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神秘域

まさに神の仕業ではなかろうかというタイミング。
あの、猛烈な台風5号がやってきた9月21日。
私は神奈川芸術劇場に向かっていました。
野村萬斎×野村万作×杉本博司さんの、「神秘域」です。

暴風雨の中、止まり止まりの東横線を乗り継ぎ、
横浜駅にたどりついたときには、東横線は完全ストップ。
もしかしたら帰れないのではないか、そう思いながらの観劇でした。

しかし、舞台の始まる頃には、雨は止み、
神風のごとく突風のみが残っていました。
落ち葉もゴミも傘も舞う。
いったい今日はなんなんだ。
頭の中も散らかりながら、いざ席へ。

がらん。
やっぱり、ですが席は空席が目立つ。
きっと遠方にお住まいの方は、
泣く泣く諦めたにちがいない。
そう思うとよっしゃと張り切ってきた。
何人分もじっくり見てやろうと思ったのでした。

まずは万作さんの、三番叟。
驚きました。
ひっそりとした舞台、照明。
恐ろしいまでも静寂に包まれた舞台を、そろりと歩く演者さんたち。
杉本さんの作品の魅力が、ああ!
ごくりと息をのむ音さえもかき消される。

音が始まると、それまでのうすら暗い雰囲気はどこへやら。
雲が開けたあとに降りてくる日差しのように明るい。
神聖なる宴を見ている、本当にそのように感じました。
台風の始まりも流れて行く、台風が去った次の日のような気持ちに。

そして次は、萬斎さんの、三番叟。
萬斎さん・・
いや、萬斎さんは萬斎様なのです。
王子様なのです。
どうだ、と言わしめられ、引き裂かれてもだえる!
とにかくやんちゃ。
テンポ、リズム、音、動き。
全てが萬斎色。
これはもう、音楽ライブのように。
あらゆる垣根を超越したパフォーマンス。
萬斎ジャンプも華麗。
目が釘付けでした。
自然と体は揺れ動き、いっしょに踊りだしたくてたまらない。
楽しい。楽しい!


帰る頃には、強風も幾分かおさまり、
こころのなかを痛快に跳ね回る萬斎さんがいました。

まんさく、まんざい、まんぞく、まんぷく!




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プロフィール

しらくまいく子
携帯アプリのシナリオライターと、    『するところ』のライター、ポエガールをしています。
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