2019年06月03日
たばこのせいで寝たきりに? 筋肉そのものを弱らせる働きも
チェコ共和国の研究グループが、喫煙は筋肉減少症(サルコペニア)をより進行させる可能性があると報告した。喫煙は心肺機能だけでなく、筋力そのものにも悪影響を与えるという。
喫煙がスポーツの大敵であるだけでなく、筋肉も減少させるならば、肥満や高齢者の転倒のリスクを高めることにもなるため、喫煙にはさらなる注意が必要だ。
□筋力低下の悪循環 最悪寝たきりにも
私たちは40歳ごろから加齢とともに徐々に筋力が低下してくる。筋肉量が低下する年齢になったのにもかかわらず、年に見合った食事や運動をせずにいると、年齢を重ねるごとにその筋肉量の低下は加速していく。
筋力が低下するとおのずと人間の活動量も減り、肥満にもなりやすくなる。そうなると、膝への負担も増えて、特にお年寄りでは転倒リスクが上がってしまう。体重の増加が膝に負担をかけて転びやすくし、ケガをすればいっそう活動しにくくなり筋肉量はさらに低下する。
この悪循環は、最悪の場合、寝たきり状態を引き起こしかねない。そこで大切なのは、身体機能低下の原因を見極め、進行の予防をすることだろう。これには、栄養や適度な運動が一定の効果を発揮する。
□喫煙と筋力低下の関係
このように、筋力の低下は、それが引き金となり健康にさまざまな悪影響を与える。
さらに、チェコのチャールズ大学研究グループの報告では、喫煙が筋肉の減少に影響を与えるという。
研究グループは過去に出版された筋力低下症(サルコペニア)に関する論文を集め、合計2万2515人分のデータを基に調査を行った。そして、原著論文の中では行われていない解析を新たに行い、今まで埋もれていたデータを見つけ出した結果、喫煙と筋力低下の関係性を発見したのである。
□たばこで筋肉が減るのはなぜ?
なぜ喫煙が筋力を低下させるのだろうか? 今回の研究ではその直接の原因は明らかになっていないが、考えられることとして、まずは喫煙による毛細血管の収縮で起こる血流量の減少がある。血流量が減少すると、筋肉に運ばれる栄養素と酸素も減るため、筋肉が衰弱するということだ。
また、たばこの煙に含まれる一酸化炭素が血液の酸素運搬能力を低下させることも要因となるだろう。
その他、たばこはビタミンC不足を引き起こすが、筋肉の成長に大きな役割を果たすビタミンCが不足すれば、当然、筋力は低下してしまう。
また、喫煙によって体内に入ったニコチンなどの有害物質を処理するためには、肝臓などで毒素分解系の酵素群(タンパク質)も過剰に使われるため、その分、筋肉の材料となるたんぱく質が不足してしまうことも考えられる。
□たばこの計り知れない影響
たばこにはニコチンや一酸化炭素、タールなど200種類以上の有害物質と64種類の発がん物質が含まれている。
たばこを長期間吸い続けると、肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、心疾患をはじめ、さまざまな病気のリスクを高める。たとえば、非喫煙者の死亡リスクを1とした場合、喫煙者が肺がんで死亡するリスクは男性が4.8倍、女性が3.9倍、COPDは男性が3.1倍、女性が3.6倍にもなるのだ。
このような観点からも、たばこはできるだけ吸わないほうがいいのだが、それでもどうしてもやめられない人もいるだろう。そんな人は、せめて周りに気を遣う必要があるだろう。喫煙者が直接吸い込む主流煙よりも、たばこの先端から立ち上る副流煙のほう有害物質を多く含んでいて、たばこを吸わない人の健康にも影響を与えるのである。
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