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2021年11月21日
「ポスト枝野」に迫られる課題
立憲民主党 衆院選敗北の研究
「ポスト枝野」に迫られる課題
11/20(土) 10:32配信
記者会見する立憲民主党の枝野代表 12日午後 国会 11-20-20
「勝ちに不思議の勝ち在り、負けに不思議の負け無し」
プロ野球楽天イーグルス元監督の故野村克也氏が愛用した言葉は、真剣勝負の選挙にも当て嵌る。10月31日投開票の第49回衆院選は立憲民主党の枝野幸男代表に取って「不思議の無い負け」だった。立民関係者に依ると、枝野氏が代表辞任を想定し始めたのは投開票日の3日程前だと云う。何故敗北したのか。過去の選挙との比較で考察する。 共同通信 杉田雄心
▽薄氷の勝利
「今回の小選挙区での戦いには、可成り大きな意義が在った。敢えて言えば、この大きな方向性に付いて、今回の選挙で違う選択肢を取り様が無かった。後悔は無い」
11月12日の退任会見。枝野氏は野党共闘の評価を問われると「敗軍の将」らしからぬ自信を見せた。小選挙区で野党が善戦した事を示す二つの数字を挙げる。
(1)立民の小選挙区当選者は公示前の48から57へ9増 自民党は小選挙区23減
47NEWS 11-20-21
(2)2位の惜敗率が90%以上の接戦区の内、自民勝利は34選挙区(18%)17年は27選挙区(12%)14年は20選挙区(9%)
自民は多くの選挙で競り合いに持ち込まれ薄氷の勝利が増えた。共産党との選挙協力に突き進んだ枝野氏の念頭に在ったのは17年衆院選の得票数だ。野党(旧立民・共産・希望の党・社民)の得票合計約2,610万票は自公の得票2,553万票を上回った。「野党票を割らずに17年選挙を再現すれば勝算が在る」が枝野構想だった。裏付ける様に安倍政権幹部は「8年近い政権運営の中で17年の衆院選が最もヒヤットした瞬間だ」と打ち明ける。
▽967万票の行方
とは云え、枝野氏が今回惨敗したのは厳然とした事実だ。比例代表は公示前62議席から39議席へマイナス23議席。今回の比例票1,149万票は、立民(前身)の17年衆院選の比例票1,108万票から伸び無かった。この分析が立て直しの前提と為る。
47NEWS 11-20-22
「立憲〔共産党〕」自民党から野党共闘をコウ批判されたのが効いたのは間違い無い。会見で枝野氏は共産党との関係に付いて「誤解無く伝えらえる努力は必要だ。それが十分で無かったのは、私の力不足だ」と党首の発信の問題だと位置付けた。
只、直視し無ければ為ら無い票の動きが在る。17年衆院選で東京都の小池百合子知事が設立した「希望の党」は当時の民進党を吸収して比例票967万票を得た。「排除の論理」の一言で求心力が結果として失墜したが安倍政権を間違い無く脅かした。
この希望票が何処へ流れたのか。グラフ「衆院選・野党得票率の比較」(左の黄緑が希望票)を見れば、大まかに次の式で表せる。
(1)得票率 17年の希望17% ⇒ 21年の維新増加分8%+国民5%+れいわ4%
(2)得票数 17年の希望970万 ⇒ 21年の維新増加分470万+国民260万+れいわ220万 詰まり、希望票は維新・国民民主・れいわ新選組の3党に分散し、野党票集約を目指した枝野氏の立民は取り込め無かった。
衆院選の開票センターでの記者会見を終え、退席する立憲民主党の枝野代表 1日午前0時2分 東京都内のホテル 11-20-23
▽ユリノミクス
希望票は小池氏が掲げた「改革保守」に根差す。立民に向か無かったのは、枝野氏の共産党との協力を巡る発信の問題だけで無く、日米安保条約や憲法改正への立場を初めとする基本政策への違和感が大きいと観られる。
野党共通公約は最初の項目に「安保法制の違憲部分を廃止」や「コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対」を記述した。
