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2017年10月03日

乗り鉄にチャンス! 賞金5万「鉄旅オブザイヤー」一般部門

ヤフーニュースより引用

乗り鉄にチャンス! 賞金5万「鉄旅オブザイヤー」一般部門 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170901-00000015-zdn_mkt-bus_all


 「鉄旅オブザイヤー」は2011年から開催されている表彰イベントだ。旅行会社が企画したツアーのうち、鉄道をテーマとし、一定以上の集客実績があった商品について表彰する。鉄道旅行や旅行会社の企画ツアーの魅力を広く知らしめるために開催される。業界団体が内輪で褒め合う形にならないように、最終審査は外部審査員が参加する。【2016年度の一般応募作品】 15年までは「旅行会社の企画を旅行業界関係者が表彰する」ようにも見えて、業界イベント然としていた。そこで「もっと多くの人々に知ってもらいたい、特に鉄道旅行を好きな人に関心を持ってもらいたい」と、16年から一般部門「ベストアマチュア賞」が創設された。応募作は少なく、認知度は足りないようだ。

 しかし、見渡してみれば、これは鉄道趣味のうち、乗り鉄分野で唯一の表彰だ。鉄道写真や鉄道模型のコンテストは多いけれど、乗り鉄分野はたぶんこれだけ。乗り鉄の私としてはもっともっと盛り上げていきたい。だから私も応募したいけれど、審査員だから参加資格がない。悔しいから、審査員の立場でこの賞を解説する。応募の参考にしていただければ幸いだ。

●乗り鉄よ立ち上がれ!

 優秀作品1点に賞金5万円とJR協賛による記念品が提供される。また、18年2月7日に鉄道博物館(さいたま市)で授賞式が開催される。これに出席する必要があるけれども、会場までの交通費、宿泊費は自己負担だ。遠方からの受賞者については、実質的に賞金が交通費となる。これはどうかな、と思う半面、自分だったら「ついでに東京近郊の乗り鉄を楽しむつもりで参加すれば悪くないかな」とも思う。

 ちなみに、16年の「JR協賛による記念品」は、JR四国から「四国まんなか千年ものがたり」の車中食事付きペアチケットが贈られた。賞金と同じかそれ以上に魅力的だ。今年はどの会社が何を用意していただけるか、楽しみである。

●個人ではできない、旅行会社ならではの旅

 「鉄旅オブザイヤー」一般部門に応募するなら、まず「鉄旅オブザイヤー」の趣旨を理解しておこう。

 鉄道を使った旅行は個人で手軽に手配できる。鉄道そのものが目的だと、観光施設めぐりや食事などに凝らないから、旅行会社の特色は出しにくい。メリットがあるとすれば団体割引の適用によるコスト効果くらいだ。

 しかし、費用については、遠距離ツアーで格安航空、近距離ではバスツアーが台頭している。鉄道運賃は大幅な値引き制度が少ないため、料金の提示だけでは勝負しにくい。それだけに、旅行会社の企画力、構成、個人旅行では不可能な観光案件の組み合わせが試される。

 旅行会社の企画担当者にも鉄道好きが多く、近年の鉄道趣味の盛り上がりに呼応する形で、旅行会社ならではの鉄道旅行企画が作られている。しかし、なかなか認知されない。そこで旅行業界団体とJR旅客系各社、日本民営鉄道協会などが後押しする形で「鉄旅オブザイヤー」が創設された。

 歴代の受賞作品を見ると、旅行会社の奮闘ぶりがよく分かる。11年のグランプリは「怪奇!!トロッコ列車 京都保津川2時間サスペンス」と題して、嵯峨野トロッコ列車を夜間時間帯に走らせて、怪談話とパフォーマーによる演出が行われたツアーだ。個人では組み立てられない、旅行会社の集客力、交渉力ならではの企画だった。12年のグランプリは美祢線のやきとり列車。車内でやきとりを販売し、主な停車駅でスイーツなども提供する。被災から運行再開した列車を軸に、沿線のおもてなしを盛り込んだ。

 13年はテツ分が高め。引退間近な国鉄急行形電車を貸し切り、往年の北陸本線の急行列車を再現した。14年はJR九州の「ななつ星in九州」からクルーズ船「飛鳥II」へ乗り継ぐ旅。両方の運行日程を把握し、旅行会社の交渉力で実現した。好景気の始まりを象徴するような豪華企画だ。15年は親子を対象とした鉄道の職業体験がテーマ。16年は旅行会社が設計、集客する観光列車だった。

 他の受賞作品を見ても、どれも個人では実行できない企画ばかり。旅行会社の実力を感じさせる。一般公募作品にも、この趣旨は求められる。「それ、1人でできるよね。行っておいで」と思われる旅は評価しにくい。個人ではできない旅。旅行会社ならやってくれそうな旅を考えよう。それは旅行業界関係者にとって、一般旅行者が企画ツアーに何を期待しているか、という参考にもなる。

