2018年09月22日
2.2. うそは嫌いだ!
FX取引のスプレッド(売買差額)とスワップ(利息)を銀行のそれらと比較する話を読んだことがありますか。この話は
という話です。
そんな馬鹿な話はありません。
特に、微益を積み重ねるスキャルピング手法や、本ブログのように経済指標発表前後の短時間だけの取引を行う手法でFXをやる人は、こんな話に騙されてはいけません。
スワップの話は説明が簡単ですが、スプレッドについては簡単にいきません。そもそも、FX会社が「手数料なし・スプレッドあり」と、それらをわざわざ使い分けている意味を不思議に思ったことがある人は多いでしょう。この意味を理解できるレベルの取引を行うためには、リスク・リワード(リスクに見合った利益狙い)的な考えを自分の取引に持ち込む必要があります。
いいですか。
仮に経済指標発表前後の取引で、1回の利確/損切の平均値が5〜10pipsだとしましょう。もしスプレッド0.5〜1pips(EUR・GBP・AUDの円クロスでよくあるスプレッド)で取引しているなら、利確/損切の平均値はスプレッドの10倍です。このとき、支払ったスプレッドに見合う勝率は55%、という考え方があります。
この勝率はある種の約束事があって算出される目安となります。
今回の話は、こうしたリスク・リワードに関して、です。
結論は「短期取引で微益を積み重ねる方法で取引に臨むなら、決してスプレッドは安くない」です。昔に比べればスプレッドが安くなった、なんてことは関係ありません。昔も今も、短期取引中心でFXをやるなら、どのくらいスプレッドが安くないのかを定量的に掴んで、効率的な取引を心がけた方が良い、という話です。
こうした考え方は、個別の取引を有利に行う細かな方法論よりも先に知っておいた方が良いはずです。リスクの捉え方は難しいものの(まして、その定量化はとても難しいものの)、話題を限定すれば初心者にだってわからない話ではありません。
要は、リスクに見合わない勝負をやるべきではない、という話にすぎないのですから。
先に、巻頭に挙げたスワップの話がおかしい点を片づけておきましょう。
この話のおかしさにまだ気づかない初心者に、こんな話をする人はどういうつもりなのでしょう。少なくとも、雨ニモ負ケズ風ニモ負ケヌ…で描かれるような人になりたいなら、そんな誤解をしている人には「ダメですよ」と穏やかに諭してあげるべきでしょう。
そもそも数秒〜数時間の取引を行う人にとって、スワップなんて全く関係ありません。スワップが関係ない取引をしているのに、クロス円の取引で買ポジションの方が売ポジションよりも好きになる理由もありません。どうせ初心者は、ひとつのポジションを1年も2年も保有し続けたりしません。むしろ、やたら無駄な売買が多くて、ポジションを保有している合計時間が結果的に長くなりがちなことの方が問題なぐらいです。だからと言って、普通は長期のポジション保有を初心者に勧めたりはしません。初心者なのに取引の練習回数をこなせなくなるからです。だから、初心者にFXのスワップはお得ですよという話は、初心者に物事を教えるセンスが致命的に欠けているのです。
自分が初心者だった頃、いろいろFX関連書籍を買って、ひどい目にあった考え方にはちょっと辛辣にあたります。
さて、本稿主題に向けて話を進めます。
例えば、空港の銀行窓口で両替した外貨の多くは、海外で相応額のモノやサービスに変わります。つまり、高いと言っても、両替手数料が僅かと思えるだけの価値に交換されています。
もう10年以上前の話ですが、フィリピンでポーク料理を頼んだら、給仕が私の足に料理を落としてズボンが肉に絡めた豚の血だらけになったことがありました。当り前ですが、血だらけのズボンでホテルに戻ると、フロントでちょっとした騒ぎになりました。そしたら、一緒に食事をして事情を知っている友人まで、わざとらしく私から離れて遠巻きの人の群れに加わったのです。
人間の本性はこういうときにわかります。
ともあれ、どっかのカード会社が宣伝していたように、プライスレスなことが起きた訳です。後日の引落では両替コストもちゃっかり取られていたけど、そんなことはプライスレスな体験に比べれば大したことないだろう、と言うのがカード会社の言い分です。ちなみに、フィリピンペソの両替手数料は、使ったお金の20%ぐらいだったと記憶しています。
それでも、カード会社の言い分の方がまともです。20%の両替コストこそ差っ引いたものの、プライスレスな教訓が得られた訳ですから。考えようによっては、このぐらいの手数料なんて、FXを短期取引で継続的にやることに比べれば安いものです。
