4着サンライズアース。私はサンライズならジパングのほうだと思っていたし、まくるアースにとって1番枠は不運だろうなとも思っていた。しかし大舞台では120%の力を発揮させる名手池添を背に、今やれるすべて以上を出し切ったのではないか。この馬は思っていた以上に全然強かったと思う。ただし、展開にも左右されやすいから、絶対に人気する次は、よほどのことがない限り「切り」で行きたい。

5着レガレイラは、しまいは素晴らしい脚で飛んできたが、まあ力通りという感じではなかったかな。スタートが遅いだけに、こういう流れの内枠では、あれが精いっぱいだったと思うね。

人気のシックスペンス(8着)の川田騎手は、なぜもっと行かなかったんだろう?スローになるのはわかっていたはず。枠もジャスティンが外にいるわけだから、うーん、よくわからんね。キレでジャスティンを上回れるとでも考えたのだろうか?もう少し積極的に乗られていたら、もっと違う結果だったように思う。


さて、そんなダノンデサイルに騎乗していたのは、史上最年長ダービージョッキーとなった56歳の横山典弘騎手だった。いろいろな意味で今年のダービーの話題をまとめてかっさらったわけだが、それは何も年齢だけが理由ではない。

私から見ると、まあこんなことを言ったらノリちゃんに怒られるかもしれないが、今年のダービーは決して「横山騎手の好騎乗」ではなかったように感じる。それでも、これほどまでに勝利ジョッキーが語られることもないというくらい、今年は横山典弘の年だった。この人、今年はキレにキレている。馬乗りを楽しんでいるようにしか見えない。

感動のダービーだった。
しかし私の率直な印象を言えば、まるで未勝利戦のようなダービーだったな、とも感じた。別にレベルが低いということではない。ノリちゃんからしてみれば、これまで何万と繰り返してきた基本の基本を踏襲しただけのこと。それこそ来週もその次も、競馬が行われる限り未来永劫たくさん組まれる未勝利戦のように、「必要最小限の扶助」を施して、ダノンデサイルをダービー馬に導いたように感じた。

激しいアクションで追うのもいいし、大外をぶん回すド派手な追い込みもいい。でもそういうのって、あまり美しくないんだよなー・・・いやこれはまったく個人の感想なんだけどね。

慌てず騒がず、無駄なことは一切せず、コースロスもなく、必要最小限の扶助で静かに先頭ゴールを果たした人馬の姿は、もしかしたら私がこれまで見た30回以上のダービーの中で最も美しいものとして映ったかもしれない。私がこれまでにないほどの感動を覚えたのは、そんな「美しいダービー」だったからなのだと、今書いていて思ったよ。

いやね、昨日まで畑仕事で手首の腱鞘炎やっちまってて、書くに書けなかったのだけれど、書いてみて気づいた。

ゴール後、オルフェーヴルとはちがう紳士的なやり方で、「まだまだここからだ!」というファイトを見せていたダノンデサイルを無理に押さえず、向こう正面でようやく馬を止めた横山騎手は、記念撮影の馬上で「1」の数字を指に示した。

典弘騎手の師匠のような存在だった岡部元騎手が皐月賞のシンボリルドルフの馬上で示し、引退の有馬記念では両手による「7」までその数字は伸びた。これを踏襲したディープインパクトの武豊騎手も、「7」まで示すことに成功した。

皐月賞ではなく、ダービーこそが始まりだと言わんばかりの「1」・・・この人馬の未来は明るい。数字がどこまで伸びるかはわからないが、「三冠より難しい2冠」の達成は十分にあると思う。2着ジャスティンミラノも含め、もう今から秋がほんとうに楽しみである。

昨年は悲劇のダービーだったからこそ、今年は感動のダービーを観戦できてよかった。そして何より、改めて競馬の難しさ、素晴らしさ、美しさを知ることができた。多くのファン、そしてホースマンにとってもそれはきっと同じだろう。

全競走馬、そして全ホースマンに感謝である。

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