2021年09月23日
直近の ロシアの政治と中国の経済に関して
直近の ロシアの政治と中国の経済に関して
その1) ロシアの政治「荒唐無稽な野党よりもプーチンの方がマシ」
不人気なロシア与党が 総選挙で圧勝した根本理由
9/22(水) 12:16配信 9-22-3
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領 2021年9月20日 ロシア・モスクワ郊外ノボオガリョボ 写真EPA時事通信フォト 9-22-4
■結局は過半数を大きく超えた〔与党・統一ロシア〕
ロシアで9月17〜19日に掛けて5年振りと為る総選挙が行われた。定数450議席の内半分を小選挙区制で、残り半分を比例代表制で選出する形式で行われた今回の総選挙では、プーチン大統領が率いる〔与党・統一ロシア〕の劣勢が支持率調査から明らかで在り、前回得た343議席をどれだけ守る事が出来るかが大きな争点と為った。
即日開票の結果〔与党統一ロシア〕は前回から19議席を減らして324議席の獲得に留まったが、過半数で在る226議席を引き続き大幅に上回り第1党を維持した。元々ロシアの現在の選挙制度は〔与党・統一ロシア〕に有利に設計されて居り、同党は指標が多い小選挙区で225議席中198議席を得て圧倒的な強さを見せ着けた。
反体制派は当然、今回の選挙結果に関しても不正を主張し、総選挙の遣り直しを求める等シュプレヒコールを上げるだろう。欧米社会も厳しい態度を堅持する筈だが、一方で混乱を極めるアフガニスタン情勢ではロシアの協力が不可欠な事等から、選挙不正を理由に経済制裁の強化を加える様な事は当面無いと予想される。
今回の総選挙は、2024年に予定されて居る大統領選の事実上の〔試金石〕で在った。2020年の憲法改正に依ってプーチン大統領は次期の大統領選にも出馬出来る様に為ったが、プーチン大統領は後継者にその座を譲り、自らは統一ロシアの党首や下院議長に転じる等して実質的な〔院政〕を敷くと云う見方が有力視されて居る。
■根強い有権者のプーチン大統領に対する支持
プーチン大統領に対する有権者の支持には根強いものが在る。世論調査機関で在るレバダセンターの調査に依ると、プーチン大統領に対する有権者の支持率は2021年8月時点で61%と引き続き過半を維持して居る。大統領の支持者の多くが、旧ソ連末期からのロシアの社会・経済の混乱を経験した中高年齢層とされる。
今年12月で、旧ソ連が崩壊して30年を迎える事に為る。最初の10年間、ロシア経済は極度に混乱し、最悪期には実質GDPがソ連崩壊時の6割程度迄縮小した。自殺率や犯罪率も上昇する等社会も非常に混乱したが、2000年に就任したプーチン大統領が原油高を追い風にロシア経済を急速に立て直し、社会を安定に導いた。過去の経済・社会の混乱を経験して居る世代程、プーチン大統領に対する支持は根強い。
他方で、そうした時代を知ら無い〔改革派〕の世代も着実に増えて居る。彼等に取って安定は停滞で在り閉塞(へいそく)でも在る。2021年2月に収監された反体制指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は、そうした改革派に取ってシンボル的な存在だ。
今年に入ってからも、ロシアでは首都モスクワ等で改革派を中心とする反政府デモが散発的に行われて居る。そうした改革派の声も反映されて居るのだろう、8月時点のプーチン大統領への不支持率は37%と近年で最も高い水準と為った。この様に反体制派が勢いを強めて居る事を、プーチン政権も実際の処警戒して居る。
■一筋縄では行か無いロシアの国民感情
近年、欧米からの経済制裁や原油安を受けてロシア景気は停滞が顕著で在った。それに追い打ちを掛けたのが、2020年春に生じたコロナショックだった。その後も、感染に歯止めが掛から無い事や行動制限を課される事等に依って有権者の不満が増幅されて居た。そうした中で、プーチン政権は今回の総選挙を迎えた事に為る。
しかしながら、総選挙で〔与党・統一ロシア〕が失った議席は限定的で在った。選挙不正の可能性も取り沙汰されて居るが、ソモソモ選挙制度が〔与党・統一ロシア〕に有利で在る事、統一ロシア以外の政党が成熟して居ない事、結局の処プーチン政権に信頼を寄せる有権者が多い事が、今回の総選挙の結果に繋がったと整理出来るだろう。
