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東洋経済オンライン
炭酸リチウムの現物価格は2023年初めの4分の1に下落した。写真は中国のリチウム大手、天斉鋰業の倉庫で出荷を待つ炭酸リチウム(同社ウェブサイトより)
中国の商品市場で、EV(電気自動車)向け車載電池の主要原料である炭酸リチウムの先物が売り込まれている。先物相場の急落に引きずられ、現物価格も値下がりが止まらない状況だ。
【写真】リチウム原料の需要の伸びが鈍化するなか、2024年の供給はさらなる増加が見込まれている。写真は中国の天斉鋰業が開発権益を持つオーストラリアのリチウム鉱山
炭酸リチウムの先物を取り扱う広州先物取引所では、12月5日、決済期限が2024年1月の先物取引の終値が1トン当たり9万3000元(約191万円)と、2日連続のストップ安で引けた。また、同日の現物価格は1トン当たり12万4000元(約255万円)と、2021年9月上旬以降の最安値となった。
■先物価格は1トン200万円割れ
2023年初めの時点では、リチウムの現物価格は1トン当たり約50万元(約1029万円)の高値をつけていた。しかし車載電池の(供給過剰による)在庫急増を背景に、3月にかけて同約20万元(約412万円)に急落。その後は同約30万元(約618万円)まで値を戻し、年央までは横ばいが続いた。
ところが、7月21日に広州先物取引所が炭酸リチウム先物の取り扱いを始めたのをきっかけに、先物主導の新たな弱気相場が始まった。先物価格は9月に1トン当たり約17万元(約350万円)まで売り込まれ、10月は小幅に戻したものの、11月から再び急落。12月に入ってついに同10万元(約206万円)の大台を割り込んだ。
リチウム相場の下落に歯止めがかからない主因は、車載電池の需要の伸びを上回る供給過剰にある。
証券大手の中信建投証券の試算によれば、2024年のリチウム原料の供給量は炭酸リチウム換算(LCE)で41万トンに達するのに対し、需要は19万2500トンにとどまる見込みだ。この予想が的中すれば、供給と需要に20万トンを超えるギャップが生じることになる。
「2023年は蓄電システム向け電池の需要が急拡大したことが、(EV向けの需要拡大の鈍化を補う形で)年央までのリチウム相場の下支えになった。とはいえ、蓄電システム向けの市場規模はEV向けとは比べものにならないほど小さく、下支え効果は長続きしなかった」
財新記者の取材に応じた業界関係者は、2023年のリチウム相場の動きをそう総括した。
■先行きは悲観ムード一色
「リチウム原料の需要回復の時期について、業界内では明確な見通しを立てられなくなっている。中国国内の自動車市場は、例年1〜3月期はオフシーズンにあたる。海外市場でも(中国市場のような)EV普及率の急上昇は見られない」。前出の関係者は、そうため息をつく。
業界の悲観ムードに追い打ちをかけたのが、アメリカ政府が12月4日に発表した「懸念される外国の事業体」に関する規制案だ。同案は、中国資本が25%以上を出資する企業が生産した電池または電池部材を組み込んだEVについて、税額控除の対象から外す方針を示した。
中国のEVメーカーの進出が相次いでいるヨーロッパ市場でも、EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会が、中国製EVへの(中国政府の)補助金に関する調査を開始した。
こうした悪条件が重なり、業界関係者の間には(リチウム原料の)需要の本格回復は短期的には期待できないという見方が広がっている。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は12月5日
タグ:リチウム電池