※ いま、この話をかみさんにしたら、私の勘違いだったようです。少なくとも当時、カード会社はフィリピンペソを扱っていなかったそうです。きっと、カード払いはUSDだったのでしょう。でも、カード会社のUSDJPYスプレッドはざっくり10%ぐらいあったはずです。両替コストが10%でも、ここでの論旨に変わりないので、面倒くさいから書き直しません。手抜きをご容赦願います。
次に、いつものように先に単純化して問題のイメージを掴みましょう。
もしFXでスプレッドが1.0と表記されているならば、1通貨単位あたり0.01単位の両替費用が往復で掛かる、ということです。
1USD=100.00JPY(買レート)のとき、1枚(1万USD)買ったとします。
そして、1USD=100.01JPY(同じ買レート)のとき、それを売ったとしましょう。
スプレッドが0.01USDあるのだから、このときの利益は0です。
1pipsを稼ぐには、1USD=100.02JPY(同じ買レート)になるまで待たなければいけません。2pips動く方向を当てないといけない訳です。
同じように、1USD=100.00JPY(買レート)のとき、1枚買ったとします。
このとき、1USD=99.99JPY(売レート)でそのポジションを手放すことは、通常あり得ません。買レートが1USD=100.00JPYのとき、既に売レートは1USD=99.99JPYだったからです(買った瞬間に負けているpipsがスプレッドです)。
だから、もしスプレッド分に加えて1pipsで損切を行うなら、同じ買レートが1USD=99.99JPYのときです。この例では1pipsのつもりでいたのに2pipsを失うことになります。
これらの例で勝率が50%のとき、取引を2回行うごとに1pipsを失います。損益分岐の勝率は67%ということになります。勝率67%が最低限求められる取引がどれほど不利な勝負かは明らかです。
スキャルピングで微益を狙って良いのは、高い勝率を安定して維持できるベテランだけです。初心者は高い勝率を維持できません。そのベテランは、損益分岐の勝率が67%にも達するような勝負は避けるものです。
まずは当り前のことを長々と書きました。
大雑把に話が掴めたら、次はリスク・リワード的な考え方に焦点を移しましょう。
例えば、USDJPYはスプレッドが一般に狭く0.3pipsぐらいのところが多いようです。いま、直前1分足の過去平均陰線率が60%で、過去平均値幅が1・2pips程度しかない指標があったとします。このような場合、利確/損切の目安を1.5pipsにおくと、それはスプレッドの5倍ということになります。
もし、このような取引を100回行い、期待通りの勝率60%だったなら、手元には、
1.5pips✕(利確60回分ー損切40回分)=30pips、が残ります。対して、100回の売買で支払ったスプレッドは、0.3pips✕100回=30pips、です。
さて、取引100回ごとに勝ち負けに関係なくスプレッド30pips支払うなら、その100回の取引での利幅はせめて30pips以上を狙いたくはないでしょうか。元の話に戻れば、それがスプレッドの5倍以上の利確を狙うということです。そのためには、最低でも勝率60%が必要だということです。
この勝率を「スプレッドリスク解消勝率(以下「SL解消勝率)」と呼ぶことにします。
でも、間違わないでください。
SL解消勝率を下回っても、毎回の利確幅と損切幅を等しく保てば、勝率50%さえ超えれば利益を残せます。但し、この例のように取引100回あたり30pipsのスプレッドを払って、その間に30pipsしか稼げないなら、リスクに見合った利益が得られていないという考え方だって成り立ちます。
まして、100回の取引で残した利益が2pips(勝率51%)だったなら、その間に30pipsのスプレッドを払うことは、損こそしていないものの、手間ヒマをかけた分だけリスクに見合った取引だったとは言えません。
このように、収益の多寡にこだわって「リスク・リワード(リスクに見合った見返り)」に適った取引だったか、を問題視してみましょう。
考察が専門家ほど緻密で網羅性に欠けるこのブログでは「リスク・リワード的(リスク=潜在的負担に見合った目標利益と意訳)」と呼び、スプレッド負担と同じ利益となるSL解消勝率にこだわることに留めましょう。
当然、実際のリスク・リワードはスプレッドだけを補償しても足りません。実際のリスク・リワードのリスクとはスプレッド分だけじゃありません。だから、SL解消勝率は最低限目指すべき勝率ということになります。
