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2021年11月29日

清水寺も法隆寺も 実は「マイナー仏教教団」の寺院である事をご存じか?



 清水寺も法隆寺も 実は「マイナー仏教教団」の寺院である事をご存じか?



 11-29-1.png 11/26(金) 11:16配信



  11-26-10.jpg

      写真はイメージです   写真 iStock.com SeanPavonePhoto 11-2610


 現在、日本国内の仏教には156もの宗派(包括宗教法人・仏教系新宗教を含む)が存在する。仏教教団(宗派)が淘汰の時代を迎えて居る。日本の仏教は曹洞宗や浄土宗・日蓮宗と云った宗派毎に分かれて居るが、小規模な宗派や一部の仏教系新宗教は消滅の危機に瀕して居る。
 ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「小規模な宗派や一部の仏教系新宗教は、消滅の危機に瀕して居る。特に、地方都市に末寺が多く分布する宗派は将来的に存続が危ぶまれ、他の宗派等に〔合併・吸収〕される可能性も在る」と云う。日本の仏教宗派の現状と未来予測をして観たい・・・



              11-29-3.jpg

             浄土宗僧侶 ジャーナリスト 鵜飼 秀徳


 少子化社会で確実に到来する「仏教宗派の淘汰」   

 日本の仏教は1,500年の歴史の中で、多数のセクトに分かれて来た。仏教教団勢力の流れを説明すると、可成りヤヤコシイ事に為るので此処では極簡単に説明する。  
 宗派の始まりは、鎮護国家を目的とした〔南都六宗・・・三論(みろん)・成実(なみ)・倶舎(くしゃ)・法相(ほうしょう)・華厳(けごん)・律(りつ)〕と云われて居る。南都六宗は、学問研究が主で在り衆生救済が目的では無かった。その為次第に衰退して行った。現在では法相宗・律宗・華厳宗の3宗しか残って居ない。  

 平安時代には遣唐使を務めた〔最澄が天台宗〕〔空海が真言宗〕を開き現在の宗派の基盤を造った。奈良時代に登場した役行者(えんのぎょうじゃ)が始めた修験道が各地で信仰される様に為ったのもコノ頃で在る。  
 鎌倉時代に為って比叡山で学んだ〔法然が浄土宗〕を、その弟子の〔親鸞が浄土真宗〕〔日蓮が日蓮宗〕を開宗し、入宋した〔栄西が臨済宗〕〔道元が曹洞宗〕を伝えた。教科書にも載って居る所謂〔鎌倉新仏教〕で在る。

 これ等の伝統仏教教団は、江戸時代に入るとホボ分派の動きが止まる。明治時代に入って信教の自由が発せられると宗派再編が活発化する。1939(昭和14)年に〔宗教団体法〕が発足する迄〔13宗56派〕が存在した。
 例えば臨済宗は天龍寺派や相国寺派・建仁寺派等14派に分かれて居た。だが、戦時下での宗教統制を目的とした宗教団体法が施行されると、基本的には「1宗祖1宗派」と為り、浄土真宗等一部例外の教団は在ったが〔計28宗派〕に統合される。  

 戦後は憲法の定める「信教の自由」に依って、再び多くの包括宗教法人が誕生して行く。戦後間も無い頃の新宗教教団の乱立の様子は「神々のラッシュアワー」と呼ばれた。現在〔156〕もの仏教宗派(包括宗教法人・仏教系新宗教を含む)が存在して居る。  
 因みに「新宗教」とは、幕末以降に成立した宗教勢力を指す。仏教系では、宗教団体法以前の〔13宗56派〕〔伝統仏教教団〕とし、それ以外の新興勢力を〔新宗教〕と位置付ける事が多い。  

 敢えて教団名を挙げ無いが、一見、伝統仏教教団風の宗派名を掲げて社会的な信用が在る様に見せつつ、強引な入信勧誘や霊感商法を行って居る仏教系新宗教も在るので注意して貰いたい。

 奈良の法隆寺も京都の清水寺も
 実はマイナーな宗派だった

 伝統仏教教団の内、最大の宗派が〔曹洞宗〕だ。末寺1万4,593カ寺を抱える。次いで〔浄土真宗・本願寺派〕が1万250カ寺。更に〔真宗大谷派〕が8,624カ寺〔浄土宗〕7,008カ寺〔日蓮宗〕5,138カ寺と続く。多くの教団を生み「日本仏教の母山」として知られる〔天台宗〕は3,323カ寺に留まって居る。  

 因みに著名な寺院で云えば、聖徳太子が拓いた奈良の〔法隆寺〕〔聖徳宗〕と云うマイナーな宗派だ。戦後の「神々のラッシュアワー」の時代に〔法相宗〕から独立した。聖徳宗傘下の寺院は24カ寺しか無い。  
 京都の観光名所〔清水寺〕も戦後〔法相宗〕から1965(昭和40)年に独立し〔北法相宗〕を名乗った。包括する寺院は僅か8カ寺だ。清水寺は日本でも最も古い宗派の一群〔南都六宗〕を起源に持つとは云え、実は新しい包括宗教法人傘下なのだ。

 更に大仏で知られる〔東大寺〕 は南都六宗の一つ〔華厳宗〕を受け継いで居る。同宗は108カ寺で在る。鑑真が拓いた〔唐招提寺〕を総本山に持つ〔律宗〕は現在28カ寺に過ぎ無い。唐招提寺の知名度は高いが教団の規模は可成り小規模で在る。  

