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2021年03月12日

和中清の日中論壇   その3



 和中清の日中論壇   その3

 中国は覇権主義国なのか?

 唐突で怪し気な新疆の強制収容報道

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 次に新疆での強制収容について考える。この3年程新疆の情勢は安定して居る。2018年の新疆の地区生産額は前年比6.1%の増加であるが第三次産業は8%増加し全国平均より高い。2018年の中国訪問外国人の増加率は4.7%だったが情勢の安定で新疆訪問の外国人観光客は28%増加して居る。
 筆者も昨年、一昨年と新疆を訪れたが奥地に迄多くの観光客が見られ、緊迫した様子は見られ無かった。どうして、今唐突に、米国や日本で100万人とか200万人の強制収容の報道がされたのか、米国議会で「ウイグル人権政策法案」が可決されたのか不思議な思いをしている。
 
 米国は、ファーウェイが国際貨物サービスのフェデックスに託した貨物を監視させて居る。その結果、ファーウェイが米国外に送った貨物も一旦米国に送られる等の被害が出て、今ファーウェイ社内では国際エクスプレス便の使用を禁止して居る。米国は今、為り振り構わず理不尽なファーウェイ潰しに走っている。
 新疆の強制収容問題も中国の台頭への米国の苛立ちによる中国叩きの一環である。中国を「悪の国家」に陥れ、貿易戦争や電子通信産業で米国が有利に建つ為の工作の一環でもある。

 ウイグル人強制収容の日本での報道の殆どが「100万人から200万人が強制収容されたと見られる」と云う報道の仕方である。NHKの報道でも100万人と「見られる」と云う報道だった。果たして誰が「見た」のだろうか。
 筆者はその報道姿勢に疑問を持つ。100万人を超える人口は仙台市の人口に近い。何処に収容出来るのか。事実ならその場所も情報の出処も明確にすべきだ。米国発の根拠不明の情報を咀嚼せず報道して居るなら、メディアの姿勢を疑う。

 新疆の「職業技能教育センター」設置の経緯


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 新疆では1990年〜2016年迄に無差別テロが頻発し、中国内情報では数千件に及び、多数の一般人と公安関係者が犠牲に為った。一般人を狙った生々しいテロ現場の複数の映像も公開された。テロは「東トルキスタンイスラム運動」(ETM)と繋がり多くのウイグル族犠牲者も出た。ETMは東トルキスタン建国を目指しタリバンやアルカイダと繋がる武装テロ組織で2011年に新疆の喀什カシュガルや和田ホータン市での無差別テロにも関与した。
 過激イスラム主義の無差別テロには新疆イスラム協会やウイグル族住民も反発して居る。彼等は「新疆問題は民族、宗教、人権問題で無く民族を分断させるテロの問題」と語る。

 長年、新疆住民はテロによる命の危険に晒され緊張と恐怖の中で生活した。ETMはウイグル族のモスク礼拝すら「異教徒」と見なして「聖戦殉教天国」思想でのテロ組織参加や子供を学校に通わせ無い事まで強要した。
 長年の恐怖を受けて「職業技能教育訓練センター」が新疆の各地に設置された。センターは寄宿制で無料。休暇を取り家に帰る事も出来る。日常の家族や外部との通信も遮断されて居ない。

 「職業技能教育訓練センター」には海外数十カ国からも施設見学に訪れて居る。特に中東や中央アジアの国が多い。国連関係者の訪問も受け入れ、現地を見たイスラム圏の国々は中国のウイグル族への対応や教育訓練センターを高く評価している。
 主な教育対象者は軽微な犯罪、違法行為をした人で言語(漢語)教育や文化知識、法律知識、職業技能教育を中心に教育が行われた。とても100万人とか200万人に為る数で無い。
 
 漢語教育と言えば、日本では文化まで漢族習慣に変えようとして居ると捉える人も多い。しかしそれは違う。中国では少数民族の文化、言語、習慣は尊重されて居る。漢語教育を行うのは就職や仕事の為である。新疆、又その中でもウイグル族が多い和田や阿克蘇アクス地域の教育が特に遅れて居る訳でも無い。人口に対する高校生の比率は新疆全体で2.2%、阿克蘇は2%で、広東省の0.9%・山東省の1.6%・四川省の1.7%等と比べても寧ろ高い。

