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重賞回顧

今週の東西メインは、正直そこまで目くじらたてて馬券検討するようなレースではないという思いから、予想のブログはスキップした。その割にどちらのレースも楽しみで仕方ないくら胸躍る1週間だった――いよいよクラシックはもう目の前なのだと感じる。

土曜日の午後になって古馬のオーシャンSが行われることにようやく気づき、著しく時計を要する中山の馬場を考慮して10歳馬のスノードラゴンから少しだけ馬券を買い、はずれた。真っ白な美しい芦毛の馬体は後方で無事ゴール。今週はこのレースだけ。馬券という意味ではとても静かな1週間だった。

時間がないわけではないのでブログはさぼらない。桜花賞と皐月賞それぞれに直結する土曜日のチューリップ賞と日曜日の弥生賞、おなじみの東西トライアルを回顧する。

正直どちらも「まあ勝つだろうな・・・」と(私を含む)大半の競馬ファンが考える馬が勝った。そういう意味でも非常に静かで、しかし今後のトライアル、そして本番が本当に楽しみになる結果・内容だったと思う。


チューリップ賞はオルフェーヴル産駒の2歳女王ラッキーライラックが満を持して登場。まだまだ成長する余地があるな、と感じた馬体はだいぶ大きくなっていた。休み明け、そして多くが成長するこの時期ということもあって、非常にボリュームのある馬体だったのが印象的。

例によってサヤカチャンが引っ張る流れは前半47.5秒のゆったりした流れ、ラッキーライラックは絶好位の3番手をキープ。スタート後少し力んだがすぐに折り合った。相変わらずセンスは抜群。

早めに前を射程に入れ、直線に入ると満を持して追い出され、楽々の先頭ゴール・・・おそらくこんなにイメージしたとおりの結果におさまることも珍しいというくらい、石橋騎手もファンも陣営も、誰もが描く内容で重要なレースを無難に勝利したラッキーライラック。これで無傷の4連勝、堂々と桜花賞に駒を進めることになる。

ラッキーライラックにとってなぜチューリップ賞が重要なレースだったのか。正直結果はどうでもよかった。先のことを考えたらどこかで1回くらい負けてくれたほうが競馬はしやすくなるくらいに思っていて、負けるならここかな・・・と感じてもいたのだが、あれでは負けようなどありえなかった。

抜け出すところ(2F)で10.7をマーク。2着マウレアと3着リリーノーブルは併せ馬の形になったがラッキーライラックの走りは坂があることに気づいていないかのようにド迫力だった。陣営のトーンほど仕上げられていない印象だったがやはり能力がまったく違った。

で、このレースの重要性。ラッキーライラックは阪神JFにくらべてどう進化していたのか・・・これが最大のポイント。当時よりも1秒ほど時計を詰めたがこれは時期的なもの。感じ方は人それぞれだが、ラッキーライラックの休み明けの走り自体は、決して好ましいものではなかったように思う。

それでもJFとまったく同じ相手に着差を広げた完勝だった。これは「気性面の成長」が最大の要因。ラッキーライラックは父があのオルフェーヴルということもあって、父にくらべれば「優等生」の評価をここまでは得ている。しかしラッキーライラック自身、オルフェーヴルの最も伝わってはいけない「ある部分」がわずかに垣間見えていたのが心配だった。

オルフェーヴルは新馬や菊花賞、阪神大賞典、そしてあろうことかあの凱旋門賞でとんでもない悪癖をさらけ出した。理由はただ1つ。オルフェーヴルは1頭になったときにコントロールが利かなくなってしまうから。

ラッキーライラックはこれまでいずれも小差勝ちの3連勝だったが今回は2馬身離した。これまでも抜け出して1頭になると後ろを待つところがあったが、これが解消された結果の「2馬身」と私は解釈する。正直、ひと安心である。

父のように暴走することはなくても、抜け出してソラをつかうのはステイゴールド系の悪いところ。これが解消されたかに思われるのは、オルフェーヴルには悪いが非常に大きな前進だと思う。

走り自体は2戦目アルテミスS、阪神JFにくらべると物足りない。迫力は大幅に増したが、本来ならもっと身のこなしにキレがある馬。大幅なパワーアップを果たした今、走りに本来のキレが戻ったら・・・ラッキーライラックの先はとても明るい。


弥生賞はほんとうに楽しみなレースだった。ディープインパクト産駒の2歳王者ダノンプレミアムが今世代ナンバー1の呼び声高かった同父ワグネリアンをまったく寄せ付けずの快勝。8kg増えてはいたが休み明けを感じさせない走りでこちらもデビューから4連勝を飾った。

今季の中山はそこまで時計に意味を持たない。勝ち時計2分1秒ちょうどは、ああそうですかという程度でいいだろう。中山は内がかなり悪く、2番手を進みながら直線で抜け出すと馬場の三分どころに持ち出す余裕の勝利を飾ったダノンプレミアム。懸命に追いすがるワグネリアンを1馬身半退ける、着差以上の内容だった。これで本番の1番人気は決定的。

ワグネリアンは勝ち馬を終始マークしても最後に突き放された。休み明けで−4kgの馬体自体、多少緩さはあったと思うが仕上がっていないこともなかった。ワグネリアンにしろもう1頭の同父の注目馬オブセッションにしろ、府中向きであることは事実。ワグネリアンに関してはおそらくコース適性で勝ち馬に見劣っていたのではないか。

注目の大器オブセッションは、小回り適性自体もそうだが、この馬これまでも本気で走っておらず、しかも今回はいきなりの相手強化があり、正直この結果は仕方がないところだろう。

クラブの馬だけに表向きは皐月賞を目指したが、藤沢調教師の本音はやっぱりダービーだと思う。「藤沢さん、ダービーしか見てないでしょ?」と訊いたら「そだねー」と答えるかどうかは知らないが、この馬はここで大敗したことが逆にプラスを生む気がしてならない。

だいたい今の中山は時計が速すぎる。皐月賞は仕上がりの早いダノンプレミアムやワグネリアンに任せておけばよい。個人的には、オブセッションがダービーで逆転するシーンがあったとしてもまったく驚かない。そのくらいの器だと思う。

ということで、桜花賞と皐月賞、そして目を凝らせばわずかに見えたダービーの舞台もイメージできるくらい、今週は素晴らしいトライアルだったと思う。
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