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2021年11月05日
立憲民主党は 何故若者の支持を得られ無かったのか?
立憲民主党は 何故若者の支持を得られ無かったのか?
室橋祐貴 日本若者協議会代表理事 11/4(木) 13:57
写真 Motoo Naka/アフロ 11-5-1
若者からの支持を集められ無い立憲民主党
衆院選での惨敗を受けて、立憲民主党の枝野幸男代表が辞任する事が決まった。この4年間、改めて振り返ってみると、若者からの支持は一向に得られ無かった。一方、2014年の衆院選以降、若者は自民党を支持する様に為って居り、安定して勝ち続けて居る一因にも為って居る。
諸外国のどの国を見ても、野党の方が若者から支持を得るのが一般的だが、何故立憲民主党は若者からの支持を得られ無かったのか。細かい理由を挙げればキリが無いが、大きくは下記の点が挙げられる。
・若者の政策ニーズとのズレ
・怒りっポイ人を嫌う風潮
・旧民主党と変わら無い布陣
・コア支持者ばかりを見て居る
夫々詳細を見て行こう。
若者の政策ニーズとのズレ
先ず此方が決定的では在るが、若者が求めて居る政策を掲げて居ない(一部方向性は合致して居ても実現性が低い)初期から立憲民主党を支えて居る60代以上の高齢者に目を配って居り、ソモソモ本気で若者からの支持を得る気が在るのかさえ不明ではあるが、基本的には高齢者向きの政策が多い。
これ迄の国会活動を見ても、将来的な持続可能性を高める年金制度改革・現役世代の負担を軽減する後期高齢者の医療費負担増に反対したのが典型例で在るが、一方で、労働組合の要求をそのママ飲み、国家公務員の定年年齢の引き上げを推進して居る。
しかし、国家公務員の平均年齢は年々上がって居り、人事制度改革無しに定年年齢の引き上げノミを実施すれば、若手への負担は重く為る一方で在り更なる官僚離れを引き起こす可能性が高い。
勿論、ジェンダー等、若者が期待する政策を推進して居ない訳では無い。が、多くの有権者が求めて居るのは経済政策であり、飽く迄ソコがセンターピンに来るべきだ。
後述する様に、小選挙区制に於いては、自民党を消極的に支持して居る〔中道右派〕も含めて支持を獲得し無ければ為ら無いが、特に近年の立憲民主党は全体的に〔左に寄り過ぎ〕て居り、中道左派でサエ支持出来無い状況に為って居る。
一方の自民党は、中道左派の支持を集める為に寧ろウイングを広げて居り、企業経営者が嫌がる様なリベラル政策も実施して居る(最低賃金の引き上げ・長時間労働への規制強化・厚生年金の適用拡大等)若者が如何云う政策を重視して居るかは、今回の衆院選の出口調査を見ても判る。
出典 日テレNEWS 11-5-2
10代を筆頭に若い世代程「ジェンダー平等の推進」を求める傾向に在るが、それでも「外交・安全保障」より低い。
「成長」か「分配」か
そして肝心の経済政策が余りに酷い。今回の衆院選に於いて立憲民主党は「所得を再分配し『1億総中流社会』を取り戻す」(枝野代表)として、その財源を法人税の累進税率の導入・金融所得課税の引き上げを求める一方、年収1000万円程度迄の個人の所得税を時限的に実質免除・低所得者に年額12万円の現金給付・時限的に消費税率5%の引き下げを掲げて居た。
経済に悪影響を与える社会主義政策を掲げる一方、保守的な減税も掲げる。全方面に好い顔をしようとして、一貫性の無い余りにも安直な政策に為って居る。
これ等の政策を見て、社民党・日本共産党と見分けが着く人が何処迄居るのだろうか。それ位左に寄って居る。コア支持者は、自分達が「正しい」と考え、何故伝わら無かったのか、有権者は「愚か」と考えて居る風潮が強いが、先ずは自分達が支持されて居ない純然たる事実を重く受け止め、本当に正しい政策を掲げて居たのか自省すべきで在る。
また「成長」か「分配」かと云うのが一つ争点と為って居たが、日本経済新聞の世論調査に依ると、世代間に依って意見は分かれて居り、若年層程「成長」を優先して欲しいと考えて居る。世代別に観ると18〜39歳は「成長」が59%で「分配」の31%より多かった。年齢が上がる程「分配」支持が増え60歳以上では逆転した。