勿論、統一ロシアに票を入れ無かったプーチン大統領の支持者も少なからず存在した筈だ。近年、ロシアの社会は確かに安定して居るが、一方で景気の低迷で所得が増え無いばかりか、日々の消費の為に借り入れを増やした家計も少なく無い。それに、コロナ禍で生活は苦しく為った。大統領の支持者でも不満は募っただろう。
それに旧ソ連崩壊に伴う混乱を経験して居ない若い世代程、プーチン体制に対して強い不満を抱えて居る事も又確かで在る。とは云え〔統一ロシア〕はそれ程議席を減らさ無かった。この結果は一筋縄ではいか無いロシア国民の複雑な有権者の思いを反映して居るが、これでプーチン体制が盤石かと言われるとそうは問屋が卸さ無い。
歴史を振り返ると、人々の不満が臨界点を超えた時に、ロシアでは大きな政治変動が起きて来た。帝政ロシアも旧ソ連も、革命と云う形で自壊して来た訳だ。自らの体制が同じ轍(てつ)を踏ま無い為には如何したら好いか。旧ソ連の秘密警察KGBの職員としてソ連崩壊を目の当たりにしたプーチン大統領が考えて居ない筈は無い。
■改めて明らかと為った長期政権の引き際の困難さ
プーチン大統領は今年10月で69歳。未だ若いとも言えるが、相応(そうおう)に高齢でも在る。一方で、プーチン大統領は後継の指導者候補を育成する事には成功して居ない。それに、旧ソ連崩壊の混乱を知ら無い若い世代は着実に増えて居る。今回の総選挙を無事に乗り越えても、権力を禅譲する迄のハードルは依然として高いと言えそうだ。
こうした問題は、権威主義体制に特有では無いのかも知れ無い。民主主義体制でも、長期安定政権の後には権力のバトンタッチが上手く行か無いものだ。月末に控えたドイツ総選挙では、4期16年の長期政権を率いたメルケル首相が引退する予定で在るものの、与党・キリスト教民主同盟(CDU)は大敗を余儀無くされる見通しで在る。
とは云え有権者の多くは、ドラスティックな変化を望んで居る訳では無い。寧ろCDUを大連立のパートナーとして支えた社会民主党(SPD)に、メルケル首相と同じ路線の継続を望んで居る。一見するとアンビバレントな現象だが、これもメルケル首相が後継のリーダーの育成に失敗した結果で在り、ドイツ政治の混迷を好く示して居る。
日本でも又、長期安定政権を率いた安倍前首相が退いた後、菅首相が1年で退任を余儀無くされる等、政治は揺れて居る。任期満了に伴う総選挙が11月にも予定されて居るが、日本にも変化を望む革新的な民意が在る一方で、安定を望む保守的な民意も存在する。両者の相克の末に、総選挙はどの様な結果に落ち着くのだろうか。
有権者の多くが消去法的な理由から現状維持を望んで居ると云う点では、ロシアもドイツも、そして日本も共通して居るのではないだろうか。
それは有権者が保守化して居ると云うよりも、有権者の関心を引こうとするが余りに野党勢力の主張が荒唐無稽なものに為って居る事が生み出した現象で在ると言えるのかも知れ無い。
土田 陽介(つちだ・ようすけ) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員 1981年生まれ 2005年一橋大学経済学部 06年同大学院経済学研究科修了 浜銀総合研究所を経て 12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社 現在調査部にて欧州経済の分析を担当
文章 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員 土田 陽介
その2) 中国経済 恒大集団が破綻寸前・・・
最悪の場合「中国の不動産バブル崩壊」に繋がるワケ
9/22(水) 13:00配信 9-22-7
中国恒大集団が破綻した場合、市場にはどの程度の影響が及ぶだろうか?(写真アフロ)9-22-8
中国の不動産大手、中国恒大集団が破綻の危機に瀕して居る。一部からは中国発のリーマンショックを危惧する声も聞かれるが、仮に同社が破綻した場合、市場にはどの程度の影響が及ぶだろうか。
●日本企業とは規模がまるで異なる
恒大は中国の不動産最大手の1社で、住宅やマンションの開発を手がける典型的なデベロッパーである。積極経営で知られて居り、近年はサッカークラブ経営等不動産開発以外のビジネスも手掛けて居る。恒大は1996年創業の比較的新しい企業では在るが、日本で言えば三菱地所・三井不動産・住友不動産の様な位置付けと考えて良い。
