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2017年09月01日

[家入一真インタビュー]CAMPFIREの新サービス「polca(ポルカ)」が作る、友だち同士の経済圏

ヤフーニュースより引用

[家入一真インタビュー]CAMPFIREの新サービス「polca(ポルカ)」が作る、友だち同士の経済圏 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170901-00000009-impress-sci


 クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」をはじめとした、さまざまな資金調達の方法を提案する株式会社CAMPFIREが、去る8月10日にローンチしたアプリ「polca(ポルカ)」が話題だ。“フレンドファンディング”と銘打ったこのアプリは、その名の通り、身近な友人同士での資金調達をコンセプトとして開発された。思い付いた企画をすぐに実行できるよう審査も不要で、1つの企画を立ち上げるのにかかる時間は約30秒。また、設定できる目標の金額も300円〜10万円と、支援のハードルも低い。SNS上では多くのユーザーによりプロジェクトが拡散され、「やってみた」系のブログも続々と投稿されているように、支援をきっかけとした“祭り”のような現象も起きているほどだ。なぜ今このようなサービスを世に打ち出し、そこにはどのような意図があったのか。代表の家入一真氏に話を伺った。【この記事に関する別の画像を見る】■お金をコミュニケーションのツールとして活用しても良いんじゃないか

――「身近な友だち同士で始める、フレンドファンディングアプリ」をコンセプトとしてローンチされたpolcaですが、認証フローも早い上、小額の目標金額で始められるということから利用者が爆発的に増えています。

 ありがたいですね。友人の結婚式の動画を作るものや、家族を温泉旅行へ連れて行く企画、ポストカードを作るための小額の資金を調達するといったものなど、さまざまな企画が立ち上がっています。

――そもそもpolcaはどのようなきっかけでサービスを開始したのでしょうか?

 多くの人に気持ちや思いを訴え、共感や応援とともにお金を集める手法であるクラウドファンディングがようやく広がってきましたが、まだまだハードルの高さを感じる方も多い。身近な友人や会社、サークルの仲間など、閉じられたコミュニティの中で緩やかに、気軽にお金を集めたり、支援できたり誰かを応援したりする仕組みはできないか?というアイデアから、polcaは生まれました。

――現状、“お金”と“コミュニケーション”は対極にあるように思います。その距離を縮めようとする試みを、近年は行われていますよね。

 クラウドファンディングのCAMPFIREを立ち上げたのもそうですし、個人的にもSNSを活用し、お金をもっとなめらかにするための取り組みをいろいろやってきました。Twitterで電話番号を公開したことでさまざまな人から電話がかかってくるようになりましたし、それがきっかけになって、いまだにリアルにつながっている人もいます。

 なので、お金をコミュニケーションのツールとして活用しても良いんじゃないかという、ある種の社会実験のような取り組み。そういった思想自体はこの数年、ずっと僕の中にあったんですね。

――その思想はいつごろから?

 僕自身、かなり貧しい家庭だったというのが前提としてあるのかもしれない……中学から引きこもりになって、そのまま引きこもっていたんですけど、あわせて家も貧しい。絵を学びたいと思ったんですけど、学費を出せるような状況ではない。どうしようと思ったときに、新聞奨学生という制度を見つけたんですね。それで、住み込みで朝夕バイトをしてから合間に学校に行くということをやっていました。

 最終的に、父親が事故にあって働けなくなり、自己破産をしてしまったんですね。なので僕が就職して働くことになったんですけど、自分自身はその環境を不幸だと、あまり考えたことはなかったんです。だけど、お金によって選択肢が減ってしまうような子どもたちや学生もいますし、大人だって声を上げようにも上げられない人もたくさんいます。それであれば、インターネットがここまで浸透したからこそできるやり方があるだろうというところが、クラウドファンディングを始めた入り口になっています。

■まずは決済がシンプルにできるところを目指している

――polcaの場合はスマートフォンのアプリで、ゲーム感覚での金銭のやり取りができるわけですよね。肌感覚として若い世代がメインユーザーだと思うのですが、実際はどの年代の利用者が多いのでしょうか。

 18〜24歳が26%、25〜34歳が31%で、確かにユーザーとしては若い世代が多いです。

――アプリで利用できることが大きいですよね。最近はPCを所有している人も少ないですし。

 クラウドファンディング自体、実はアメリカの「Kickstarter」などの事業者も含めてそうなのですが、なかなかアプリにならなかったんですよ。長い間、ウェブベースだったんですよね。プロジェクトを作ることについても、動画を貼ったり、リターンをいくつか作ったりするから手間がかかる。なので、作る側としてもやはりPCが多かったんです。polcaでは、そのハードルを下げようという思惑もありました。

――UI/UXもシンプルになっています。

 社内でもかなり議論したのは、いかに項目を減らすかということですね。なので、リターンもシンプルに1つだけ。後々の変更については検討しているのですが、300円〜10万円という固定の金額にしているのも、まずは決済がシンプルにできるところを目指しているからです。