何を問題視しているかが伝わったら、最後にこの話を一般化します。
スプレッドがいくらであれ、いま、スプレッドのX倍のpipsでの利確を狙う取引を行うことにします。そして、もし狙いが外れたら、損切も同じくスプレッドのX倍のpipsで行うことにします。
スプレッドがspipsならば、100回の取引で100spipsがスプレッド分として奪われます。
その一方、スプレッドのX倍を利確/損切の目安とすれば、100spipsというスプレッド分は、100s/(s・X)=100/X回、の利確で得られます。100回の取引で、利確が損切よりも100/X回だけ多くなる勝率は、100/X回の半分が50回を上回れば良いので、
となります。
これが、スプレッド負担に等しい利幅が得られる勝率ということになります。
判りやすく導いたつもりですが、数式導出過程というのは、読むのが苦になりがちです。そこで、これを図示しておきます。
この図は、利確の目安がスプレッドの何倍か(横軸)によって、SL解消勝率(縦軸)が何%になるかを示しています。
流行りのトルコリラの円クロスでは、スプレッドが5pipsぐらいのところが多いようです。これほどスプレッドが高いのに、もしたったの10pips(スプレッドの2倍)を利確/損切の目安にしたらどうなるでしょう。
上図でSL解消勝率を読み取ると、それは75%にも達します。初心者どころか、ふつうのアマチュアが安定して勝率75%を超えることなど、まず考えられません。私にはトルコリラ取引は無理かも知れません。
では次に、トルコリラの円クロスで狙いをスプレッドの10倍50pipsにしたらどうなるでしょう。
前述の最低勝率は55%まで下がります。でも、いくらよく動くトルコリラでも、短時間で50pipsの上下動が期待できる場面は限られています。50pips以上の上下動を狙うために、短期取引のつもりが短期ですまなくなるのです。そのときは、ポジション保有時間が長くなる分だけスプレッド以外のリスクも無視できなくなる、と考えられないでしょうか。
そして、アマチュアにはスプレッド以外のリスクを定量化できません。このことが致命傷に繋がりかねないのです。やっぱり、私にはトルコリラ取引は無理なようです。
本題に戻ります。
昔に比べれば安いと言っても、客観的に見ればスプレッドは決して安いコストではありません。
FXをやる人は、プライスレスな経験をしたいのでなく、プライス差が生じることにスプレッドを払っているのです。スプレッドが高いか安いかは、そのプライス差との比較によって決まります。
このことは、
という話の適用場面を誤解してはいけないことにも繋がります。
このブログで取り上げている経済指標発表前後の短期取引に限らず、狙うpipsが相対的に小さくなるスキャルピング手法では、最終的な損益と勝率とが直結しやすいのです。
だから、初心者やアマチュアにスキャルピングを勧めているにも関わらず、勝率にこだわらないとうそぶく解説は、長くFXをやっている人からすればちょっと変なのです。別にウソだと決めつけて批難している訳じゃありません。悪意がなくて底抜けに思慮が足りないのに、やたら勝負強い人というのもいるからです。
最初の方で挙げたように、自分が初心者だった頃、いろいろFX関連書籍を読んで、ひどい目にあった考え方にはちょっと辛辣にあたります。
ちなみに、このブログでの取引は、経済指標発表結果の良し悪しとチャート上の動きの程度や方向の関係を用いたやり方です。この方法は、@ ポジションのエントリーやイグジット(発注と決済)のタイミング判断や、トレンドの継続や転機を読む相場観形成といったことには、あまり悩まなくても済むというメリットがあります。選択肢を予め狭めて取引の難易度を下げているのです。
それに、多くの人にとっては意外なことに、ほとんどの経済指標発表前後の取引では、たった数pipsとか、せいぜい10数pipsを狙うことになります。A 損失もその程度に収まるので、初心者やアマチュア向けと言えるでしょう。また、B チャート上に動きが生じる時刻が予めわかっていることも、初心者やアマチュア向きです。
SL解消勝率が見込みやすい取引を、ポジション保有時間が短くて済む時間帯に限定しているのです。
でもメリットばかりじゃありません。
ここでの話でわかるように、@ 微益を狙う取引を繰り返すと、相対的にスプレッドが損益に与える影響が大きくなることがデメリットです。A せっかく目安を決めておいても、利確や損切(特に損切)が目安通りにできない人には、最も取引に向かない時間帯とも言えます。B 日頃の取引では判りやすいテクニカル指標が、この時間帯はアテにならないことが多いという点も、初心者やアマチュアにとってこの時間帯の取引を難しくしています。経済指標発表前後の取引では、経済指標そのものの分析が欠かせません。
