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2017年09月24日

北が「核保有国」と認知されない理由 --- 長谷川 良

ヤフーニュースより引用

北が「核保有国」と認知されない理由 --- 長谷川 良 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170912-00010007-agora-int


日本のメディアによると、小野寺五典防衛相は10日、「核保有国と認めるか否かは別として、核実験を繰り返し、相当の能力を持っている国だ」と述べ、北朝鮮の核保有能力を認める一方、「日本は北を核保有国と容認できない」との従来の立場を強調した。

同防衛相の発言をもう少し簡単に説明すれば、「北は核能力を保有するが、わが国は核保有国とは認知しない。なぜならば、わが国を含む国際社会は政治的、経済的圧力を行使して北の核開発を阻止する考えだからだ」ということになる。さらに、換言すれば、「北は既に核保有国だが、その事実を国際社会は容認しない。北の野望である核開発計画を必ず断念させ、核兵器を破棄させる」という一種の政治宣言となる。

ところで、北朝鮮を最初に「核保有国」と認知した人物は誰かご存じだろうか。核エネルギーの平和利用を促進するために創設された国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長(当時)だ。エルバラダイ氏は2006年8月31日、ウィーンのホーフブルク宮殿で開催された包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名開始10周年記念シンポジウムの基調演説の中で、「世界は現在、9カ国の核保有国が存在する」と述べた。9カ国とは、米英仏露中の国連安保常任理国5カ国にインド、パキスタン、イスラエル、そして北朝鮮というのだ。すなわち、エルバラダイ氏は11年前に北朝鮮を既に核保有国と見なしていたのだ。同氏に先見の明があったからというより、不都合な事実をバカ正直に言ってしまっただけだ。

国際社会が、北に対し「核保有国」にもかかわらず、「核保有国」と認知しない姿勢を崩していない中、核エネルギーの平和利用を促進するIAEAのトップが11年前に「北は核保有国」と既に認知していたとは非常に皮肉だ。エルバラダイ氏の発言を聞いていた外交官たちは「事務局長の9カ国発言」の真意に首を傾げたものだ。
ちなみに、北朝鮮と好対照はイスラエルだ。イスラエルは約200基の核兵器を保有しているとみられているが、同国は「核保有国」と認知されることを望んでいないのだ。

北が今月3日、6回目の核実験を実施した。北側の発表では水爆実験であり、爆発規模は160キロトンと推定されている。韓国原子力安全委員会は8日、北の核実験から起因したと見られる微量の放射性物質キセノン133を検出したという。「北は核兵器を保有している」という事実を追認したわけだ。

にもかかわらず、日本を含む国際社会は北の「核保有国」を認知する考えはない。善し悪しは別にして、事実は事実として認知すべきだと考える人にとって、首を傾げざるを得ないかもしれない。

インドとパキスタン両国は核兵器を保有済みだ。国際社会は一応、両国を「核保有国」と受け取っている。両国は核拡散防止条約(NPT)には加盟していないが、認知を受けている。北も2003年1月にNPT体制から脱退した。両国と条件は同じだ。実験回数では北は既に6回であり、インド3回、パキスタン2回を上回っている。

それでは、インドとパキスタン両国と北朝鮮の違いは何か。考えられる理由は2つだ。(1)国際社会は北を核保有国と認知すれば、韓国、日本の核武装論が高まる懸念があるからだ。実際、韓国では北の核実験後、核武装論が高まってきている。(2)北が独裁国家であり、民主国家ではないという事実だ。インド、パキスタンでは民主的選挙が実施され、政権は変わる。独裁国家の北では民主的選挙はなく、3代の世襲独裁国家だ。独裁者の一言で原爆のボタンを押すことができる。

以上から、金王朝が続く限り、北は国際社会から「核保有国」の認知は得られないという結論になる。金正恩氏(朝鮮労働党委員長)自身が「核保有国」認知の最大の障害となっているわけだ。独裁国家維持のため核実験を繰り返し、「核保有国」の実績作りに腐心したとしても、国際社会から得られる答えはノーしかないだろう。

一方、日米韓は北朝鮮の「核保有国」入りを拒否するだけでなく、その核保有を断念、放棄させなければならない課題が残っている。この課題を克服しない限り、北の核問題は常に危険をはらんだ状況が続く。その期間が長くなればなるほど、北の「核保有」は既成事実となり、北は「核保有国」の認知を受けない「核大国」の道を歩み出すことになるだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年9月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』(http://blog.livedoor.jp/wien2006/)をご覧ください。



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