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2017年03月25日

総理夫人という存在は。。。

 籠池証人喚問が放送され、その後の報道をちらちらと見ていて、驚いたことがある。
 かねてよりの報道を見ていると、籠池氏はとんでもない男で、言うことも支離滅裂、嘘つき、と言う印象を持っていた。ところが国会証言での籠池氏の様子は、思ったより整然としていた。
 発言は少々個性的ではあるが、突拍子もないと言うこともなく、意外と理路整然としており、質問に対する答えも結構的を得ていた。それ以上に、ところどころ使われる慣用句や比喩などは、まるでふざけた発言のように見えて、実はなかなか巧妙だった。
 小学校校舎の土地が、8億円も安くなったことに対して、どう思うかと聞かれ「神風が吹いた」と答えている。「見えない力が働いたと思った」とも言った。当然これが意味するところは、自分が働きかけた政治家による上からの力で便宜が図られたと思った、ということである。誰が聞いてもそう理解する。しかし言葉の意味は理解されたとしても、実際に言われた言葉は、「神風」であり「見えない力」でしかない。このふたつの言葉は後になって偽証を問われる事はない。そこには政治家も、政治力も言葉としては表れていないからだ。籠池氏がそう思ったと言うことは事実で、偽証ではない。籠池氏の年頃なら、本気で神風を信じる人もいるし、だいたい教育勅語を教えようとする人である。「神風を信じていた」と言えば嘘とは言えない。
 籠池氏の発言には、随所にこの手の表現がある。証人喚問は嘘を言ったら偽証罪に問われる。嘘とは裏付けのない発言も含まれる。確固たる証拠もなしに、都合のいいことを言うことはできない。しかし自分がそう思い込んでいたなら、「そう思っていた」と言うことは嘘ではない。本当に政治家が動いたかどうか、彼は確かめたことはない。彼は、かつて総理夫人に働きかけた実績があり、後に8億円土地代が安くなったという結果を見て、自分の働きかけがうまくいったのだと思った。思ったことは嘘ではない。実際に働いた政治家がいようといまいと、そう思ったからそう思ったと証言した。彼は偽証罪には問われない。
 問題のファックスの件もそうである。
 彼は総理夫人に電話をした。夫人は返信しなかったが、秘書からは連絡が来た。籠池氏が留守電をしておいた総理夫人からの手配だと思ったとしても、無理はない。
 自民党が主張するように、籠池氏の方が積極的に総理夫人の秘書に手紙を送って問い合わせしたと言うことがあったとしても、籠池氏はまず電話をし、返事がないから手紙を書いた。すると秘書はそれに答えてファックスを送ってくれた。内容は普通の人がそう簡単には問い合わせできない相手からの詳しい返事である。この一連の行為の中で、籠池氏は、総理夫人が秘書を通じてやらせたと考えても不思議はない。多くの人が思うように、秘書は勝手に仕事はしないだろう。総理夫人が命じたから動いたのだろう。籠池氏はそう判断した。
 だから総理夫人に便宜を図ってもらったと解釈した。そう証言した。これは籠池氏が信じていたことを話しただけで、例え違っていても、籠池氏は偽証はしていない。

 もう一つ、公開された籠池夫人と総理夫人のメールである。
 そもそも問題が発覚してから後にこんなに大量のメールのやりとりをしていること自体、総理夫人の行為はおかしいのではないかと思った。普通なら、返信しないだろう。総理の周辺が総理夫人の行動をストップするだろう。それが何十通もやりとりしている。
 その内容だが、報道された内容を見る限り、実は籠池夫人の方がよほどまともなメールを送っている。自民党は、興奮しておかしくなりかけている籠池夫人を、総理夫人がなだめていただけという方向でまとめたいようだし、マスコミやワイドショーのコメンテーターも異口同音にそう言うのだが、きっとそれは相手が総理夫人だからそう言ってるだけなんじゃないかと思う。
 籠池夫人のメールは非常に良く練れている。自分が不利になることは一切言及していない。総理夫人が公演の謝礼を受け取った、受け取らなという情報について問いかけると、「ひどい」を連発する。ところがその「ひどい」は、「謝礼がなかったという総理夫人の証言は嘘だ」という意味の「ひどい」なのか、「謝礼はなかったのに、謝礼があったかのような報道をするマスコミ」は「ひどい」なのかわからない。もちろん周辺情報を知っている者なら、答えは前者であろうと思うのだが、籠池夫人のメールには「ひどい」という言葉があるだけなので、言葉だけを見るとどっちなのかわからない。ただ受け取る方がどうとでも受け取れるようになっている。
 籠池夫人の言葉は、受け取った者が忖度して初めて内容がわかると言うものが多い。相手には確かに内容の意味が伝わる。しかし後で言質をとられても、言葉じたいは曖昧で、証拠にはならない。だから籠池夫人事態が嘘を言って、総理夫人を騙したという証拠はないのである。
 実に巧みなのだ。
 それに支離滅裂な内容なのかと思いきや、割とちゃんとわかりやすい言葉で書いている。「祈る」を連発する総理夫人の方がよほど何を言ってるかわからない。