もし、メリット>デメリット、と思われるなら、次稿の「イグアナを見分ける前に」をお楽しみください。
結論です。
初心者に対し、
という話があります。でも、こんな馬鹿な話はありません。
まだ義父が生きていた頃、犬の散歩中に道端で倒れていたところを、近所のおばさんに助けられました。菓子折持参で後日そのおばさんの家に御礼に伺ったときに聞いた話では、助けられたとき、義父は吐血をごまかすため「スイカにあたった」と言ったそうです。どれだけスイカを食べても、そんなことにはなりません。
スイカはあたらないわよねぇ、と近所のおばさんも話していました。でも、ウソはついても義父は紳士でした。
別に、ソウユウ人ニナリタイ訳じゃないにせよ、ウソが嫌いなのです。
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
- スワップ(利息)を狙って長期ポジションを保有するなら、FXは銀行の両替よりもかなりお得ですよ
- 外貨への両替コストを考えると、FXは非常に安いと言えますよ
という話です。
そんな馬鹿な話はありません。
特に、微益を積み重ねるスキャルピング手法や、本ブログのように経済指標発表前後の短時間だけの取引を行う手法でFXをやる人は、こんな話に騙されてはいけません。
スワップの話は説明が簡単ですが、スプレッドについては簡単にいきません。そもそも、FX会社が「手数料なし・スプレッドあり」と、それらをわざわざ使い分けている意味を不思議に思ったことがある人は多いでしょう。この意味を理解できるレベルの取引を行うためには、リスク・リワード(リスクに見合った利益狙い)的な考えを自分の取引に持ち込む必要があります。
いいですか。
仮に経済指標発表前後の取引で、1回の利確/損切の平均値が5〜10pipsだとしましょう。もしスプレッド0.5〜1pips(EUR・GBP・AUDの円クロスでよくあるスプレッド)で取引しているなら、利確/損切の平均値はスプレッドの10倍です。このとき、支払ったスプレッドに見合う勝率は55%、という考え方があります。
この勝率はある種の約束事があって算出される目安となります。
今回の話は、こうしたリスク・リワードに関して、です。
結論は「短期取引で微益を積み重ねる方法で取引に臨むなら、決してスプレッドは安くない」です。昔に比べればスプレッドが安くなった、なんてことは関係ありません。昔も今も、短期取引中心でFXをやるなら、どのくらいスプレッドが安くないのかを定量的に掴んで、効率的な取引を心がけた方が良い、という話です。
こうした考え方は、個別の取引を有利に行う細かな方法論よりも先に知っておいた方が良いはずです。リスクの捉え方は難しいものの(まして、その定量化はとても難しいものの)、話題を限定すれば初心者にだってわからない話ではありません。
要は、リスクに見合わない勝負をやるべきではない、という話にすぎないのですから。
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先に、巻頭に挙げたスワップの話がおかしい点を片づけておきましょう。
この話のおかしさにまだ気づかない初心者に、こんな話をする人はどういうつもりなのでしょう。少なくとも、雨ニモ負ケズ風ニモ負ケヌ…で描かれるような人になりたいなら、そんな誤解をしている人には「ダメですよ」と穏やかに諭してあげるべきでしょう。
そもそも数秒〜数時間の取引を行う人にとって、スワップなんて全く関係ありません。スワップが関係ない取引をしているのに、クロス円の取引で買ポジションの方が売ポジションよりも好きになる理由もありません。どうせ初心者は、ひとつのポジションを1年も2年も保有し続けたりしません。むしろ、やたら無駄な売買が多くて、ポジションを保有している合計時間が結果的に長くなりがちなことの方が問題なぐらいです。だからと言って、普通は長期のポジション保有を初心者に勧めたりはしません。初心者なのに取引の練習回数をこなせなくなるからです。だから、初心者にFXのスワップはお得ですよという話は、初心者に物事を教えるセンスが致命的に欠けているのです。
自分が初心者だった頃、いろいろFX関連書籍を買って、ひどい目にあった考え方にはちょっと辛辣にあたります。
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さて、本稿主題に向けて話を進めます。