只中国の場合、日本と比較するとGDP(国内総生産)の規模が大きい為、同じ大手と言っても企業規模は日本よりも遥かに大きい。同社の2020年12月時点に於ける総資産額は約39兆円・売上高は8.6兆円と為って居る。
日本に於ける売上高トップの三井不動産は総資産が7兆円・売上高は約2兆円なので、4〜5倍の規模が在る。
同社に限らず、中国の不動産会社は近年の高成長に歩調を合わせて急成長して居る事から借入れへ依存度が高い。恒大の総負債額は33兆円を超えて居り自己資本比率は15%で在る。三井不動産の自己資本比率は33%なので、両社を比較すれば恒大のリスクが大きい事は明らかである。他の大手不動産企業も日本や欧米と比較すると自己資本が薄く、全般として脆弱な体質で在る事は間違い無い。
最も三井不動産も、経済成長率が高かった1960年代は借入れ依存度が高く、自己資本比率は20%を切って居たので、中国企業の現状がそのママ危険と云う事には為ら無い。只恒大の場合、各社の中でも財務体質が特に弱いと指摘されて居り、中国政府が昨年示した財務改善の指標(資産に対する負債の比率、資本と負債の比率、有利子負債と現預金の比率など)を満たす事が出来無かった。
加えて中国政府は不動産バブルを抑制する為、銀行に対して不動産企業への融資上限を設定する様求めて居り、不動産企業の資金調達環境が悪化して居る。この為特に同社に対する破綻懸念が高まって居る状況だ。
不動産に対する融資制限や取引規制の実施は下手をするとバブル崩壊の引き金を引く可能性が在る。
1980年代に発生した日本の不動産バブルでは、政府による土地の総量規制がバブル崩壊の切っ掛けと為った。中国政府は日本のバブル経済を詳しく研究して居り、日本の様な形に為らずにバブルを処理しようと懸命に為って居る。
数年前から当局は有形無形で不動産市場の引き締めを行って居るが、市場の過熱が著しく余り効果を上げる事が出来無かった。今回は強めの引き締め策を実施して居り、これに依って何とかソフトランディングしたいと云うのが中国政府の本音だろう。
●基本的には中国国内の問題だが・・・
今回の経営破綻懸念が中国経済に及ぼす影響に付いては、同社がどの様な形で資金繰りの目処を付けるのか(或いは付けられずに破綻するのか)に依って変わって来る。同社の株価は、1年前には20香港ドル近い水準だったが、今年に入ってから下落が続いて居り、現時点では約2ドルと為って居る。1年で10分の1の水準だが、現時点では100%破綻を織り込んだ金額には為って居ない。
先程も説明した様に負債額は33兆円と極めて大きいが、低金利で資金を調達出来て居るので年間の利払い額は1,000億円以下に留まって居る。今月には相次いで社債の利払い期限を迎えるが、これに付いて同社は、利払いを実施すると表明して居る。
目下最大のリスクは社債の償還で在る。同社が抱える有利子負債は約10兆円(6月時点)だが、この内約40%が1年以内に償還期限を迎えるとされる。社債の償還は金額が大きいので、償還資金の目処が付か無く為ると破綻に向けて一直線と為ってしまう。この場合には不動産市場全般への影響は避けられ無い。
●最悪の事態を回避する方法とは?
同社では、保有する実物不動産を用いて現物償還すると云った方法を提案して居るが、債権者が納得するのかは現時点では不明だ。最も中国市場は意外と柔軟なので、債権者も社債等が紙くずに為る可能性を考えた場合、実物不動産を確保した方が良いと考える事は十分に在るだろう。
仮に実物不動産による償還の目処が立てば最悪の事態は回避出来るかも知れ無い。加えて中国市場はグローバル化が進んで居ない事から、中国企業の多くは国内の銀行や投資家から資金を調達して居る。
債権者の多くは国内なので、仮に恒大が破綻して他の不動産会社に波及する様な事が在っても、グローバル市場が直接、大きな影響を受けるとは考え難い。詰まり、今回の破綻懸念は基本的に中国の国内問題と考えて好く、中国のバブル崩壊に付いて日本側が過度に懸念する必要は無い。
只恒大が現実に破綻し、他の企業にも影響が及ぶ事に為れば、中国の国内消費が一気に冷え込む可能性は高く、中国の消費市場をアテにして居る日本企業に取っては厳しい展開と為るかも知れ無い。
●不動産バブルが崩壊したら・・・中国政府はどう対応するのか?
