2018年01月11日
台湾・国民党、死去30年「蒋経国」路線に活路 蒋介石のマイナスイメージ払拭へ
【台北=田中靖人】台湾の元総統、蒋経国の死去から13日で30年となるのを前に、野党、中国国民党が功績を強調している。戦後の人権弾圧などで反感が根強い初代総統で父親の蒋介石と異なり、蒋経国は戒厳令の解除やインフラ整備による高度経済成長などで世論受けが良い。国民党は13日前後に記念行事を連続して企画し、党勢回復の弾みにしたい考えだ。
「歴代総統の中で最も人民に敬愛され、自由と民主の苗を台湾に残した」
馬英九前総統は10日、国民党本部で行った記念講演で蒋経国をたたえ、英語通訳として仕えた思い出を振り返った。蒋経国は蒋介石が1975年に死去する前から行政院長(首相に相当)として実質的に体制を引き継ぎ、78年に総統に就任。88年に総統のまま病死した。
「蒋家独裁」の2代目ながら、蒋介石が台湾を「大陸反攻(中国大陸奪還)」の拠点としかみなさなかったのに対し、「十大建設」と呼ばれる現在の桃園国際空港や港湾・高速道路の整備で、年平均10%近い高度経済成長を実現させ、台湾を「アジア四小竜」の一角に押し上げた。また、「私も台湾人だ」と発言し民衆と触れあう姿をアピール。自身の死去後、総統に昇格する李登輝氏ら、戦前から台湾に住む「本省人」を登用し、晩年には言論・政治活動の自由化も認めた。
このため、党派を超えて一定の評価を受けており、馬政権が2016年に行った世論調査では、74%が台湾の経済・社会の発展に「貢献した」と回答。中高年層は「経国先生(さん)」と敬称を付けて呼ぶことが多い。
民主進歩党の蔡英文政権は、国民党独裁下の政治弾圧の真相究明を掲げ、昨年12月には関連法を成立させた。総統選の前哨戦となる統一地方選を今年11月に控え、国民党としては「蒋経国色」を打ち出すことで、蒋介石の負の印象を払拭する狙いもありそうだ。
ただ、蒋経国には蒋介石時代から特務機関を掌握して強権支配を行った「裏の顔」があるのも事実。蔡政権の高官は「蒋経国の評価はその一生を見る必要がある」と指摘する。政治大学選挙研究センターの兪振華准教授は「蒋経国を懐かしむのは50代以上で、心に響くのはもとからの国民党支持者だけ。若者や中間層を引きつけることはできない」と述べ、党勢回復の効果は限定的だとの見方を示している。
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