例えば、空港の銀行窓口で両替した外貨の多くは、海外で相応額のモノやサービスに変わります。つまり、高いと言っても、両替手数料が僅かと思えるだけの価値に交換されています。
もう10年以上前の話ですが、フィリピンでポーク料理を頼んだら、給仕が私の足に料理を落としてズボンが肉に絡めた豚の血だらけになったことがありました。当り前ですが、血だらけのズボンでホテルに戻ると、フロントでちょっとした騒ぎになりました。そしたら、一緒に食事をして事情を知っている友人まで、わざとらしく私から離れて遠巻きの人の群れに加わったのです。
人間の本性はこういうときにわかります。
ともあれ、どっかのカード会社が宣伝していたように、プライスレスなことが起きた訳です。後日の引落では両替コストもちゃっかり取られていたけど、そんなことはプライスレスな体験に比べれば大したことないだろう、と言うのがカード会社の言い分です。ちなみに、フィリピンペソの両替手数料は、使ったお金の20%ぐらいだったと記憶しています。
それでも、カード会社の言い分の方がまともです。20%の両替コストこそ差っ引いたものの、プライスレスな教訓が得られた訳ですから。考えようによっては、このぐらいの手数料なんて、FXを短期取引で継続的にやることに比べれば安いものです。
※ いま、この話をかみさんにしたら、私の勘違いだったようです。少なくとも当時、カード会社はフィリピンペソを扱っていなかったそうです。きっと、カード払いはUSDだったのでしょう。でも、カード会社のUSDJPYスプレッドはざっくり10%ぐらいあったはずです。両替コストが10%でも、ここでの論旨に変わりないので、面倒くさいから書き直しません。手抜きをご容赦願います。
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次に、いつものように先に単純化して問題のイメージを掴みましょう。
もしFXでスプレッドが1.0と表記されているならば、1通貨単位あたり0.01単位の両替費用が往復で掛かる、ということです。
1USD=100.00JPY(買レート)のとき、1枚(1万USD)買ったとします。
そして、1USD=100.01JPY(同じ買レート)のとき、それを売ったとしましょう。
スプレッドが0.01USDあるのだから、このときの利益は0です。
1pipsを稼ぐには、1USD=100.02JPY(同じ買レート)になるまで待たなければいけません。2pips動く方向を当てないといけない訳です。
同じように、1USD=100.00JPY(買レート)のとき、1枚買ったとします。
このとき、1USD=99.99JPY(売レート)でそのポジションを手放すことは、通常あり得ません。買レートが1USD=100.00JPYのとき、既に売レートは1USD=99.99JPYだったからです(買った瞬間に負けているpipsがスプレッドです)。
だから、もしスプレッド分に加えて1pipsで損切を行うなら、同じ買レートが1USD=99.99JPYのときです。この例では1pipsのつもりでいたのに2pipsを失うことになります。
これらの例で勝率が50%のとき、取引を2回行うごとに1pipsを失います。損益分岐の勝率は67%ということになります。勝率67%が最低限求められる取引がどれほど不利な勝負かは明らかです。
スキャルピングで微益を狙って良いのは、高い勝率を安定して維持できるベテランだけです。初心者は高い勝率を維持できません。そのベテランは、損益分岐の勝率が67%にも達するような勝負は避けるものです。
まずは当り前のことを長々と書きました。
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大雑把に話が掴めたら、次はリスク・リワード的な考え方に焦点を移しましょう。
例えば、USDJPYはスプレッドが一般に狭く0.3pipsぐらいのところが多いようです。いま、直前1分足の過去平均陰線率が60%で、過去平均値幅が1・2pips程度しかない指標があったとします。このような場合、利確/損切の目安を1.5pipsにおくと、それはスプレッドの5倍ということになります。
もし、このような取引を100回行い、期待通りの勝率60%だったなら、手元には、
1.5pips✕(利確60回分ー損切40回分)=30pips、が残ります。対して、100回の売買で支払ったスプレッドは、0.3pips✕100回=30pips、です。