 中等職業学校在校生も他に比べ多い傾向がある。だが、後に述べる様に和田や阿克蘇は新疆の中でも経済的には恵まれ無い地域である。ウイグル族には貧しさ故教育を受けられ無かった人も多い。言葉の障害で職にも着けず、それが貧困やテロ組織への参加に繋がる。
 新疆では旅行関係の仕事が拡大して居るが、新疆を訪れる旅行者の言葉は漢語や英語である。漢語での日常会話は就職、仕事の為に必要である。

 100万人から200万人の強制収容はデマ

 「100万人から200万人の強制収容、監禁、暴力」はデマである。過激テロ犯の収容と教育訓練センターの二つを意図的に結び着けてデマ情報が流されている。1958年のチベットラサの反乱での米情報機関の情報操作と同じことが今も新疆に関して行われている。米国人権団体の情報を咀嚼せず100万人や200万人と報道する日本のメディアの姿勢にも問題がある。

 或る日本の新聞の社説に「今春、日本は中国の習近平国家主席を国賓として招く。だが、中国政府は、国内の800万人と云うウイグル族の内、80万〜200万人以上を拘束し、拷問、虐待して居る等の報道が相次ぎ、国際的な批判が広がって居る」と書かれた。この様な報道が米国人権団体や情報機関の情報操作に協力する結果に為って居る。
 ウイグル族は新疆だけで1,100万人を超える「80万人と200万人」と云う数字の差は広島の人口と同じである。メディアは数字の扱いに慎重であるべきで、120万人も差のあるアヤフヤナ数字を軽率に報道すべきで無い。

 その数が事実なら新疆財政に取って大変な負担である。1人に年間3万元が必要なら200万人で600億元、日本円で1兆円に近い。更に施設の建設費・維持費も多大である。そんな報道が「飛んでも無い情報」を拡散させる。
 情報の受け手もその数を不思議に思わ無ければ為ら無いが、そこに中国情報の問題がある。多くの人が「中国だから」と信じ込む。

 5年程前「中国共産党が沖縄で独立運動をしている」との噂が全国に拡散した。筆者にも知人から「中国共産党が独立運動をして居るのをご存知ですか」との問い掛けがあった。筆者は一笑に付したが、信じた人も多く「実は沖縄では・・・」と云う話が事実の様に拡散した。真実は右翼が中国共産党友の会を名乗り、成り済ましの街宣活動をして居た。
 新疆の強制収容人数もその類のデマである。過激テロ犯の取り扱いが中国でどうされて居るかは筆者には判ら無いが、米国は海外で過激テロ犯を問答無用で殺戮する事もある。新疆の民族別の人口比率は次のグラフの様に為って居る。

 2010年の第六次人口調査では新疆の15歳〜64歳の人口比率は73%で、内女性の割合は48.4%である。その比率を2015年の新疆のウイグル族人口1,130万人に当て嵌めるとウイグル族の15歳〜64歳の男性人口は426万人に為る。
 更に省都の烏魯木斉ウルムチ、観光地の伊犁哈薩克イリカザクや北部の阿勒泰アルタイ等は、情勢が安定した地域なのでそれ等の地域を除き、テロリスクが高いと思われる和田、阿克蘇、喀什、克孜勒蘇柯尓克孜クズルス・キルギス自治州等西方、中央アジアに接する地域のウイグル族の15歳〜64歳人口と為ると332万人に為る。200万人の強制収容が事実なら、これ等の街の働き手の男性は殆ど姿を消し経済に多大な影響を及ぼす。

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 新疆を読むには情報に接する人にも冷静さが必要と思う。

 貧困から抜け出す為に教育は欠かせ無い

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                    砂漠の熱砂地

 新疆は自然豊かな地で観光資源が豊富だ。しかし一方、大部分を作物が育ち難いタリム盆地、タクラマカン砂漠、ジュンガル盆地等の砂漠が占める過酷な自然条件の地である。昨年、筆者はウイグル族が多い吐魯番トルファン市托克遜トクスン県の街に行った。砂漠を抜けて街に入った時、そこで出会った熱風は想像を絶する熱さだった。
 日本では夏に気温が40度に達する所が話題に為るが、その温度が清々しくさえ感じられる熱風が吹き荒れて居た。その翌日、吐魯番中心部に向かった。その日の気温は42度であったが、それが何とも感じ無い程の前日の熱風だった。
 新疆は天山や崑崙山脈、アルタイ山脈の雪山や川、草原の美しい自然に恵まれた地であるが、一方で多くの住民は過酷な自然条件の元で暮らしている。