 このことからわかることは、籠池夫人はあたかも常軌を逸しているように見せて、しっかりと言葉を操っている。そして総理夫人から自分に都合よく働く言葉を引き出している。実際あのメールを見た多くの人は、総理夫人があたかも籠池夫人と何らかの利害関係があり、その関係を必死で隠そうとしているような印象を受けたのではないだろうか。
 そして籠池夫人は、後で言質を取られるようなことは一切言わない。その部分は返事しなかったり、形容詞や感情を表現する言葉ではっきりと表現せず、読んだ人が内容を類推できるようにはしているが、しかしはっきりした単語は使っていない。嘘をついているかと言われると、籠池夫人自身が思っていることを言っているだけだから嘘ではない。逆に彼女にそう思わせた背景を考えると、それだけのことを総理夫人はしているのではないかと言う勘ぐりが起こってくる。
 
 結局の所、大阪のあくどい商人風に見せておきながら、籠池夫妻は場数を踏んだ海千山千で、総理夫婦を手玉に取っていると言えるだろう。稲田防衛大臣に至っては、弁護士でありながら夫婦共にいいように翻弄されてしまっている。おそらく政治家として明確な犯罪を犯した人はいないだろう。しかし特に総理に関しては、立場を考えるなら、あまりに脇が甘いと言わざるを得ない。
 
 総理夫人は、以前にも大麻使用で捕まった人物とツーショットがネットで流れたりしている。その人物は自治体に許可を取り、町おこしとして大麻草(麻薬としてではなく、合法な部分)を栽培し商品化すると言う仕事をしていたわけで、その活動に賛同したという意味で総理夫人とのツーショットにつながったわけだが、その直後にその人物は大麻使用(麻薬やっちゃったわけ)で逮捕された。
 別に総理夫人が大麻をやったわけではないが、そういう人物とツーショット写真がネットに流れるのは、やはり立場上よろしくはないだろう。総理夫人に関するこの手の情報は、大小様々ある。
 総理という特別な地位にいる人物の妻となれば、一私人として扱われることはない。本人がどう思おうと、周りに対する影響は大きい。また総理という立場の人間には、行動に制約がある。そう国民は思っている。一定の思想に偏ったり、そこに不当な援助を加えたりと言うことは、国民としては許しがたい。
 総理夫人の行動は、どうしても夫である総理の行動と結びつけられてしまう。(夫婦とはそういうもの)だから夫人が問題行動をすれば、それは総理自身の問題行動として受け取られがちだ。だとしたら、夫人もまた、行動を慎むべきではないだろうか。

 昨日今日政治家夫人になったわけでもなく、総理になってからも結構時間が経っている(二度目だし)にもかかわらず、ずっとこのような行動が続くのはやはり脇が甘すぎるし、政治家夫人としては常識があるとは思えない。

 本日籠池証言の話題で持ちきりのさなか、講演会に出た総理夫人は、自分の現在の立場に対して、涙をうかべつつ、「今は黙って嵐が行き過ぎるのを。。。」みたいな事を話し、しっかり録画され、報道されている。これは不祥事を起こした政治家が、自分の講演会であえて不祥事について、おちゃらけた(もしくは冗談めかした、不謹慎な)発言をして、その場では拍手されながら、その映像が流失して、職を辞さざるを得なくなる、そのパターンそのものである。
 かつて安倍内閣は閣内に不祥事を起こす人物が多発して崩壊した。
 今回も、同じパターンで職を辞した閣僚が出ている。
 それがわかっているなら、総理夫人の行動をもう少し抑制すべきじゃないのかと思う。
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