さて、取引100回ごとに勝ち負けに関係なくスプレッド30pips支払うなら、その100回の取引での利幅はせめて30pips以上を狙いたくはないでしょうか。元の話に戻れば、それがスプレッドの5倍以上の利確を狙うということです。そのためには、最低でも勝率60%が必要だということです。
この勝率を「スプレッドリスク解消勝率(以下「SL解消勝率)」と呼ぶことにします。
でも、間違わないでください。
SL解消勝率を下回っても、毎回の利確幅と損切幅を等しく保てば、勝率50%さえ超えれば利益を残せます。但し、この例のように取引100回あたり30pipsのスプレッドを払って、その間に30pipsしか稼げないなら、リスクに見合った利益が得られていないという考え方だって成り立ちます。
まして、100回の取引で残した利益が2pips(勝率51%)だったなら、その間に30pipsのスプレッドを払うことは、損こそしていないものの、手間ヒマをかけた分だけリスクに見合った取引だったとは言えません。
このように、収益の多寡にこだわって「リスク・リワード(リスクに見合った見返り)」に適った取引だったか、を問題視してみましょう。
考察が専門家ほど緻密で網羅性に欠けるこのブログでは「リスク・リワード的(リスク=潜在的負担に見合った目標利益と意訳)」と呼び、スプレッド負担と同じ利益となるSL解消勝率にこだわることに留めましょう。
当然、実際のリスク・リワードはスプレッドだけを補償しても足りません。実際のリスク・リワードのリスクとはスプレッド分だけじゃありません。だから、SL解消勝率は最低限目指すべき勝率ということになります。
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何を問題視しているかが伝わったら、最後にこの話を一般化します。
スプレッドがいくらであれ、いま、スプレッドのX倍のpipsでの利確を狙う取引を行うことにします。そして、もし狙いが外れたら、損切も同じくスプレッドのX倍のpipsで行うことにします。
スプレッドがspipsならば、100回の取引で100spipsがスプレッド分として奪われます。
その一方、スプレッドのX倍を利確/損切の目安とすれば、100spipsというスプレッド分は、100s/(s・X)=100/X回、の利確で得られます。100回の取引で、利確が損切よりも100/X回だけ多くなる勝率は、100/X回の半分が50回を上回れば良いので、
50+0.5✕(100/X)[%]
となります。
これが、スプレッド負担に等しい利幅が得られる勝率ということになります。
判りやすく導いたつもりですが、数式導出過程というのは、読むのが苦になりがちです。そこで、これを図示しておきます。
この図は、利確の目安がスプレッドの何倍か(横軸)によって、SL解消勝率(縦軸)が何%になるかを示しています。
流行りのトルコリラの円クロスでは、スプレッドが5pipsぐらいのところが多いようです。これほどスプレッドが高いのに、もしたったの10pips(スプレッドの2倍)を利確/損切の目安にしたらどうなるでしょう。
上図でSL解消勝率を読み取ると、それは75%にも達します。初心者どころか、ふつうのアマチュアが安定して勝率75%を超えることなど、まず考えられません。私にはトルコリラ取引は無理かも知れません。
では次に、トルコリラの円クロスで狙いをスプレッドの10倍50pipsにしたらどうなるでしょう。
前述の最低勝率は55%まで下がります。でも、いくらよく動くトルコリラでも、短時間で50pipsの上下動が期待できる場面は限られています。50pips以上の上下動を狙うために、短期取引のつもりが短期ですまなくなるのです。そのときは、ポジション保有時間が長くなる分だけスプレッド以外のリスクも無視できなくなる、と考えられないでしょうか。
そして、アマチュアにはスプレッド以外のリスクを定量化できません。このことが致命傷に繋がりかねないのです。やっぱり、私にはトルコリラ取引は無理なようです。
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本題に戻ります。
昔に比べれば安いと言っても、客観的に見ればスプレッドは決して安いコストではありません。
FXをやる人は、プライスレスな経験をしたいのでなく、プライス差が生じることにスプレッドを払っているのです。スプレッドが高いか安いかは、そのプライス差との比較によって決まります。
このことは、
- FXでの取引で大事なことは、勝率でなく最終的な損益