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 過激なテロ組織に参加する一番の原因は貧困だろう。だからこそ、貧困解消のためアフガニスタンで中村哲医師は自ら灌漑施設をつくり、農業再生活動に取り組んだのだろう。
 新疆で一人当たり地区生産額が最も低い和田地区は烏魯木斉市の15%程で、石油や希少金属資源が採れる北部の克拉瑪依(カラマイ)の8%程に過ぎ無い。
 前回の「日中論壇」 で扶貧への取り組みに付いて述べた。それは自ら継続する収入を得てこそ「貧困脱出」と考える。新疆でも同じだ。過激テロ組織への参加を防ぐ為にも若者の教育や職業訓練は欠かせ無い。

 中国政府はイスラム寺院を取り壊し、宗教行事の制限を加えて居るとのデマも伝わるが、政府は財政面でも多額の資金を投入しインフラや寺院整備も行っている。各省からも新疆助成の資金が投入されている。モスクの浴室や水洗トイレ、浄水器の設置、通信インフラの整備更に経典のウイグル語、漢語、カザフ語への翻訳の助成、又多数の信徒のメッカ巡礼への支援、10カ所のイスラム学院の建設等も行い支援している。
高速道路網やそれに接続する国道も整備され、広大な新疆での移動がとても楽に為って居る。新疆の道路を走れば至る所で検問があるが、その結果治安が改善され観光客も増えた。

 新疆に暮らす或るウイグル族は次の様に語って居る。

 「私達の住む所は昔、日干し煉瓦の家だった。しかしそれが快適に暮らせる家に為った。泥の道がアスファルトに為り、ロバの荷車は電気自動車に為った。昔はダムに貯まった水を飲んだが今は水道水を飲める様に為った」

 テロの防止は武力で無い事はアフガニスタンに介入した米軍の結末と中村哲医師の行動を対比すれば答えが出る。筆者は米議会が可決した「ウイグル人権政策法案」は新疆の固有事情を理解しない米国特有の西洋式民主主義の夢想の押し付けと思う。
 米国は毎年数千人に及ぶ銃社会の犠牲者すら救済出来無い。米国自身の足元で起きている人権蹂躙を解決出来ずに遠い異国に夢を求めて居るのだろう。現地事情を考え無い失敗はイラクやアフガニスタンが証明している。米国は同じことを「ウイグル人権政策法案」で中国に要求して居る。夢想は米国映画の世界だけにして欲しいと思う。

 香港デモ(暴動)は大学生から高校生に移り次第に終息する

 日本のメディアは避けて居るが、筆者は「香港デモ」の言葉の後ろに敢えて(暴動)の言葉を入れる。それは日本のメディアへの皮肉も込めている。フランスやチリでも学生デモが起きて居る。その時、日本の新聞では「暴力的なデモ」「暴徒化したデモ」と云う言葉を使って居る。香港では鉄棒を振り回し爆弾も使われ、コンビニ等の店舗も破壊され、地下鉄等の公共施設も被害を受けた。

 だが日本で流れる映像は警察官が学生を殴る姿ばかりで店や施設が壊されるシーンは殆ど無い。日本のメディアは香港警察のデモ(暴動)取り締まりを批判的に捉えるが、欧米での犯罪者や過激デモへの警察の対応はもっと過激だ。「暴徒」「暴動」の言葉を使用しないメディアの姿勢は中国へのダブルスタンダードである。
 現在、「香港デモ」(暴動)は週末活動に変わった。大学生が卒業や就職を意識し出したからでもある。香港経済界では今後3、4年の大学卒業生は採用出来ないとの声も囁かれている。米国から来てデモを扇動した学生達も帰国した。
 今、活動の主体に為っているのが「高校生」である。警察に検挙されて居るのも高校生が多い。彼等は多分に「デモに行った」と云う時代の波に乗る為に参加して居る。大学生は高校生にタスキを渡したのか、香港で活動する米国人権派団体も梯子を外された感を持って居るだろう。