●審査は5項目 プロと同じ土俵で勝負できる

 応募条件として訪問先が限定されている。JRグループのディスティネーションキャンペーンの開催地だ。18年度の開催地は春(4〜6月)が栃木県、夏(7〜9月)が鳥取県・島根県、秋(10〜12月)が愛知県、冬(1〜3月)が京都市となっている。四季によって開催地が異なるけれど、時期は問わない。春に京都をテーマとした旅でもいいし、冬に山陰の旅を企画してもいい。

 最近の情報では、JR西日本が7月に向けて山陰方面に新たな観光列車「あめつち」を運行すると発表した。JR東海も10月に向けて新たな観光列車を走らせる方針と報じられている。ディスティネーションキャンペーンに向けて、JRも自治体も新たな施策を始める。各地の観光協会のWebサイトも参考にしよう。

 具体的な審査方法は書けないけれど、審査項目は16年度の授賞式で公開された。以下の5項目だ。

「企画性」 旅行のプロも顔負けの企画力が感じられるか?

 いきなりハードルの高い項目だ。ここは常識にとらわれない大胆な発想力と考えよう。個人ではできないけれど、旅行会社ならできることを考えたい。ツアーなら貸し切りバス、貸し切り車両が使える。つまり、路線バスに縛られないルートも検討できる。車両基地見学、通常ダイヤにはない列車の設定も考えると楽しい。

「オリジナリティー」 他に類を見ない独創的な作品となっているか?

 過去の受賞・佳作作品の模倣にならないように。新しいイベント、列車を組み込むという方法もある。企画性と重なる部分でもある。現地在住者でないと気付かないような沿線のイベント、景色、特産品などを盛り込むといいかもしれない。

「鉄道力」 乗車する列車・路線の魅力度

 自分の趣味全開で突き進もう。消えゆく国鉄車両に乗りまくるとか、珍しい踏切を訪ね歩くとか。廃線跡、廃駅、保存施設など、鉄道趣味の対象なら現駅路線や列車にとらわれなくてもいい。

「非鉄誘因力」 非鉄道ファンにとって旅自体の魅力度

 実はこれが難しい。「鉄道力」に反する要素でもあり、折り合いを付けられる部分でもある。車窓から紅葉を眺めるとか、立ち寄り地で名物料理を食べる、珍しい酒、そば打ち体験などグルメ系と絡めると分かりやすい。鉄道にはあまり興味のない友人を誘う場合、その友人が何に興味を持つかを想定してみよう。

「参加意欲」 この旅行商品が実現したら参加したくなるか?

 自分で作った企画だから、参加したいに決まっている。ここで考慮するのは価格とのバランス。また、体力を考慮して移動、拘束時間に無理がないか、などといった視点も必要となる。プランだけなら簡単だ。実行した場合を想像しよう。

●アイデアを企画に落とし込む

 私は先週、16年度の応募対象地域だった山口県を旅してきた。ここで応募作のアイデアを書き出してみた。

「錦川鉄道とことこトレイン、深夜のトンネルウォーク・しし鍋三昧の旅」

 錦川鉄道の終点錦町から雙津峡温泉まで、鉄道路線予定地を走る、とことこトレインがある。途中に桜並木のトンネルと蛍光石のアートが光る「きらら夢トンネル」がある。とことこトレインは一時停止して見学させてくれるけれど、この全区間を運行時間外に歩いてゆっくり鑑賞させてもらう。宿泊は雙津峡温泉で、イノシシ鍋を中心に。

「SLやまぐち号 乗る旅 撮る旅」

 山口線のSLやまぐち号に片道乗車。著名な鉄道写真家が同行し、帰路と翌日はマイクロバスを仕立てて沿線の撮影スポットでSLやまぐち号を撮る。非鉄対策(笑)として、秋吉台、秋芳洞を組み合わせてもいい。

「山口県の終着駅めぐり」

 他の路線と接続しない終着駅を訪ねる。山口県には小野田線の長門本山駅、山陰本線支線の仙崎駅がある。長門本山駅は瀬戸内海側。付近に焼きたてパンのうまい店がある。仙崎駅は日本海側。海上アルプスと呼ばれる奇岩の風景は観光船で眺めたい。どちらも運行本数が少ないため、臨時列車を手配して訪れたい。何か特別な車両で美祢線を経由するか、長門本山から下関へ抜けて、観光列車「○○のはなし」に乗るか……。

 こんな風にざっくりとアイデアを出したら、公式サイトから応募用紙をダウンロードし、応募要項に従って旅行会社のパンフレットのような行程表やセールストークを盛り込んで、応募用紙と参考資料をメールで送信する。

 応募の受付は8月21日から始まっており、締め切りは10月31日まで。健闘を祈る。

(杉山淳一)





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