2016年03月10日
「500万円当選しました」との迷惑メールが届く――本当に支払わせることはできる?
ある日、出会い系サイトを運営している会社から「500万円当選しました」というメールが届いた。ならば、本当に支払ってもらおうと、その会社に対して裁判を起こしたら、結果的に100万円を支払ってもらうことができた――。そんな出来事を記したブログがこのほど、話題になった。
ブログによると、投稿者は2010年、メールを送ってきた業者を相手取って、「当選金」の支払いを求める民事訴訟を起こした。弁護士に頼らない「本人訴訟」として進めたが、その後、業者側との間で和解が成立し、100万円を支払ってもらうことに成功したのだという。
「●●万円当選しました」というメールは、いわゆる「迷惑メール」で、出会い系サイトなどへの登録を誘導したり、個人情報を入手したりするのに使われることが多い。一般的に、当選金は見せかけにすぎず、実際には手に入らないとみられている。
今回のケースは異例のことと思えるが、もし同じようなメールが届いた場合、どのようにすれば「当選金」を支払わせることができるのか。石井龍一弁護士に考えてもらった。
●書面による「贈与」は撤回できない
「今回のケースは、『贈与』という契約にあたると考えられます。
契約は原則として、当事者の合意、つまり『申込み』と『承諾』の意思表示によってのみ、成立します。したがって、今回のようなメールによるやり取りであっても、お互いに合意していれば、契約として有効に成立します」
石井弁護士はこう切り出した。贈与はどんなルールなのだろうか。
「民法は、『贈与』について、次のように規定しています。
『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる』
つまり、今回のように、業者からメールで『500万円を無償で与える』という内容の意思表示があり、そのメールを受信した人が『承諾する』と返信することで、有効に贈与契約が成立したことになります。
したがって、メール受信者は、この贈与契約の成立を根拠に、当選金を支払うよう求めることができます。
メールが、書面にあたるかどうかは、争いのあるところですが(民法550条)、書面に該当すれば、当事者は撤回することができないことになります(同条の反対解釈)」
●業者は実在せず、特定できないケースが多い
今回のケースでは、500万円のうち100万円を支払ってもらうことができたようだが、全額支払いを求めることはできたのだろうか。
「みずからの意思で贈与契約を締結した以上、両当事者は、その契約に拘束されます。
つまり、今回のケースでいえば、業者はメールの受信者に対して、500万円を支払う義務があり、受信者は500万円全額を請求する権利があることになります」
こうした訴訟が、悪質な業者を駆逐させることにつながるだろうか。
「悪質な業者が記載された所在地に実在しない場合も多く、駆逐するまでに至らないのが実情でしょう。
たしかに、今回のように、業者が実在して特定できる場合、当選金の支払い請求をしてみるのはありかもしれません。
ただ、業者は資力がないことが多く、和解で解決することになる場合もあります。今回のブログ投稿者のように、100万円で和解できたのは珍しいケースといえるでしょう。
何はともあれ、今回のケースのような訴訟は、悪質な業者に衝撃を与えたことは間違いないと思います」
石井弁護士はこのように述べていた。
https://www.bengo4.com/shohishahigai/1082/n_4394/
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「●●万円当選しました」というメールは、いわゆる「迷惑メール」で、出会い系サイトなどへの登録を誘導したり、個人情報を入手したりするのに使われることが多い。一般的に、当選金は見せかけにすぎず、実際には手に入らないとみられている。
今回のケースは異例のことと思えるが、もし同じようなメールが届いた場合、どのようにすれば「当選金」を支払わせることができるのか。石井龍一弁護士に考えてもらった。
●書面による「贈与」は撤回できない
「今回のケースは、『贈与』という契約にあたると考えられます。
契約は原則として、当事者の合意、つまり『申込み』と『承諾』の意思表示によってのみ、成立します。したがって、今回のようなメールによるやり取りであっても、お互いに合意していれば、契約として有効に成立します」
石井弁護士はこう切り出した。贈与はどんなルールなのだろうか。
「民法は、『贈与』について、次のように規定しています。
『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる』
つまり、今回のように、業者からメールで『500万円を無償で与える』という内容の意思表示があり、そのメールを受信した人が『承諾する』と返信することで、有効に贈与契約が成立したことになります。
したがって、メール受信者は、この贈与契約の成立を根拠に、当選金を支払うよう求めることができます。
メールが、書面にあたるかどうかは、争いのあるところですが(民法550条)、書面に該当すれば、当事者は撤回することができないことになります(同条の反対解釈)」
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つまり、今回のケースでいえば、業者はメールの受信者に対して、500万円を支払う義務があり、受信者は500万円全額を請求する権利があることになります」
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「悪質な業者が記載された所在地に実在しない場合も多く、駆逐するまでに至らないのが実情でしょう。
たしかに、今回のように、業者が実在して特定できる場合、当選金の支払い請求をしてみるのはありかもしれません。
ただ、業者は資力がないことが多く、和解で解決することになる場合もあります。今回のブログ投稿者のように、100万円で和解できたのは珍しいケースといえるでしょう。
何はともあれ、今回のケースのような訴訟は、悪質な業者に衝撃を与えたことは間違いないと思います」
石井弁護士はこのように述べていた。
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