出典 日本経済新聞「優先すべきは成長47%、分配は38% 岸田政権の経済政策」
60代以上は「分配」支持と云う正に立憲民主党の支持層と重なるが、若者からすれば、日本が持続的に成長する事が重要で在り、ソモソモ此処20〜30年間 日本は低成長が続いて居る。しかも、高齢世代の医療費負担を支える為に現役世代の社会保険料は増え続けて居り、既に現役世代から高齢世代への再分配は進み、可処分所得は下がる一方と為って居る。
勿論、格差が大きく米国の様に富裕層が多くの資産を占めて居る国で在れば(米国では上位1%世帯の資産が全体の40%を占める、日本はドイツ、フランス等よりも少なく12%)再分配強化に依って消費が増え成長も実現する可能性は在るが、日本の問題は、全体的に収入が減り中間層が没落して居る事であり、全体の底上げ・パイの拡大が求められる。
そして所得格差(再分配所得後のジニ係数)自体も2010年代から縮小傾向に在り、特に高齢世代で大きく改善して居る。
出典 独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員 井上 誠一郎 11-5-3
こうした実態を踏まえれば、重要なのは全体を底上げする為の成長施策で在り、再分配をするにしても、職業訓練等の投資性の高いものにすべきである。又「子供・子育て予算倍増」と云うものも掲げて居たが、予算を増やす事自体は必要で在り重要だが、実現性は非常に乏しい。
確かに、日本政府の家族関係政府支出(対GDP比)が、欧州に比べると半分程度で在り、将来的に欧州と同じ水準にする事を目指すべきだが、予算額で考えると令和元年度で9.6兆円程度で在る。(「家族」項目 児童手当・児童扶養手当・施設等給付・育児・介護休業給付等)
倍増と云う事は、同額の予算を増やす事に為るが、恒常的に如何確保する積りなのか。こうした「詰めの甘さ」が山の様に在り、掲げて居る公約に期待する事さえ難しい。
比例代表制で在れば、ジェンダー等個別テーマに重点を置くのもアリであるが、日本は現行、小選挙区制を軸にした制度で在る。改めて、国民の大多数で在る労働者の為の政党で在る事を再認識した方が良いのではないだろうか。現状は、現役世代から支持を得られて居ないのを見ても、労働者の為の政党には為れて居ない。
怒りっポイ人を嫌う風潮
こうした公約の弱さに加え、日々の国会活動に於いても若者の共感を得て居ない。近年「皆仲良し」で意見の対立を避ける事が好い事だと云う考えが若年層に於いて広がって居り、その考えが政治的な意見の対立を忌避する考えに繋がって居る、と云う指摘が一部専門家からされて居るが(玉川透 2020「強権に『いいね!』を押す若者たち」)対立自体と云うより、生産性の低い不毛な遣り取りに対して忌避感が強い様に感じる。
また、ハラスメントの様に、高圧的な態度を取る人への苦手意識も強いのでは無いだろうか。それは、若年層程高い「政治家・国会に対する不信感」と云う調査結果とも合致するし、何より、今回その象徴的な存在で在った立憲民主党の辻元清美氏や一部公開パワハラと批判されて居た「野党合同ヒアリング」の中心メンバーの黒岩宇洋氏や今井雅人氏等が落選し「対立よりも解決」を掲げた国民民主党が議席を伸ばしたのもその証左では無いだろうか。
実態は兎も角「野党の野は野次の野」こう云う風に見られて居る時点で、支持を集めるのは難しい。「野党の野って、野次の野じゃないんですか? 野次を飛ばす事に自分達の命を賭けて居ると云うか、全うしてる? 野次を飛ばす事が仕事みたいなんやから言ってるんかな?」出典 渋谷凪咲「野党の野は野次の野」「野次を飛ばすことが仕事」と独自解説
又立憲民主党は「抵抗勢力」と見られて居り「自民党こそリベラルで革新的」と云う見方が若い世代では広がって居る。関連記事:「自民党こそリベラルで革新的」 20代の「保守・リベラル」観はコンなに変わって来ている(室橋祐貴)
立憲民主党は、日本共産党・社民党と一緒に、憲法論議にさえ反対して居るが、若者は議論を求めて居る。改憲国民投票に賛成、18〜29歳は7割 若年層ほど高く(日経世論調査)その憲法審査会長を務めて居た立憲民主党・山花郁夫氏も今回落選して居る。
旧民主党と変わら無い布陣