という話の適用場面を誤解してはいけないことにも繋がります。
このブログで取り上げている経済指標発表前後の短期取引に限らず、狙うpipsが相対的に小さくなるスキャルピング手法では、最終的な損益と勝率とが直結しやすいのです。
だから、初心者やアマチュアにスキャルピングを勧めているにも関わらず、勝率にこだわらないとうそぶく解説は、長くFXをやっている人からすればちょっと変なのです。別にウソだと決めつけて批難している訳じゃありません。悪意がなくて底抜けに思慮が足りないのに、やたら勝負強い人というのもいるからです。
最初の方で挙げたように、自分が初心者だった頃、いろいろFX関連書籍を読んで、ひどい目にあった考え方にはちょっと辛辣にあたります。
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ちなみに、このブログでの取引は、経済指標発表結果の良し悪しとチャート上の動きの程度や方向の関係を用いたやり方です。この方法は、@ ポジションのエントリーやイグジット(発注と決済)のタイミング判断や、トレンドの継続や転機を読む相場観形成といったことには、あまり悩まなくても済むというメリットがあります。選択肢を予め狭めて取引の難易度を下げているのです。
それに、多くの人にとっては意外なことに、ほとんどの経済指標発表前後の取引では、たった数pipsとか、せいぜい10数pipsを狙うことになります。A 損失もその程度に収まるので、初心者やアマチュア向けと言えるでしょう。また、B チャート上に動きが生じる時刻が予めわかっていることも、初心者やアマチュア向きです。
SL解消勝率が見込みやすい取引を、ポジション保有時間が短くて済む時間帯に限定しているのです。
でもメリットばかりじゃありません。
ここでの話でわかるように、@ 微益を狙う取引を繰り返すと、相対的にスプレッドが損益に与える影響が大きくなることがデメリットです。A せっかく目安を決めておいても、利確や損切(特に損切)が目安通りにできない人には、最も取引に向かない時間帯とも言えます。B 日頃の取引では判りやすいテクニカル指標が、この時間帯はアテにならないことが多いという点も、初心者やアマチュアにとってこの時間帯の取引を難しくしています。経済指標発表前後の取引では、経済指標そのものの分析が欠かせません。
もし、メリット>デメリット、と思われるなら、次稿の「イグアナを見分ける前に」をお楽しみください。
ーーー$€¥£A$ーーー
結論です。
初心者に対し、
- スワップ(利息)を狙って長期ポジションを保有するなら、FXは銀行の両替よりもかなりお得ですよ
- 外貨への両替コストを考えると、FXは非常に安いと言えますよ
という話があります。でも、こんな馬鹿な話はありません。
まだ義父が生きていた頃、犬の散歩中に道端で倒れていたところを、近所のおばさんに助けられました。菓子折持参で後日そのおばさんの家に御礼に伺ったときに聞いた話では、助けられたとき、義父は吐血をごまかすため「スイカにあたった」と言ったそうです。どれだけスイカを食べても、そんなことにはなりません。
スイカはあたらないわよねぇ、と近所のおばさんも話していました。でも、ウソはついても義父は紳士でした。
別に、ソウユウ人ニナリタイ訳じゃないにせよ、ウソが嫌いなのです。
以上
スキャル専用口座とHPで公言している会社です。取引回数が増えるほど、キャッシュバック額も多くなります。今なら「小林芳彦あられ」のプレゼントももらえます。あられが欲しいとは思わないけれど、私は同氏のファンです。
同氏はホンモノに強いので、大きな指標発表前には取引を控えることを表明しています。確かに、かつて同氏のツイッター通りに1か月ぐらい取引したら、その間の勝率は70%ぐらいになりました。きっと、エントリーとイグジットのタイミングを私がもっとうまく捉えられたなら、この勝率は更に高くなっていたのでしょう。
会員限定の彼の解説が読めることも、この会社を薦める理由です。
経済指標発表前後以外は、彼の相場感をアテにして、エントリーとイグジットのタイミングやミスジャッジしたときの撤退(損切)のセンスを磨くというのは、練習法としてアリだと思います。
彼の解説を読んで思うのは、テクニカル指標や、個々のファンダメンタルの変化を捉えるだけではダメだということです。それらの軽重判断を反応方向や程度に結び付けて、収益期待値が高く保てないと、有益な相場観とは言えないことがよくわかります。
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