中東　その4 　中東戦争: 素敵な「自転車と家庭水族館」

2018年05月10日

中東　その4 　中東戦争

　

　中東　その4　

　　　　　

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　第６章　中東戦争

　これ迄、イスラエルを巡っての戦争（中東では周知の通り、湾岸戦争やイラン・イラク戦争、此度のイラク戦争、又イスラエルによるレバノン介入等幾多の戦闘が繰り返されて居るが、本稿では、中東戦争と呼ばれる戦争についてのみ述べる事とした）は４度起きている。

　第一次中東戦争については、既に前章で述べた。本章では、以後の戦争に付いて、大まかな流れだけを追って見る事とする。只その前段として、イスラエルと世界との関係、特に米国とのそれは十分に押えて置く必要があるだろう。

　米国は、イスラエル建国当時でも今でも世界最大のユダヤ人人口を擁する国家である（その数は実はイスラエルの人口より多い）、そうして既に云う間でも無いが、国の中枢部（政府と云う意味に限らず）に於ける彼等の影響力は絶大である。形を変えて云うならば、米国は世界最大のシオニズム国家であり、イスラエルはその彼等の象徴的存在として中東の飛び地に建てられた王国であると。
　詰まりイスラエルの後ろには、常に米国と云う超大国があって、その一挙手一投足を見守りあらゆる種類の援助を惜しみ無く注ぐ、その様な状況が必然的に生まれて居たのだった。

　その頃米国と世界を二分していた大国・旧ソ連は、イスラエル又中東諸国を主戦場として米国と冷戦を交えていた。その勢力争いに西欧の列強、英国、フランスが微妙に加わっていた。これが中東戦争当時の世界図である。無論その時点で日本は何の取るにも足らぬ存在であったことは云うまでも無い。その様な状況で起こった中東戦争であるが、以下、簡単に概略を整理しておこう。

　　　　　

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　第二次中東戦争（1956年　スエズ戦争）
　
　エジプトがその国力増強の為、米国からの資金援助を目当てに建設計画を進めていたアスワン・ハイ・ダムは、結局米国との交渉が決裂。それに窮したエジプトは、代案としてスエズ運河の国有化を決定した。そこから得られる収入をダム建設に宛がおうと云う腹である。一方スエズ運河会社の株主であり最大の利用者でもあった英国はこれに猛反発を開始。
　その結果、英国はフランス・イスラエルと共謀し、エジプトに戦争を仕掛ける事と為ったのである。これが、第二次中東戦争であるが、米国とソ連は英国の姿勢を激しく非難、戦線からの撤退を強く三国に迫った事により戦争は呆気無く終結を迎える事と為った。その後国連による調停の結果、スエズ運河はエジプトの国有化が認められた。
　イスラエルとしては、目の上のタンコブであったエジプトを、英仏の誘いに乗ってこの際、早期に叩いてしまおうと云う思惑だったが、結果的には米ソからの大非難と、対するエジプト国力の増大を招いただけに終わった戦争であった。

　　　　　

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　第三次中東戦争（1967年　６日戦争）

　前回の戦争後も引き続き緊張関係の絶え無いイスラエルとアラブ諸国だったが、先制攻撃はイスラエルの方からであった。本来地理的には、シリア・ヨルダン・エジプトに挟み撃ちにされる不利な形のイスラエルであるが、6月5日、イスラエル空軍の電撃的奇襲が始まると、対する三国の部隊は瞬時に壊滅状態に陥り全滅、僅か６日間でこの戦争はイスラエルの圧倒的勝利で幕を終えてしまったのである。
　結局この戦争で、シリアはゴラン高原・ヨルダンは西岸地域を、そしてエジプトはガザ地区を含むシナイ半島のほぼ全域をイスラエルに奪われる事と為った。

　第四次中東戦争（1973年　10月戦争）
　
　屈辱的な大敗から三年後、既に往年の力を完全に失っていたナセルが逝去、代わってエジプト大統領に就任したのが、後にエジプトの国民的英雄と称される事となるアンワル・サダトであった。
　ここに新たな推進力を得たエジプトは、シリアと謀りイスラエルへの奇襲攻撃を敢行した。1973年10月6日の事である。これを第四次中東戦争と呼ぶが、その月を取って「10月戦争」又この月がイスラムの断食月にあたっている事から「ラマダン戦争」或は、ユダヤ教の贖罪の日ヨム・キップールから「ヨム・キップール戦争」とも呼ばれている。

　　　　　

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　この戦争の緒戦はイスラエル側の惨敗であった。建国以来初めての敗北である。慌てたイスラエルは、米国に緊急援助を申し入れるが、米国は当初この申し入れに難色を示した。それは、時の米国国家安全保障問題補佐官キッシンジャー氏の策略であった。
　彼はこの戦争で、アラブ側に多少なりともの勝利感を味わわせる事で両者の和平交渉が円滑に進展する事を期待したのである。しかし、米国側の回答に焦ったイスラエルは、遂に「核兵器の使用」と云う強攻策を切り札に米国を脅迫、結果的に米国からの緊急援助を受けたイスラエルは又もや戦争に勝利してしまうのである。

　米国のイスラエルに対する緊急援助は、しかし当然ながらアラブ諸国の反発を買う結果と為った。アラブ産油国は、米国への石油輸出全面禁止の決定を行い、又それに呼応してOPEC（石油輸出国機構）も石油価格の四倍増を決定した。
　この「石油禁輸」が世界に及ぼした影響は極めて大であった。産油国連合は対輸出国を、敵対国・非友好国・友好国の三段階に定め、友好国以外には石油を一切売ら無いと云う措置を発表したからである。実は日本はこの時点で、アラブ諸国に取っては「非友好国」と定められて居た。
　当時日本のアラブ石油への依存度は約40%である。これが手に入ら無くなると聞いて日本中はパニックに陥った。所謂「オイルショック」の始まりである。この時国民は、トイレットペーパーや洗濯洗剤を買い漁った。政府は恐々としながらイスラエルに対し強硬姿勢の真似事を行い、それを以てアラブ諸国に恭順の意を表して見せた。しかし日本政府としては必死だったのである。その結果、辛うじて日本も「友好国」の地位を獲得する事が出来オイルショックは要約回避された。

　その様にして、建国以来四度の戦争を経たイスラエルである。只、その後に付いては、既に現代情勢に属するものでありここで詳細を述べる様な必要はあるまい。
　実際の所、それは余りに複雑多岐、膨大に及ぶ事柄なのであって、本稿の範囲には到底納まるものでも無く、又筆者にその力も無い。本稿が飽くまでも中東の三千年の歴史に主眼を絞って書くものである事は予めお断りして置いた通りである。

　　　　　