2020年04月06日
コロナ危機で後手の政府が招いた混乱と不安
コロナ危機 で後手の政府が招いた混乱と不安
〜東洋経済オンライン 植田 統 :弁護士 名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授4/6(月) 11:16配信〜
植田 統 弁護士 名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授
1世帯に布マスク2枚を配布すると云う〔アベノマスク〕に付いては海外メディアからも批判され、これ迄の政府の対応は後手後手に回って来た。4月3日に政府から発表された1世帯30万円の現金給付案や軽症者に付いての厚労省の対応を見て居ると、コロナ問題の深刻さを過小評価して来たと多くの国民も感じて居るだろう。
東京都では4日・5日と2日連続で100人以上の新型コロナウイルス感染者が確認され、感染経路不明の事例が相次いで居る。都内での感染者は1000人を超えて居る。
事態が深刻化する東京都では明確に緊急事態を想定し、その対応は、政府よりも先を行って居る。政府自民党・安倍晋三首相がこの国難とも呼べる時代にリーダーシップを発揮し迅速な対応を進めないと、医療崩壊が起き、感染者がオーバーシュートした時に対応出来無く為る。
一部報道によれば、安倍首相は〔緊急事態宣言〕に踏み切る意向を固め、6日にも方針を表明し、早ければ7日に宣言すると云う。
東京都の危機感と後手後手の政府.
3日、小池百合子都知事は会見で、政府が〔緊急事態宣言〕を発令した場合の対応方針を公表して居る。都民に対しては外出自粛を求める一方、食料品店等の生活必需品を扱う店に付いては、引き続き営業を認めると発表した。極めて妥当な措置だ。
更に東京都は感染爆発に備えて、7日の火曜日から軽症者向け施設としてホテルを党毎借り上げ、ソコで受け入れると云う。1000人分の部屋を確保出来るとして居り、国に対しても迅速に緊急事態宣言を出す判断を求めて来た。
東京都が軽症者向け施設としてホテルと交渉が行える様に為ったのは、2日に厚生労働省が、軽症者等を病院以外の施設で受け入れる各自治体の動きを追認する通知を出した事に依る。これ迄の厚労省のスタンスは、3月1日の通知であった。
それによると、軽症者・無症状者は〔自宅での安静・療養を原則とする〕として居たが、そうした体制に移行する場合には〔厚労省と相談すること〕を求めて居た。この最後の〔相談〕と云う名の元の口先介入が各自治体の動きにブレーキを掛けて居たのである。
これを変更し〔厚労省と相談すること〕を削除したのは好いが、加藤勝信厚労相が記者会見で「軽症者の療養体制の整備に付いて具体的に検討して欲しい」と自治体に対して言った様に、厚労省はどの様に療養体制を整備するかは自治体に丸投げ状態に見える。
生活支援・中小企業支援は調整が進んでいるが…
3日に発表された政府の経済支援策は〔現金給付を1世帯に30万円〕すると云うものだった。但し、その内容は固まって居らず〔減収額が一定の基準を下回る世帯を対象〕とし、希望する人が〔市町村に自己申告〕して受け取るものだと云う。
更に、一定の基準を下回るとは〔夫婦2人の世帯の場合25万円未満〕とする〔子育て世帯は子供の人数に応じて基準を緩める〕〔単身世帯の場合は厳しくする〕と云う案が出て居るが未だ調整中だ。対象者は全国の全5800万世帯の内1000万世帯の見通しと観られる。
こんなに基準を複雑にしてしまえば、市町村の窓口での審査期間が長期化する。申請者は新型コロナウイルスの感染拡大で収入が減って居る事を証明する書類提出が必要だ。コレでは申請者と市町村へ多大な事務負担が生じる事も簡単に予想出来る。その結果、支給される迄何カ月も掛かり、今本当に困って居る人々への支援が遅れてしまう。
元々政府案として出て居た〔1人当たり10万円の給付案〕の方が、遥かにシンプルでスピーディーに対応出来るのではないか。高額所得者へも10万円を給付する事に反対が大きいと云うのであれば、昨年の所得で線引きをすれば好いだろう。現金給付に於いては中小企業やフリーランス含む個人事業主への支援の方が大きな進展があった。
