2017年12月09日
韓経:【コラム】「ブラック共和国」になるのではと不安=韓国
どんどん複雑になっていく環境の中で企業はどうすれば生き残ることができるだろうか。こういったことを研究する「複雑系適応システム」の首唱者は様々な代案を出す。その中には「思いがけないことを予想するものの、不確実性を減らせ」という提案も含まれている。兆候を収集し、変化のパターンを見出し、可能性のあるあらゆる結果を想像し、先制的措置を取ることを薦める(『ハーバード・ビジネス・レビュー』2016年1〜2月合本、「企業生存の生物学」より)。
国家も同じことだ。エコノミスト誌は『2018世界経済大展望』で欧州は景気が良くなっているが、依然として「青天の霹靂」のように突然発生しうる事件の震源地のままであると診断した。負債にやつれた政府、扇動家型の政治家などが変数として挙げられた。信じ難い、しかし発生すれば途方もない結果を招く「ブラック・スワン(黒い白鳥)」がまた襲いかかるのではないか不安だという話だ。これが欧州だけの話だろうか。
韓国で一端の未来専門家が韓国のブラック・スワンの候補に挙げたことが、時が経つほど重量感を感じさせ始めている。「北朝鮮発の韓半島(朝鮮半島)の危機」は以前とは比べものにならないほどだ。「大規模ブラックアウト(停電事態)」も文在寅(ムン・ジェイン)政府の脱原子力発電所宣言後は違う受け止められ方をしている雰囲気だ。韓国経済を先導する「看板大企業の没落」も同様だ。
黒い動物はブラック・スワンに留まらない。「部屋の中の象(誰も言及しない不都合な真実)」のように皆がその存在を(さらにいつかブラック・スワンになるだろうということまで)知っているのに、秘密にしているイシューも急増している。投資家のアダム・スウェーダンが話し、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマンが引用して有名になった「ブラック・エレファント」がそれだ。
韓国政府が強硬路線の労組を意識して労働改革という言葉さえ口にできず「ゾンビ中小企業」がうようよしていても票のために補助金を打ち切ることができずにいるのを見れば分かる。金融・医療などサービス業の低生産性が問題であることを知りつつも自らを金産分離(銀行と産業の分離)、医療公共性などの古い政策の枠組みに押し込めていることもそうだ。大学危機、人口問題も韓国ではいつブラック・スワンに変わるかもしれないブラック・エレファントだ。
未来学者ジョン・スウィーニーがポスト・ノーマル時代の「マスコット」にブラック・スワンの代わりに持ち出したクラゲ、「ブラック・ジェリーフィッシュ」を思い返せば状況は更に深刻だ。クラゲが水温の上昇によって急増し、巨大な発電所や航空母艦の冷却システムを破壊し、あらゆる活動を中止させた事件が少なくない。表から見れば何が問題なのかと思う単一のイシューが周囲の環境が変われば連鎖的相乗作用を起こし、ブラック・スワンに発展するケースだ。
非正規職の正規職転換、勤労時間の短縮、最低賃金の史上最大幅引き上げなどが良い事例だ。企業の生産性がこれ以上支えることのできない状況がくれば薫風はすぐに寒波に変わるかもしれない。法人税の引き上げもそうだ。そのために企業が今すぐに海外に出て行くわけではないというが、悪化する企業環境と重なれば「企業脱出」の引き金になる可能性は排除し難い。始動がかかれば後進は難しい公務員の増員、福祉性手当て新設などはどうなのか。成長が止まり税収に赤信号が灯る瞬間、「大きな政府」は国家の病となってしまう。
それでも政府・与党内部でも野党でも制御する勢力があり論争が活発な社会ならば、黒い動物の蠢動を事前にある程度でも防ぐことができるだろう。残念ながら政府・与党が支持率の数字に酔っているからか、今の雰囲気はそうでない。「論争を拒否してはいけない」と言って積弊勢力として非難された安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事は「政府政策について言いたいことがあれば家に帰って戸締りしてから言う」と言う。野党は無力なことこの上なく、学者は沈黙している。政府研究所は政策の正当化に血眼になり民間研究所は口をつぐんで久しい。
政権ごとに気前よくお金をばらまくことは前倒して行い、責任を負うことは後回しにして、事件が起きれば運が悪かったというようにアプローチすれば国家はどうなるだろうか。ある日、黒い動物が群れになってやって来るのではないかと恐れている。
アン・ヒョンシル/論説・専門委員、経営科学博士
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