では、改革保守の基本政策とは何か。17年の希望の党の公約で並んで居たのは「憲法9条を含め改正論議を進める」「安全保障法を憲法に則り適切に運用」「30年迄に原発ゼロ」「民間活力を引き出すユリノミクス断行」等だ。
方向性は日本維新の会と共通する。実際、17年衆院選で小池氏と維新の松井一郎代表は東京と大阪で候補の住み分けで合意して居た。
▽7割近くが「あきらめ」
立民の敗因はもう一つ在る。無党派のウネリ無き低投票率だ。今回の55・93%は戦後3番目に低い水準で、ワースト1位の14年衆院選・ワースト2位の17年衆院選を含めて4回連続で50%台と為った。
47NEWS 11-20-24
無党派層は政権に厳しい見方が多い。此処を投票に向かわせる機運を醸成出来無かった。新型コロナウイルス感染が収まり、民意の政権への不満も沈静化した事が首相に幸運をもたらした。代わりに頭を擡(もた)げたのが政治への諦めだ。
選挙後の共同通信社の世論調査で「低い投票率の要因は何か」と質問した処「投票しても政治が好く為ら無いから」が50・0%に上った。「投票したい候補が居ない」が2番目で17・9%。合わせて7割近くの人が「政治に期待出来ない」と見て居る。与野党共胸に手を当てて考えるべき数字だ。
▽センターライト
岸田文雄首相も改革保守票を十分に取り込め無かった。首相の衆院選の訴えは菅義偉前首相との違いを意識し「改革」を封印した。その結果、野党と分配政策を競う格好と為り、違いは分かり難く為った。「与党も野党も慣れ合って居る」と批判した維新は「改革政党」をアピールして「漁夫の利」を得た。
衆院選の結果を受け、自民党本部で記者会見する岸田首相 1日午後 東京・永田町 11-20-25
首相は選挙後の会見で勝利宣言は行わず、こう語った。
「今回の総選挙に於いて、我が党に対して多くの厳しい声も寄せられた事を厳粛に受け止め無ければ為ら無い。各選挙区の結果を分析し、これからの国政、次の選挙に生かして行く」
今回の選挙が「不思議の勝ち」と認定される事を自覚して居る様だ。選挙に通じて居る現職閣僚は「大きな票田はセンターライトに在る」と断言する。
来夏の参院選戦略では、立民だけで無く自民も、過つて小池知事が掴み掛けた「改革保守」を指向する有権者への対策を迫られる。
既に胎動は在る。立民の若手有志が11月8日に提出した代表選(30日投開票)に関する要望は「保守・リベラルを包摂する政党と為ら無ければ為ら無い」と盛り込んだ。「改革中道」を訴えて議席を伸ばした国民民主党の玉木雄一郎代表は立民との共闘の枠組みと距離を置き、維新との接点を探って改革保守票を狙う。
「ポスト枝野」は、改革保守票と野党共闘を如何接合させて行くかが問われる。岸田政権の参院選対策は、こうした野党に劣ら無い改革保守票対策が鍵を握る「戦いに勝つは易し、勝ちを守るは難し」コレも野村監督の言葉だ。
〜管理人のひとこと〜
今回の選挙の特徴として維新の躍進と云われるが、創業者の橋下氏や維新執行部の政治的主体は「反東京(反東京一極)・非自公(非東京支配)」であり、その点で考えれば、自民も公明も他の野党も全てが東京を起点に考えて居る・・・その事への反発で在る。
その意味で、関西以外の日本の何処にでも維新の政治的主張は何の意味も持た無いから、この様な全国的展開の不可能な政党からの広がりは今後も期待出来無い。橋下氏個人の極端な毒舌・大衆受けを狙うパフォーマンスのみであり、何時迄経っても寄席の単なる色物に過ぎ無い。
偶々、考えの根本が保守的だったので安倍晋三の興味に止り、お友達や加計やオリックスに電通・吉本・パソナ等の半政商的な企業以外は何ら政治的恩恵は被ら無い。大阪のマスコミは橋下氏の成功談を殊更持ち上げ大阪の地盤再興を図るが、中央政治の恩恵を今後も得られるかは判ら無い。偏ったマスコミの取り上げ方ひとつで民意は変化する。これは今の世でも変わら無い不幸な現実だろう。