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風鳥を探して
少年は、澄み切った夜空に広がる無数の星を見上げ、息をのんだ。
図鑑で見た風鳥座を見つけようと、目を凝らしている。
風鳥座は、南十字星のように有名ではないけれど、
その優雅な姿に心を奪われていたからだ。
図鑑の絵では、風鳥が翼を広げて空を舞う姿が美しく描かれていた。
しかし、実際の夜空は、図鑑とは少し違う。
たくさんの星がキラキラと輝いているけれど、どれが風鳥座の星なのか、
見つけるのは簡単ではない。
少年は、星座早見盤を片手に、方角を確認する。
南の空に目を向け、図鑑の絵を思い出しながら、星と星を結んでみた。
しかし、どうしても図鑑のような形にならない。
「どこにいるんだろう?」
少年は、首をかしげながら、夜空を見上げる。
雲一つない夜空は、宝石箱のように輝いている。
でも、風鳥座は見つからない。
その時、ふと、隣の家から優しい声が聞こえてきた。
「何か探しているの?」
振り返ると、隣に住んでいるおばあちゃんが立っていた。
「風鳥座を探しているんです。でも、なかなか見つかりません」
少年は、そう言うと、図鑑の絵を見せた。
おばあちゃんは、図鑑の絵をじっと見て、にっこり笑った。
「風鳥座ね。それはね、ちょっと難しいかもしれないわね。
でも、夜空を見上げるのは楽しいことよ。
いろんな形に見える星もあるでしょう?」
おばあちゃんの言葉を聞いて、少年はハッとした。
「そうですね。雲に見えたり、動物に見えたり…」
「そうよ。星座の形なんて、人それぞれで違うのよ。
図鑑の絵にぴったり当てはめなくてもいいのよ。
あなたが見た形の星が、あなただけの風鳥座だっていいじゃない」
おばあちゃんの言葉に、少年は心が軽くなった。
それから、少年は、図鑑の絵にとらわれずに、自由に夜空を見上げた。
すると、今までとは違う景色が広がっていた。
星と星を結んでみると、図鑑とは違う、自分だけの風鳥が誕生した。
それは、図鑑の絵よりももっと美しく、少年の心に深く刻み込まれた。
少年は、夜空を見上げながら、そう思った。
「風鳥座は、ここにいる」
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