3日、安倍首相が「厳しい状況にある中堅、中小・小規模事業者に事業の持続を目的として史上初の給付金措置を創設する」と表明して居る。収入が大幅に減ったりした中小企業には最大200万円・フリーランス含む個人事業主に最大100万円の現金給付も検討して居ると云う。
又都道府県の制度融資の仕組みを通じて、政府が利子分を補填する事で最大5年の返済猶予期間を設けて、無利子無担保で融資を出来る様にすると云う事である。今回のコロナ危機で甚大な影響を受けて居る観光業・宿泊業・飲食店・交通運輸業等に携わる中堅・中小企業へ一日も早い無利子無担保融資を実現する為、融資を実行する全国の金融機関は重要だ。コロナ収束後に日本経済がV字回復を出来る様に、出来るだけ多くの職場を守って貰いたい。
原発事故時の政府対応と今の政府
中小企業支援を除けば、政府対応が遅れた対応は、2011年の東日本大震災での当時の政権に於ける原発事故対応を想起させる。大津波への対応、全電源喪失時への対応を怠った政府と東京電力だ。
門田隆将著の『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)に書かれて居た様に、原発事故を防ぐチャンスは2度あった。
1つは、2001年9月の同時多発テロ後、アメリカの原子力規制委員会が、原発がテロに襲われた場合の全電源喪失を想定し、それに対する対応方針を示した時。それにも関わらず、日本の政府と東電はこれに対応し無かった。
もう1つは、2004年12月の22万人もの死者を出したスマトラ沖地震に依る大津波。この時も、同じアジアの地震多発地域での大津波と云う事態にも関わらず、政府も東電も想定を超える津波への対策を講じ無かった。福島第一原発は海面から10メートルの高さに位置するから、大丈夫だと云う根拠の無い自信に陥り、想定を超える事態、最悪の事態への準備を怠ったのである。
緊急事態だった原発事故の対応で当時の民主党政権を担って居た菅直人首相は場当たり的な行動も繰り返し、後手後手の対応・危機管理が出来て居ないと多くの批判に晒された。
現在の政府の対応策には、最悪の事態を想定した上での先手の策は未だ為されて居ない。コロナ問題を過小評価して居るのではないか。もしも、医療崩壊が起きている諸外国の様な事態には為ら無いと、考えて居るのであれば、医療崩壊が起き・オーバーシュート(感染爆発)が起き、緊急事態に突入した時に、政府はどの様に対応するのか。
安倍首相は就任後に「悪夢の様な民主党政権」と繰り返し述べて来た。この国難とも言える事態に今の自民党政権に何が出来るのか、真価が問われている。
植田 統 弁護士 名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授 以上
緊急事態宣言 7日発令 5月6日迄
7都府県対象 私権制限可能に 新型コロナ
〜時事通信 4/6(月) 17:51配信〜
東京都内等での新型コロナウイルスの感染者急増を受け安倍晋三首相は6日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を7日に発令する方針を表明した。実施期間は5月6日迄の1カ月間。東京等状況が深刻な7都府県が対象と為り、一定の私権制限が可能と為る。
感染症専門家や弁護士で作る〔基本的対処方針等諮問委員会〕の議論等を経て正式に発令する。同法に基づく緊急事態宣言は初めて。
首相は当初、経済的な打撃への懸念から宣言に慎重だったが、東京都等の医療体制が逼迫(ひっぱく)して来た事から発令は不可避と判断した。首相は6日の自民党役員会で宣言に踏み切る意向を明らかにし、対象地域として東京の他、埼玉・千葉・神奈川・大阪・兵庫・福岡を挙げた。
以上
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