■つながりみたいなものをグラデーションのように表現したくて

――拡散や共有については、当初の想定とは変わってきていますよね。

 基本的には、不特定多数に拡散するものではないという前提で作りました。URLを知っている友人・知人のみがアクセスし、支援できる。例えば、同僚のサプライズパーティーを社内で少数の人たちだけでやるとか、祖父や祖母の還暦祝いを親族一同で集めてやるとか。

 そういった、リアルに知っている友人・知人の中で使うだけのファンディング、つまり「フレンドファンディング」というのを想定していたんですけど、予想以上に、Twitterなどで拡散するというような動きが起きています。しかも300円を支援されて、それをまた別の人に支援するというような新しいつながりも生まれている。面白いですよね、知らない人が知らない人に支援をするというつながりは。

――Twitterを見てみると、例えば「#ポルカおじさん」「#ポルカおばさん」のようなハッシュタグが自由に付けられて、支援を求めたり、支援を受けたりとさまざまです。

 ポルカお兄さん、お姉さんもいますね(笑)。

――オープンになること、それに伴い起こるリスクについてはどう考えられていますか。

 想定は当初からしていました。ただ僕は、このつながりみたいなものをグラデーションのように表現したくて。本当の意味で、ガチガチの知り合いのみにターゲットを絞ったアプリにするつもりだったら、それはできたはずなんです。URLをシェアというかたちではなくて、polcaの中でフォロー、フォロワーになり、友人関係のみでしか見られないし、支援もできないという作りにもできた。そうしたくなかったのは、例えば、僕が会社の同僚のためにする企画と、釣り仲間のコミュニティでやる企画、親族でやる企画って本来はバラバラに存在していて、その中での関係性はそれぞれ別々じゃないですか。

――つながってはいないですね。

 僕の親族が、釣り仲間とやっている企画を見ても変に思うかもしれない。そういったことをユーザー目線で見てみると、リスクとしては余計な炎上が起きる可能性はあるわけですね。なので、URLはあくまで知っている人同士でしか分からない、つながれないということは前提。でもそのURLを自分の意思でTwitterに貼ることや、公開された場に貼るというやり方もできますよという提案はやりたかった。

 実際には公開されていないプロジェクトもたくさんあるんですけど、それは僕らも気付きようがないんですね。データベースは見られますけど、一切表には出てこないので。

――用途によって使い分けることができる。

 そうですね、社員の退職祝いをみんなでするというかたちで使われていたりします。社内SNSやSlackだけでシェアするんだけど、そういうのは、支援単価は高いんですよ。1000円とか3000円とか。企画一覧という機能を実装していないのも、ある個人がやっている企画一覧というものが公開されてしまうと、そもそもの僕たちが意図するところから外れてしまいますし、そうやって一覧化されてしまうことへのアンチテーゼみたいなものもpolcaにはあります。

■2年前に出していたら炎上して、サービスとしてすぐに終わってしまったのでは

――なぜ今のタイミングで、こういった形態のサービスを出されたのでしょう。

 感覚的にですが、クラウドファンディングも含めてお金の流れがこの1、2年でかなり変わってきたというのはあって、今だ、という感じはすごくありました。例えばpolcaを2年前に出していたら炎上して、サービスとしてすぐに終わってしまったのではないかと。

 他社さんですけど「VALU」というサービスとか「paymo」とか、いわゆる“フィンテック”と呼ばれるようなお金にまつわるサービスが続々と出てくる中で、ちょうど地ならしがされたというか、ユーザーにとっても決済に対する価値観がだいぶ変わってきたタイミングだと思うんですよ。

――別の例につなげると、「メルカリ」などの登場からかなり風向きが変わってきた印象があります。

 確かに。シェアリングエコノミーということもありますが……メルカリがもう3年、4年くらい前ですか。polcaの開発自体は去年の後半から今年の頭に入ってからですが、思想自体はもともとあったので、土壌ができた今の時期に出そうかと。

■マネタイズできるポイントというのはいろいろとある

――現在、polcaの利用手数料、振込手数料は無料ですが、このキャンペーン終了後にはどういった価格にするのか、あるいはどういったマネタイズモデルにされるのでしょうか。

 そこに関して言えば、僕らの目指す、1人でも多くの人に1円でも多くのお金が回る世界を作るというミッション、ビジョンがあります。今この時点で課金してしまうと、それがネックになって使わない方々とか、躊躇してしまう人が出てくるだろうと。手数料を取ればマネタイズは可能ですが、この時点ではお金がなめらかにするためのマーケティングコストだと割り切って、僕らが負担しています。

 今、polca自体は大きく伸びていて、これからどんどん実装していきたい仕組みもあるので、そういったものでサービスが便利になっていったときに、きっとマネタイズは違うところでもできるのではないかと。

――手数料ではないかたちでいうと、どんな方法があるのでしょう。

 例えば、貯まったpolcaポイントを使って何かを買うというときに、買った先の会社から僕らにバックがあるようなモデルもありえますし、「パーティーをしたい」という企画で集まったお金で、その場で決済して飲食店側からお金をいただくとか、それなりの流通額になるとマネタイズできるポイントというのはいろいろとあるんじゃないかとは思っています。

 誰かが誰かに支援したというところで手数料を取るという、普通に考えたらこういったモデルになるんですけど、そこをあえて外した新しいモデルを作ることができないかというのは、ちょっと考えたいところですね。

■コミュニケーションが生まれる世界というものを先に作らないと

――成長の加速度的にはいかがでしょう。ローンチしてわずか数日で大きな話題とユーザーを集めましたが、その後の成長曲線としては順調に伸びていますか?

