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2016年02月29日

ガン検診の注意点・・・放射線被曝

放射線を用いた検査による被曝のリスク
ガンの早期発見は、ガンによる闘病負担を減らし、生存率を高めると推奨されています。反面、ある種のガンでは検診を受けることで死亡率は減少しない、という調査もあります。
これら疫学的見解とは別に、放射線を用いた検査による医療被曝という問題があります。放射線を使った検査には一般撮影検査、CT検査、ラジオアイソトープ検査、血管撮影検査、乳腺撮影検査などがあります。
唯一の核被爆国である日本人としては、「放射線」にはナーバスになってしまいます。放射線による人体損傷は、正常細胞のDNAを傷つけることです。細胞が自らその傷を治す仕組みは持っています。しかし、修復に失敗するとアポトーシスによって細胞自ら死ぬか、突然変異によってガン化する恐れがあります。
欧米では医療被曝と発ガンの関係を示唆する研究がある一方、リスクは少ないという主張もあり、論議を呼んでいます。
【2008年1月27日 読売新聞】
米がん患者2%が「CT原因」(米コロンビア大試算 放射線に被ばく)
コンピューター断層撮影法(CT)検査の急増に伴い、検査で放射線を浴びることが原因でがんになる人は、米国で将来、がん全体の2%に達する、との試算がまとまった。米コロンビア大の研究チームが米医学誌に報告した。
研究チームによると、1回のCT検査で2〜3回放射線を浴び、その放射線量は30〜90ミリ・シーベルトに達する。これは胸部エックス線撮影の最大9000倍に上る。
CT検査は使い勝手が良く、米国民がCT検査で放射線を浴びる回数は、1980年の300万回から2006年の6200万回へと大幅に増えた。
この影響を調べるため、研究チームは、原爆の被爆者の発がんリスクと比較した。その結果、91〜96年にはCT検査による被ばくが、米国のがん発症者の原因の0.4%にとどまっていたが、将来は1.5〜2.0%に高まるという。
研究チームは「特に子供は放射線でがんが引き起こされる危険性が高く、代替策を講じて、CT検査の回数を減らすべきだ」としている。CT検査の3分の1は不要とする研究もあり、必要のない検査を受けないよう訴えている。
日本の場合、がんにかかる人の3.2%は、放射線診断による被ばくが原因と推定される、との報告が、英国オックスフォード大グループの国際調査で2004年にまとまっている。日本はCTの設置台数が多く、国民が受ける検査回数が、調査対象の15か国の平均に比べ1.8倍と多いことが背景となっている。

【Archives of Internal Medicine誌2009年12月14日号】(一部抜粋)
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(USCF)の画像診断専門家らが主導する新たな研究によれば、通常のCT検査の被曝線量には、一般に考えられているよりも大きな幅があるため、発癌リスクの増加が懸念されている。
(中略)
CTの進歩の一つは、CT検査1件に要する時間が劇的に短縮されたことであった。 しかし、これは諸刃の刃でした、と同医師は言う。 CT画像があまりにも短時間で取得できるため、心周期の動脈相,静脈相およびそれよりも少し遅れた位相でそれぞれ1回ずつCT撮影を行う多位相検査を行いたいという思いが強くなった。これによってCT検査から得られる情報は増えるが、被曝線量も3倍に増す。
研究チームは、米国の臨床現場でもっともよく行われる11タイプのCT検査に伴う被曝線量と、各タイプに関連する潜在的な発癌リスクを予測することに重点的に取り組んだ。
この研究は、さまざまなタイプのCT検査による被曝線量に関する初の大規模調査である。 研究者らは、サンフランシスコ湾エリアの4施設で5カ月間に1119人の患者が受けたCT検査について調べた。 頭頸部・胸部・腹部-骨盤という解剖学的3領域のCT検査を評価した。
本研究により、被曝線量は一般的に報告されているよりも多く、CT検査のタイプ毎における最大と最小の被曝線量の間には平均で13倍の差があることがわかった。つまり、特殊なCT検査を行う場合、患者が受ける被曝線量には大きなばらつきがある、とSmith-Bindman医師は説明した。
予想どおり、研究者らが予測した発癌にいたるCT検査の件数は、性別・年齢・CT検査のタイプによって大きく異なっていた。女性の方が男性よりも少ない回数のCT検査で高い発癌リスクをもたらすと予測した。
たとえば、40歳で冠動脈造影CT検査を受けた女性の270人に1人が検査により癌が発生するのに対し、男性では600人に1人と予測された。 同じく40歳で頭部ルーチンCT検査を受けた場合、予測される発癌リスクは女性で8100人に1人、男性で1万1080人に1人である。 20歳前後の患者では、発癌リスクはいずれも約2倍高かった。 「CT検査に伴う発癌リスクは、CT検査を受ける患者1,000人に1人であると推測するのが慣例です。 われわれの研究では、特定のCT検査を受けた特定集団の患者に限っていえば、発癌リスクは80人に1人という高い割合でした」とSmith-Bindman医師は述べた。
(中略)
Smith-Bindman医師によれば、他の画像検査法と比べると、1回のCT検査で被曝する実効線量の中央値はマンモグラフィーの74回分、胸部X線検査の442回分に相当する。
CT検査の安全性を高め、被曝線量を減らすために以下の3項目を実践する必要があることを研究者らは見出した。
● 不必要な検査や、臨床的判断への影響が少ない検査を減らす。
● すべてのCT装置について低線量ないしは相対的低線量プロトコルを標準化し使用する。
● CT検査の安全な実施法を定めた連邦法と米国食品医薬品局(FDA)の監督の下、患者および施設における被曝線量を標準化する。
(全文翻訳はこちら!)
また2010年2月には、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が医療被曝によるがんリスクとの関連調査を開始すると発表しました。
とはいえ、CTは臨床現場で有用な検査であることも確かです。コロンビア大学のブレナー氏は対策として、放射線量を個々の患者に合わせて調節する、超音波やMRI(磁気共鳴画像)など放射線リスクのない別の手段がある場合はCTの使用を避ける、CTの施行件数を減らす、ことを提言しています。
日本国内では、日本放射線技師会が2006年から被曝の低減に取り組む医療機関の認定を始めました。また同会では、撮影方法ごとに被曝の低減目標値も定めています。同じ検査でも医療機関によって被曝線量が10倍以上もの差があることを踏まえ、今後も低減に努めていきたいとしています。






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