 こうした小規模教団の内、地方都市に末寺が多く分布して居る教団は将来的に存続が危ぶまれる。何故なら、過疎化に依って寺院が護持出来無く為り、空き寺が増える事が予想されるからだ。
 数千カ寺もの末寺を抱える大教団傘下の寺院で在れば、仮に無住(住職不在)化したとしても近隣の同門寺院の住職が兼務し護持する事は可能に為る。だが、空き寺を兼務する同門寺院が近隣に無い小規模教団の場合、空き寺=廃寺」と為る可能性が在る。  

 地方の人口減少が加速すれば、無住寺院(空き寺)が増えるのは必然。私は2040年には現在の全国7万7,000カ寺が5万カ寺程に減少する可能性が在ると指摘し続けて居る。こうして小規模教団は勢力をドンドン失って行く。
或る時点で、浄土系なら大手の浄土宗や浄土真宗本願寺派等、密教系なら真言宗等に、臨済系なら最大派閥の臨済宗妙心寺派などに「合併・吸収」されて行くであろう。  

 伝統仏教教団で将来的にも安泰なのは〔曹洞宗〕〔浄土宗本願寺派〕〔真宗大谷派〕〔浄土宗〕〔日蓮宗〕〔高野山真言宗〕〔臨済宗妙心寺派〕〔天台宗〕〔真言宗智山派〕〔真言宗豊山派〕の10宗派位だろうか。とは云え、特に曹洞宗や高野山真言宗は、過疎地に多くの末寺を抱えて居り勢力の減退は否め無い。

 例えば同じ臨済宗でも「〇〇派」に細かく枝分かれして居る  

 又、浄土真宗や臨済宗・真言宗・日蓮宗はセクトが細かく分かれて居る。参考迄に臨済系に例を取れば、以下の様に細かい派に分かれて居る。  

 【臨済宗】妙心寺派3,341カ寺、建長寺派407カ寺、円覚寺派210カ寺、南禅寺派424カ寺、方広寺派168カ寺、永源寺派129カ寺、佛通寺派51カ寺、東福寺派366カ寺、相国寺派111カ寺、建仁寺派69カ寺、天龍寺派102カ寺、向嶽寺派61カ寺、大徳寺派199カ寺、國泰寺派34カ寺、興聖寺派9カ寺  

 尚、近年、末寺(布教所・教会等を含む教団施設)の数を急激に減らして居るのが、次に挙げる仏教系宗教団体で或る。此処25年間の経年変化を文化庁が発行している「宗教年鑑 1995(平成7)年版」と「2020(令和2)年版」を基に比べて観た。
 この中には伝統仏教教団の真言宗醍醐派や天台宗から独立した妙見宗等が含まれるが、多くが近代に為って発足した新宗教である。カリスマ性を持った教祖が昭和初期に独自の新宗教団体を設立させた。その最大の新宗教が、法華経信仰から生まれた霊友会だ。更に霊友会から独立したのが立正佼成会等である。

【天台系】石土宗 53⇒38カ寺、妙見宗 116⇒51カ寺、鞍馬弘宗 41⇒19カ寺  
【真言系】真言宗醍醐派 1085⇒902カ寺、真言宗犬鳴派 311⇒80カ寺、真言宗鳳閣寺派 138⇒7カ寺、真言宗花山院派 6⇒2カ寺、光明念佛身語聖宗 236⇒59カ寺、真如苑 184⇒15カ寺、卍教団 485⇒86カ寺  
【日蓮系】法華日蓮宗 39⇒19カ寺、在家日蓮宗浄風会 45⇒19カ寺、霊友会 3942⇒2801カ寺、妙道会教団 382⇒12カ寺、立正佼成会 690⇒605カ寺、思親会 190⇒69カ寺  
【奈良仏教系】不動宗 11⇒5カ寺  

 宗教施設数の減少傾向を見る限り、新宗教も厳しい運営を迫られて居る様だ。新宗教の場合、戦後の高度成長期に於いて、菩提寺を持た無い分家筋や都会に出て来た核家族をターゲットにして勢力を拡大して来た。だが、近年の少子高齢化傾向に依って教団運営に赤信号が灯って居る。宗教再編の時代は、直ぐソコに迄迫って来て居る。



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 鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり) 浄土宗僧侶 ジャーナリスト 1974年生まれ 成城大学卒業 新聞記者・経済誌記者等を経て独立 「現代社会と宗教」をテーマに取材 発信を続ける 著書に『寺院消滅』(日経BP) 『仏教抹殺』(文春新書)近著に『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書) 浄土宗正覚寺住職 大正大学招聘教授 佛教大学・東京農業大学非常勤講師 (一社)良いお寺研究会代表理事 (公財)全日本仏教会広報委員など

 
 【管理人のひとこと】

 市井の人間は、普段の生活では宗教からは距離を置いて暮らして居る。しかし、特に熱心な信者は、宗教と共に生活して居る方々も居られよう。我が国では特に意識し無くとも寺社仏閣と関連した、暦と風習や行事も知らぬ間に日常に組み入れられて居る。
 何か不幸な出来事があり、通夜や葬儀に参加した時に〔〇〇宗〇〇派〕と改めて自覚させられる事も在るが、直ぐに忘れてしまう・・・罰当たりだがソンな関係が多いだろう。日本の宗教を改めて教えられると「凄い歴史だな・・・」と感心はする。
 この業界の内輪話は余り世間に公開されないが、何れも少子高齢化・過疎化から逃れるものでは無い。改めて我が国の政治的・経済的劣化が全ての縮小傾向を生み出し、日本の全国を覆う様に為ってしまった。25年の不実な政治の所為で在ろう。今後心して行動しなければ為らぬだろう。















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