 角度的には上がり続けていてます。まだマーケティングなどもかけていないので、本当にオーガニックで増えているという感じですね。やはりフィンテックという流れの中で、送金サービスや個人間決済サービスなどいろいろ出てきたんですけど、僕らが目指したのはかたちとしては近いんだけれど、あくまでツールではなくコミュニティ、コミュニケーションツールであるということを入り口にすること。

 そのコミュニケーションが生まれる世界というものを先に作らないと、結果としてツールとして使っていただくという部分も全然伸びないんじゃないかという仮説もあったんですね。まずは友だち同士で支援する世界をどう作るかという、そこはUIやUXも含めて考えていたので、今回の伸びに関してはうれしいなと。それは、polcaで文化が生まれているのも含めてです。

 メルカリのコメント欄で、勝手に「○○さん専用」というような文化が生まれたりとか、独自の、ユーザーさんによって自由に作られる文化。プラットフォーマー側からすると、冥利に尽きるというか、自分たちもある程度想定はしているものの、想定を超えた使われ方をしていくというのは良くも悪くもですが、面白いですね。

――特に「アクティビティ」でコミュニケーションが成り立っているのが面白いなと思いました。現在は雑多に並べられていますが。

 そこは今後整理する必要があると思っています。自分のプロジェクトもアクティビティ上に並んでしまうので、自分の企画が探せないということがあるので。

――SNS、あるいはブログに、polcaを使ってみた感想が数多く書かれていますが、特徴的だったのは批判がほとんどないことです。

 そうなんですよ、僕はもうちょっと賛否生まれるものだと思っていたんですけど、そこは意外とないので逆にちょっと怖いですね(笑)。

――やはり小額を支払い、支援するという体験を楽しいと感じているんでしょうね。

 今って、都度都度カードで決済がかかっているんですけど、例えばよくある投げ銭系のサービスだと最初に3000ポイントとかを買ってからそれを使うみたいなこともありますよね。他の、特に動画系のサービスとか。そういった仕組みも考えたんですけど、前もってポイントを買ってからというのは違うのかなと。

 その場で300円というお金を少額決済で送ってしまうことって、体験的にあまり多くはなかったんじゃないかと思うんですよね。日常生活の中でカード決済をする人って実際にはかなり多くて。

――確かに僕もカードで決済しています。

 今後、銀行APIなどがオープン化されていって、銀行口座と直接つながっていけば、口座から口座へと投げられるような世界観もあると思います。銀行のアプリって、なかなか若い方が使わないような状況になっていますよね。今は流れ的にすごく良いんですよ。銀行APIもこれからいろいろなところが開放し始めますしね。

――リターンの不履行や、その他悪質行為への対応についてはどう考えていますか。

 まず現時点ではSMS認証を必須にして本人確認を必ず取っています。企画は全部チェックしていて、リターンなしとかはだめなんです。あくまで個人間決済なので。あとはキャッシング枠の現金化のようなことももちろんだめですし、そこに関してはすべて確認した上で対応しています。

 リターンの履行について言うと、サービス上でのコミュニケーションは必ず行って欲しいです。悪質な場合はもちろんこちらから企画者側に通達します。今回、最初にSMS認証を入れたのですが、それは本人性をチェックするためであって、ハードルをまず最初に設けています。

■ひとりでも多くの人にお金が回ってくるような仕組みを作りたい

――最後に、今後の展望や取組みについて伺えればと思っています。

 僕は、新しいセーフティネットのかたちを作りたいんですね。今まではリバ邸(若者たちの駆け込み寺として作られたシェアハウス)のような居場所を作る活動をしていたりして、今は日本中にあります。ドロップアウトしたような人たちが駆け込むような場所として機能して欲しいと思っているんですけど、これからは経済も小さくなっていくし、どんどん社会の制度とか仕組みからこぼれ落ちる人たちが出てくる。その中で、こぼれていく人に何ができるのかを考えたいというか。

 そういった人たちにシェアハウスという選択肢があれば、そこで暮らすことができるし、戻ってくる場所があればチャレンジしやすくなると思う。インターネットはそういった人たちのためにあるものだと信じています。お金は複雑化してしまい、遠い世界のもののようになっていますが、もともと身近なものであって、もっとお金を介したコミュニケーションを活性化したい。

 そのコミュニケーションがあれば、いざ明日食べるものがないとなったときに、ある人は米をくれるかもしれないし、ある人は魚をくれるかもしれない。ある人はビットコインをくれるかもしれないし、お金をくれるかもしれない。そうやってお互いがお互いに支え合って生きる世界というものは、実現できると僕は信じたいし、信じています。なので、お金にまつわるサービスをいろいろと出していく中で、ひとりでも多くの人にお金が回ってくるような仕組みを作りたいですね。









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