 過去、日本でも同じことが起きた。50年程前、学生運動で大学が封鎖され、やがてそれは高校に飛び火した。筆者の母校でもその影響で半年間真面に授業が無かった。
 高校生は深い思慮の元で学生運動に参加したのでも無い。時代の波が、地割れが伝わるように大学から高校に飛び火した。

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 香港デモ(暴動)ではNHKも報じた様に多くの香港人が「自由を求めて追い詰められて居る」との報道が目立つ。だが香港程自由な所は少ない。香港の街頭では常に「法輪功」等による中国批判が行われて居る。
選挙で民主派が殆どを占めたと報道されるが、得票率では反対派と大きな差は無い。学生デモへの反対集会も度々行われて居る。

 日本の新聞に掲載された英誌の元編集長は「抗議活動は6カ月もの間続いている(中略)デモに参加し、必要であれば警察に立ち向かう事への決意はより強く為って居る。抗議や大規模デモの参加者数に顕著な減少はみられない」と述べて居る。
 新疆問題と同じ様に現地事情を理解しない一方的意見に思える。香港デモ(暴動)は今後も定期的に行われるだろう。しかし次第に儀式化して終息して行くのではないだろうか。
 
 中国国内では香港学生の行動を批判的に見る人が殆どである。学生の民主化要求は中国には波及しない。逆に国内の結束が強まると考えている。筆者は、一国二制度は中国・香港の双方にとり良い制度と思う。2047年の一国二制度が終了する期限迄未だ27年ある。その間、双方が琴瑟相和(きんしつあいわ)す様に互いの長所を取り入れ融和して行けば中国式民主化は更に進む。
 現在の香港学生の行動はそれをブチ壊す事に為りかね無い。「香港は中国の一部」と云う現実を受け入れて、互いの長所を引き出して融和させて行く事に、若者のエネルギーを使うべきと思う。

 以上、「中国は覇権国か」を述べた。メディアの中国に対するダブルスタンダードと偏見・誤解は一般人の中国観に影響する。筆者は中国の全てが善だとは言わ無い。しかし「覇権主義」や「新疆問題」をテレビや新聞で述べるなら明確な根拠を示し報道すべきと思う。
 先に述べたアンケートでは「日本は中国にODAでアレだけの事をして遣ったのに感謝の気持ちも無い」と言う人も居た。周恩来が戦後処理で日本に対した二つの出来事「戦犯への対応」と「賠償金の支払い」の事実を知って居れば語れる言葉で無い。

 中国の自然や人は好きだが政府は嫌いと語る日本人も居る。だが「中国共産党」が生まれた背景には日本の中国侵略の歴史がある。漢字も儒学も中国から教わった。日本人はもっと中国への謙虚な態度を持つべきではないかと思う。
 筆者には中国が米国政府や多くのメディアにより「覇権国家」に無理に押し込められている様に思える。それは恰もイソップ物語の「北風と太陽」の様だ。北風を受けて中国が自衛と面子の為に「真の覇権」に向かい進む事を危惧する。

 (おわり)


 〜管理人のひとこと〜

 私は敢えて「親中派」を名乗る程の人間では無い。日本やアメリカの報道を我が国の主にTVから受ける際、どうしても嫌中の色合いが強く出てしまう傾向が強い。それで、少しでも中国の真実を知りたいと和中清の日中論壇を参照させて頂いた。
 新疆ウイグル問題・チベット問題・香港デモ・・・と続く一連の中国政府による「弾圧疑惑」も和中清氏の説明ではちゃんと説明が着く。強大な軍国化疑惑も、国民の生産性が急激に上昇した挙句、一人当たりの割合が増えたが、それでもアメリカや日本の比では無い・・・と説明が着く。
 日本のTVで人気者のニュース解説者による説明も、中国側の真相の上辺だけを見ている様だ。決して、和中清氏の言葉全てをそのまま信用しろ・・・とは言わないが、責めて別の側面が存在することは知って頂きたい。   以上















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