そして、特に30代を中心に、民主党政権時代に経験した就職氷河期や不景気、外交の混乱等のマイナスイメージが根強く残って居り、二度と期待したく無いと云う思いは強い。 その執行部(官房長官)で在った枝野代表を初め、未だに幹部に民主党政権を想起させるメンバーが数多くおり、それ以降に当選した若手が登用されて居ない。
寧ろ、小泉進次郎氏・小林史明氏・村井英樹氏等、自民党の若手メンバーの方が活躍して居り、最近では牧島かれん氏・小林鷹之氏が閣僚入りする等、若手の登用は自民党の方が進んでいる印象すら在る。
コア支持者ばかりを見て居る
最後に、上記全ての根底に在るのが、見て居る対象で在る。一言で言うと、高齢者含め、ツイッター上に居るコア支持者を見過ぎだ。小選挙区制に於いては、有権者の過半数を取ら無ければ為ら無い為、本来は自分達のコア支持者を横目に見ながらも、中道の位置に居無ければ為ら無い。
ソモソモ国会議員は、支持者の代表では無く国民の代表で在る・・・と云う前提も在るが、選挙戦略的にも、前回対立候補に投票した層からも支持を得無ければ勝て無い。しかし上述した様に、近年の立憲民主党はコア支持者を中心に見据えて居り、余りに左に寄り過ぎて居る。それでは、自民党を支持して居る中道右派は愚か中道左派からも支持され無い。
本来は、支持母体の労働組合も嫌がる様な中道右派的な政策(解雇規制の緩和等)も実現し無ければ為ら無いが、最早連合にさえ左に寄り過ぎと言われる始末で在る。その原因は、ツイッターが大きいのではないかと考えて居る。
ツイッターでハッシュタグデモと云うのが一時期流行った様に(今も?)、ネット上で盛り上がって居るのを見ると、有権者全体がそうかの様に勘違いして仕舞い易い。しかし、フィルターバブルと云う言葉も在る様に、SNS上は「絶対に」バイアスが懸かって居る。そして、そのツイッター上に居るコア支持者の支持を集め様とすればする程、国民全体からは離れて行く。
ツイッター上では「野党共闘」の継続を求める声が一部支持者から上がって居るが、国民全体への世論調査では「見直した方が好い」が61.5%、「続けた方が好い」は32.2%で在る。
国民全体を見る為には、ツイッターやオンライン上で「動員」ばかりを期待するのでは無く、各地域で様々な階層を集めて「タウンミーティング」を行う、戸別訪問を行う、そうした草の根の活動をモッと展開すべきである。
もっと言えば、2015年から始まった安保法制への反対運動、SEALDs的な表面ばかりの新しさ(本質は1960年安保闘争と変わら無い)に目を向けるのでは無く、学術的な知見の活用、新しい市民運動の展開(「コミュニティ・オーガナイジング」「リーダフルな運動」)等、本質的に政治活動をアップデートすべきである。
で無ければ、今後も若者の支持は集められず、新・55年体制の様に為って行く流れは止められ無い。只それでは、労働者を代表する政党の存在感が下がるばかりであり、若者が最も重視する働く環境の大きな改善が見込め無い。今回の代表選を通して、新しく生まれ変わることを期待したい。
室橋祐貴 日本若者協議会代表理事
988年 神奈川県生まれ 若者の声を政策に反映させる「日本若者協議会」代表理事 専門・関心領域は政策決定過程、社会保障、財政、労働政策、若者の政治参画など yukimurohashi0@gmail.com
〜管理人のひとこと〜
保守・若者に近い年代の人達から見れば、この室橋祐貴氏のご意見は最もなものかも知れ 無い。現実に立民は議席を減らし保守に近い維新や国民は伸ばした結果と為った。立民のコア層が支持してもそれより右側の中道層には受け入れられ無かったのだ。
若者の動向に敏感でその志向を研究されて居る室橋祐貴氏の解説は正しいのだろう。確かに大衆生活者・労働者を代表する立民としては、多くの支持層を食い止め伸ばす事が出来なかった。特に20代から40代の人達は保守陣営へと離れて行った様だ。
恐らく、立民の代表選挙を受けてのレポートで在ろうし、或る意味立民の再起を願うエールなのだろうが、関係者はこのレポートを吟味し解党的な新たな執行部を選択出来るか・・・大いに期待したいのだが・・・最後で最大のチャンスを逃した執行部の責任は余りにも大きかった。