仮に中国の不動産バブルが崩壊した場合、金融市場にはそれ為りの影響が及ぶと考えられるが、中国はどの様に対応する積りなのだろうか。
現時点に於いて中国政府はハードランディングと云う形で不動産バブルを処理する意向は無いと言われる。元々中国市場は透明性が低く、中国国内から見てもそれは同様で在り、政権幹部ですら中国の不動産市場や金融市場の全貌を把握するのは難しいと言われる。
欧米各国の場合、市場の透明性が確保され無い事は不安心理を増大させる要因と為る為、犠牲を払っても全ての不良債権を顕在化させた方が中長期的にはダメージが少ないと云う考え方が在る。だが、中国の場合、元々投資家や債権者は欧米各国の様な透明性を求めて居らず、不良債権を全て明らかにする事に付いても、それ程大きなメリットは無い。
加えて、中国経済に於ける最大の懸念材料だった銀行以外のルートを経由した資金の貸付け(所謂シャドーバンキング)は規模が大幅に縮小して居る。背景には当局に依る非公式の指導が影響して居ると考えられ、融資の多くは見え無い形では無く、銀行に依る公式な貸付けにシフトして居る状況だ。
仮に融資の多くを銀行にシフト出来れば、当局に依る管理は容易に為るだろう。中国当局としては、破綻させる企業は破綻させるものの、金融システム全体に影響が及ば無い様、金融機関に対する支援を強化すると云うシナリオを想定して居ると考えられる。
最も避けたいのは、あらゆる金融機関が大量の不良債権を抱え、その後の経済再生に大きな支障を来した日本のパターンで在る。その点に於いては、恒大が破綻するのかどうかと云う事よりも、それに伴って中国当局が金融機関に対してどの様なスタンスで望むのかと云う部分がより重要と為る。
現時点では、同社の破綻懸念が最も大きな関心事だが、マクロ的に見た場合、今回の一件は、中国が本格的にバブル処理に乗り出す入り口と考えた方が良いだろう。
経済評論家 加谷珪一 9-23-1
1969年宮城県仙台市生まれ 東北大学工学部原子核工学科卒業後 日経BP社に記者として入社 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ企業評価や投資業務を担当 独立後は中央省庁や政府系金融機関等対するコンサルティング業務に従事 現在は経済・金融・ビジネス・IT等多方面の分野で執筆活動を行って居る
著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書) 『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング) 『感じる経済学』(SBクリエイティブ) 『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス) 『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)等が在る
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〜管理人のひとこと〜
コロナ下の昨今、海外の普通の日常風景の様子が余り届いて居ない感じがする。困難な状況下そんな事に興味が向か無い事もあるが、海外ニュースと云えば全てアフガニスタンの混乱の様子に塗り潰されてしまった様だ。そんな中、ロシアの選挙と中国の経済の問題を取り上げた。
巨大な中国経済の中で一つの陰り・・・として中国・恒大集団の信用不安で我が国の株式も売られ600円の値下がりと為った。中国の経済も刻々と変化し、以前は金融機関以外からの資金が大量に市場に出回って居た〔地下銀行〕が大幅に縮小されて居るとの事で透明性が高く為ってる様だ。コロナ下で世界経済が急激に縮小されて居る中、唯一元気な中国に経済不安が発生すると、この様に世界へと飛び火する。中国の動向がより以上敏感に作用する。
そして、ロシアのプーチン大統領で在る。彼の次の人材が育って居ないとの事だが、それは世界に共通する様で、次の人材が定まって居ない国が多い。しかし、この状況は、既定路線から外れる新たな勢力が生まれる事でも在り変化をもたらす結果とも為る。それにしても何時迄燻って居るのか、私にはロシアの近況が理解出来ない。それはロシアからのニュースが極端に少ない事にも在るのでは無かろうか・・・
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